ロジスティクス赤澤亮正経済産業相が石油の需要サイド対策を排除しない姿勢を示し、節約要請論が政策論点として浮上してきた。だが、先に要るのは節約の呼びかけではない。限られた燃料を何に、誰に、どう優先配分するのかという設計だ。政府はその骨格をまだ示していない。(編集長・赤澤裕介)
赤澤経産相は3月30日の衆議院予算委員会で、中東情勢の緊迫を受けた石油の需要対策を排除しない姿勢を示した。3月31日の閣議後記者会見では「国民経済に大きな影響がない形で、需要サイドの対策を含め、あらゆる政策オプションを検討していきたい」と述べた。
一方で政府は「現状、我が国の石油需給に影響が生じているという認識は持っていない」との立場を維持する。ただし「足元では一部で供給の偏りや目詰まりが生じている」とも認めた。需給全体は崩れていないが、流通の末端では偏在が起きているというのが4月4日時点の政府認識だ。
石油連盟の木藤俊一会長(出光興産会長)は3月24日、自民党本部で開かれた中東情勢に関する会合で追加の備蓄放出を要請した。自民党の小林鷹之政調会長は会合後、石油連盟から「石油の供給が仮に減少するシナリオも頭に入れて、石油の需要対策も念頭に置いてほしいという話があった」と明らかにした。石油連盟は例として、在宅勤務の推奨、公共交通機関の利用促進、高速道路の速度制限引き下げを挙げた。石油連盟の主たる要請はあくまで追加の備蓄放出だ。需要対策はそれを補う位置づけにとどまる。供給を預かる業界自身が、備蓄放出だけでは先行きに耐えられない可能性を示し始めた。
政府がこれまで投じてきた施策は、供給確保と価格抑制に集中している。

国民や企業に対する節約の呼びかけ、速度制限の変更、テレワークの義務化といった需要サイドの措置は、4月4日時点で発動されていない。
補助金は価格高騰の痛みを和らげる一方、需要抑制の価格シグナルを弱める。補助を続けたまま節約を呼びかければ、政策メッセージはねじれる。
その順位づけなしに需要対策は現場で機能しない。
石油需給適正化法(1973年12月制定)は、供給危機時に配給や割当、使用制限を可能にする枠組みを定めた法律だ。同法第3条は、これらの措置を講じる際に一般消費者、中小企業、農林漁業、公益事業、通信、教育、医療、社会福祉、報道出版業への優先供給に配慮すべきことを定めている。同法は1974年2月に一度発動されたのみで、今回も4月4日時点で正式な緊急宣言には至っていない。
制度の思想は明快だ。「みんなで我慢」ではなく、「守る先を決めた上で絞る」。節約の呼びかけと優先配分はセットであり、片方だけでは機能しない。
国際エネルギー機関(IEA)は3月20日、テレワークや速度制限の見直しなどを含む10項目の需要削減策を示した。日本で問われるのは、それを採るかどうかより先に、採る場合の優先配分をどう設計するかだ。
物流業界では軽油調達への警戒感が高まっている。日本物流団体連合会は4月3日、ホルムズ海峡の事実上の封鎖に伴う燃料供給危機に関する声明を発出した。荷主企業に対し、柔軟な納期設定と共同配送、燃料サーチャージ導入への理解を求めた。業界が自ら、共同配送や納期柔軟化を通じた需要調整と、限られた燃料をどう回すかという配分ルールの必要性を訴え始めた。
石油需給適正化法が優先供給の対象に挙げる一般消費者や医療は、燃料そのものを直接使うだけでは守れない。食品、医薬品、日用品を運ぶ物流への燃料供給が途切れれば、優先供給の趣旨自体が現場で止まる。物流は優先配分の派生的な対象ではなく、優先供給を成立させる基盤だ。物流をどこに置くかで、優先供給の制度は机上の仕組みで終わるか、現場で機能するかが分かれる。
需要対策に踏み込むなら、節約を呼びかける前に、どの用途に燃料を優先し、物流をその中でどう位置づけるのかを示す必要がある。守るべき先を定めない節約の呼びかけは、危機管理として機能しない。
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