話題野村総合研究所は29日、野村綜研(上海)諮詢有限公司(NRI上海)と日電(中国)有限公司(NEC中国)が、大連市の港湾近代化事業で大連港集団有限公司と共同して、中国の情報通信技術戦略である「物聯網(ウーレンワン)」を活用した港湾基盤システム構築に向けて検討することで、大連市との間で覚書を交わしたと発表した。
「物聯網」は2009年9月に温家宝首相が提言した、中国版ユビキタスネットワーク戦略「感知中国」を実行していくための技術の総称で、中国の国家戦略に基づく新興産業として位置づけられている。中国で、次世代情報化社会を構築するための中核分野として、センサーネットワークやユビキタス環境の重要性が認識されたことがその背景にあり、国家発展改革委員会、工業和信息化部が積極的に推進している。
中国では中央政府だけでなく、地方政府や大学・研究所、民間企業を含めて「物聯網」を軸とした取り組みが拡大しており、産学官を巻き込んだプロジェクトに進展する例が出てきている。今回の案件もその一つで、大連市の中核産業の一つである港湾事業に焦点を当て、「物聯網」を用いた港湾関連産業の基盤づくりが大きな目的。
大連市は、物聯網技術を最大限に活用し、港湾物流基盤を高度化することによって、東北アジアにとって重要な国際航運センターと物流センターの地位を確立するとともに、国際的な港湾都市の実現を目指している。大連市、NRI上海、NEC中国、大連港集団は、これを推進し実行していくために、「港湾物流物聯技術研究開発応用推進グループ」をつくり、今後具体的なシステム構築を行うことになった。
NECは、RFIDやセンサーを活用した物流品質監視制御、トレーサビリティ、パブリックセーフティなどリアルタイムに輸送状況を可視化・管理し、物流の安全性や付加価値を向上する港湾システムソリューションの提供とともに、これらのソリューションをクラウドサービスとしても今後提供していく。これらを活用し、NEC中国とともに、物聯網を適用した港湾基盤システムの構築に向けた検討を行う。
NRI上海は、中国国家物聯網標準化グループに入っている唯一の日系企業として、物聯網技術を港湾基盤に展開し、適用していくためのプロジェクト推進を行う。
大連港集団は、中国の東北地域で最大のハブ港湾である大連港湾の航運センター機能を持つ、140余りの港湾関連事業会社を束ねる企業で、物聯網技術の広範な応用を通じて、競争優位な新世代港湾を作り上げることを計画している。
プロジェクトは11年1月から具体化の協議を進め、同年4月から本格的な実行を開始する。NEC中国とNRI上海は、大連市の進める物聯網を用いた港湾基盤システムの構築に参画するとともに、大連市が今後進める情報ネットワークの整備事業にも積極的に関与し「大連市の高度情報化基盤の発展に貢献していく」としている。