ロジスティクスAB InBev Japan(アンハイザー・ブッシュ・インベブ・ジャパン、東京都渋谷区)を中心とする企業間連携による“地域モーダルシフト促進事業”のキックオフ会合が3月31日、開かれた。参加各社の強みを持ち寄り、動脈物流(輸配送)と静脈物流(回収・再資源化)を統合した持続可能な物流モデルを構築するのが狙いだ。会合では、物流危機への対応やモーダルシフト、BCP(事業継続計画)対応、資源循環を横断する形で課題共有が行われ、今後の具体的な連携可能性を探る場となった。
AB InBevは、ベルギーに本社を置く世界最大の醸造会社で、コロナやバドワイザーなど世界的なビールブランドを展開する。グローバルな観点で物流課題解決に取り組む同社日本法人で、3PLマネージャーを務める渡辺昌宏氏は、会合の趣旨について、「地域課題解決やモーダルシフト促進へワンチームで取り組み、多様な領域の各社の知見を結集しながら、国内外の動脈と静脈をつないだ持続可能な物流モデルをつくっていきたい」と説明した。
コンセプトには「SGFMP(Sustainable Gift for Many People、多くの人々への持続可能なギフト)」を掲げた。背景には、ドライバー不足、CO2削減要請、EC(電子商取引)拡大による宅配逼迫といった、物流危機の深刻化がある。従来の個社単位の最適化では限界がある中で、業種、さらには官民をまたぐ形で現実的な解決策を探ろうという問題意識が共有された。
呼びかけに賛同し、イケア・ジャパン(東京都渋谷区)、JR貨物、トランコム(名古屋市東区)、流通経済研究所(東京都千代田区)、日本ハビタット協会、ラボラトリー(横浜市緑区)、カンキョーワークス(旭区)などがキックオフ会合に参加。それぞれの現場課題と取り組みを持ち寄った。特長的だったのは、単に輸送の効率化を議論する場ではなく、物流危機が販売現場や地域社会、さらには資源循環の現場にまでどう波及しているかを可視化し、それらを一つの連携体制の中で捉えようとしている点だ。

IKEA渋谷の福居泰介氏からは、物流危機がインテリア販売の現場に直接影響を与えている現状が共有された。ドライバー不足は引越し事業者に波及し、長距離案件を敬遠する傾向が強まる中で、いわゆる「引越し難民」が発生し、3月の家具販売にも影響が出ているという。BtoC、BtoBともに需要は弱含みで推移しているなど、物流危機が単に運べないという問題にとどまらず、販売機会の逸失や循環設計の遅れにも直結していることが浮き彫りになった。
動脈側では、JR貨物、鉄道ロジスティクス本部の渡部純也氏が、モーダルシフトの中核的な役割を担う考えを改めて強調した。渡部氏は、輸送キャリアとしてだけではなくJR貨物ロジ・ソリューションズ(東京都中央区)営業本部総合物流部次長として、グループ一体で物流提案を推進している。「幹線は鉄道、前後はトラック」という役割分担を基本に、鉄道を軸とした持続可能な輸送モデルを広げていく方向性を共有した。物流危機が深まる中で、幹線輸送の負荷分散とCO2削減を同時に実現するモーダルシフト利用の環境作りを整え、成功事例を積み重ねていく。
トランコム営業グループ新規事業開発チームマネージャーの遠藤歩氏からも、輸送マッチングの領域を従来のトラック中心から鉄道連携へと広げている現状が紹介された。長距離ドライバー不足や法改正への対応を背景にすでにJR貨物との連携を実装しており、長距離は鉄道、近距離はトラックという振り分けをサポートしていく。加えて、レンタルパレット運用スキームの構築や、連結トラック運行といった取り組みも紹介され、輸送そのものだけでなく、運用面でもCO2削減と積載効率向上を目指していく。単なる輸送手配ではなく、複数モードを束ねて全体最適を図る主体としての立ち位置を鮮明にする。
流通経済研究所サプライチェーン部門部門長上席研究員の田代英男氏、特任研究員の荒木協和氏からの解説は、この連携体制にBCPの視点を強く持ち込むものとなった。災害時には避難所向けの支援物資だけでなく、生活者向け商品供給そのものを維持する必要があるとして、平時から複数ルートを持つことの重要性を訴えた。特に、日本海側ルートの活用や新潟をハブとした関西・北海道・九州・海外接続の可能性に言及し、太平洋側偏重の物流網に冗長性を持たせる必要性を示した。BCPは非常時だけの議論ではなく、平時から貨物を流し、持続可能なルートとして維持しておかなければ機能しないという指摘は、今回の議論の中でも重要な論点となった。
さらに、こうした輸配送課題を基軸とした動脈側の論点提起に加えて、よりサステナブルな社会構築に関して踏み込んでいくという会合の方向性も明確化された。
日本ハビタット協会の副会長であり、長年「国連ハビタット親善大使」を務めてきたマリ クリスティーヌ氏は、災害復興や地域インフラ整備の現場で培った知見を紹介し、衛生、廃棄物管理、資源循環を地域コミュニティ形成と一体で捉える姿勢を示した。ケニアやラオスでの取り組み、燻臭炉による排出抑制と残灰の循環利用などの事例で、物流と環境、地域社会を結びつける発想を提示し、国内地域拠点での資源循環モデルへの適用を検討する。効率化という観点だけではなく、物流が地域社会や環境(住環境)をどう良くするかという視点からの問いかけとなった。
一方、ラボラトリー社長の小塚静氏からは、AB InBevの廃棄ビール処理を巡る静脈物流の厳しい実態が共有された。大量の瓶ビール廃棄が発生した際、既存のリサイクル先が受入困難となる事態が現実に発生していることを報告。静脈物流側も深刻な逼迫状態にあり、静脈物流の目詰まりはそのまま動脈物流の停滞につながることを明らかにした。会合に参加したカンキョーワークス社長、野沢明弘氏をはじめとした環境パートナーとの連携拡大は、こうした処理能力や再資源化先の多層化を図る上で欠かせない位置づけとなり、動脈側や行政とも一体となった課題解決が必要となる。

今回の会合は、物流危機を単なる輸送力不足としてではなく、販売現場、災害対応、地域維持、資源循環までを含む社会課題として捉え直し、そこに官民横断の連携体制で挑もうとしている点に、取り組みの意義と新しさがある。
今後は、さらなる鉄道利用の促進、領域ごとの回収・再資源化スキーム、地方港湾の物量確保と国際競争力拡大など、今回提起された現状課題にそれぞれの得意分野からどのような解決策を持ち込めるか、新たな連携の仕組みがないか検証を深める。現状の取り組みを発展させた具体的な事例を公開していくとともに、中長期的な課題の検証を続け、サステナブルな社会づくりに向けて、動脈と静脈、平時と有事、国内と国際をつなぐ新たな物流連携モデルが提示されることが期待される。
AB InBev渡辺氏は、「皆で力を合わせれば、解決できない課題はない。Together Every Achieve More、略して1つの“T.E.A.M”として動き出すことができた」と語り、新年度を迎えて各所で加速する物流再編の機運に、ワンチームによる具体的な回答を用意する構えだ。
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