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ホルムズ再開論、担い手なお不在

2026年4月3日 (金)

国際ホルムズ海峡の封鎖が5週目に入った。4月2日に英国主導で約40か国が海峡再開を協議し、自由航行の確保で強い一致を見せた。安保理でも商業航行の保護を求める決議案の修正協議が続いている。再開を求める声は広がった。しかし航路回復を誰がどう実装するのかは見えていない。(編集長・赤澤裕介)

▲4月2日の主な動き(クリックで拡大)

自由航行で一致、航路設計は未定

約40か国の協議で英国のイヴェット・クーパー外相は海峡の即時かつ無条件の開放を求め、参加国はイランによる通行料徴収を認めない方針で一致した。日本の木原稔官房長官は英国からの正式な参加要請があったことを認め、対応を検討中と述べた。協議では掃海や護衛の実施計画には踏み込まず、来週に軍事当局者レベルの次回協議を行う方向で調整している。ただし参加国の範囲や詳細な日程は明らかになっていない。

米国はこの協議に加わらなかった。海外通信社報道によると、ドナルド・トランプ大統領は4月1日のテレビ演説で今後数週間にわたる攻撃継続の方針を示し、ホルムズの安全確保は日本やフランスなど利用国が自ら行うべきだとの考えを繰り返した。約40か国の協議に軍事的裏付けが伴わない構図が浮かび上がっている。

安保理ではバーレーンが商業航行の保護を認める決議案を提出し、修正を重ねている。最新の案では武力行使の授権範囲を狭め、防御的手段に限定する方向で調整が進んでいる。バーレーンは3日の採決を目指すが、中国とロシアは米・イスラエルの軍事行動を問題の根本原因だとして反対姿勢を示している。フランスは立場が異なり、イランの責任を認めたうえで、武力による海峡開放は作戦上実行が難しいとの判断から、停戦を先行させる独自の決議案を回付した。再開を支持する声はあっても、武力の扱いで一致していない。

▲ホルムズ再開を巡る主体別スタンスと未確定事項(クリックで拡大)

再開を求める側が実務と武力の扱いでまとまらない間に、イラン側は海峡管理の枠組みづくりを進めている。カゼム・ガリババディ外務次官は4月2日、海峡通航の監視プロトコルづくりに言及した。対象はオマーンとの枠組みだが、現時点でオマーン側の確認はない。イラン当局者自身も国内の起草が終わった段階でオマーンとの交渉に入るとしている。中国船籍のタンカーが革命防衛隊の護衛付きで通過した事例や、フィリピン船への安全通行保証が報じられる一方、他国船の通航条件はなお不透明なままだ。主要海外報道では、ペルシャ湾内で2000隻前後、乗組員2万人前後が足止めされていると伝えられている。

原油市場はこの状況を織り込み始めた。4月2日のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は前日比11.4%高の111.54ドルで引け、紛争開始以来最大の上げ幅を記録した。ブレント先物も109.03ドルに達した。停戦の遅れに加え、封鎖が解かれても滞留船の処理、タンカーの再配置、戦争保険の再引き受けに時間がかかるとの見方が市場や海運関係者の間で広がっている。

再開の担い手が定まらない以上、各国は海峡が通れない前提で供給管理に動かざるを得ない。日本政府も国家備蓄の放出を進める一方で、経済産業省は中東情勢対応として医療関連物資、食品包装資材、トラック向け燃料油など重要物資の分野横断的な供給点検に入った。焦点は備蓄量ではなく、品目と地域ごとの偏在に移っている。

安保理採決もなお流動的で、再開の実務設計は来週以降に持ち越された。4月5日にはOPEC+閣僚級会合がある。約40か国が参加した協議では、軍事当局者レベルの次回会合を来週に行う見通しだが、詳細は未定のままだ。再開を求める国は増えた。だが掃海も護衛も保険も、誰が引き受けるのかは決まっていない。ホルムズはなお、開けるべき海峡のままで、開けられる航路には戻っていない。

◆ この記事をより深く理解するために ◆

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