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低コスト・好アクセス・大規模供給の総合力でサプライチェーン再編に貢献

常総市、首都圏を支える新たな物流戦略拠点

2025年5月9日 (金)

話題首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の内陸部に位置し、首都圏の新たな物流拠点として注目を集める茨城県常総市。南北に細長いエリアで、千葉県野田市と隣接する同市は、広域輸送ネットワークの要衝としての立地に加え、事業運営コストの優位性、豊富な労働力など、多くの魅力を持つ。茨城県内で2番目に多い21万坪の物流倉庫供給量を誇り、賃料水準は坪単価3000円台後半、周辺エリアと比較して人件費も低い(時給1260円程度)。本特集では、常総市の物流マーケットの現状をデータで分析し、そのポテンシャルを深掘りする。

データが示す常総市の物流マーケットの魅力

▲常総市周辺図(クリックで拡大)

最新の調査データによると、常総市を含む圏央道内陸部エリアは、安定した物流需要を背景に、県内でも比較的低い空室率を維持してきた。また、賃料相場においても、首都圏近郊でありながら競争力のある価格帯(坪単価3000円台後半)を維持しており、テナント企業にとって魅力的なエリアといえるだろう。

進出企業の業種を見ると、EC(電子商取引)関連、食品関連、製造業など多岐にわたり、常総市が多様な物流ニーズに対応できるポテンシャルを持つことを示唆している。特に近年は、広域配送センターやEC物流拠点としての需要が高まっている。

常総市の物流ポテンシャルを深掘りする5つの理由

常総市が物流拠点として選ばれるには、明確な理由が存在する。そのポテンシャルを深掘りし、5つのポイントにまとめた。

(1)広域輸送を支える戦略的な立地

常総市の戦略的な立地は、北部エリアと南部エリアで異なる特性を持つ。北部エリアは、圏央道・常総インターチェンジ(IC)にダイレクトアクセスが可能であり、広域配送拠点として非常に優位な立地条件を備えている。首都圏へのスムーズなアクセスと効率的な倉庫運営を実現する床面積、競争力ある賃料を求める企業にとって最適なエリアといえるだろう。

一方、内守谷工業団地を中心とした南部エリアは、既存の製造業との連携に強みを持つ。常磐自動車道・谷和原ICに近く、内陸輸送の要としての役割も担い、製造業の原料・製品の保管・配送拠点としての適性が高い。

両エリアともに、主要な高速道路網への接続もスムーズであり、全国各地への広域配送網における重要な結節点としての役割を果たすことが期待される。国道354号線や国道294号線といった主要国道が近接しており、県内各地や周辺地域へのアクセスは非常にスムーズだ。トラック輸送においては高い利便性を誇るといえるだろう。

(クリックで拡大)

(2)事業効率化に貢献するコストメリット

事業運営コストの面においても、常総市は大きなメリットを提供する。茨城県は県内全域で事業所税が非課税となっており、企業にとって固定費の削減につながる。さらに、賃料相場も周辺エリアと比較して競争力があり、物流コストの抑制を重視する企業にとって魅力的な要素となるだろう。物流コストの9割を占めるともいわれる配送費と保管費を含めたトータルコストで検討した場合、常総市の優位性は明らかになる可能性がある。

(3)安定した労働力と雇用の確保

常総市を含む多くの地域と同様に、人口減少傾向にあることは否めない。しかしながら、常総市の賃貸物流施設マーケットにおいては、今のところ物件数が限られており、人材獲得における競争率は周辺エリアと比較して低いという強みがある。

また、常総市ではアグリサイエンスバレー構想を核とした新たなまちづくりが進められており、住宅、商業施設、研究施設などが集積することで、周辺エリアのみならず、常総市内からも多様な労働力を確保できる見込みが立つ。自治体も企業誘致に積極的に取り組んでおり、雇用の創出を後押しする体制が整っている。

▲「アグリサイエンスバレー常総」の立ち上げセレモニー(出所:戸田建設)

(4)多産業の集積と新たな物流ニーズ

常総市には、古くから製造業や食品関連産業などが集積しており、これらの産業を支える物流ニーズが存在する。さらに、常総市が推進する「アグリサイエンスバレー常総」構想は、農業、食品加工、バイオテクノロジー関連企業などの集積を目指す官民連携のプロジェクトである。これは、研究開発機能や生産機能を強化するだけでなく、物流面においても新たな需要を創出することが期待されている。

具体的には、地域で生産された新鮮な農産物の効率的な輸送・保管、高度な加工技術を駆使した食品の物流、さらにはバイオテクノロジー関連製品の温度管理や品質管理が求められる特殊な輸送ニーズなど、多岐にわたる物流ニーズの発生が見込まれる。アグリサイエンスバレー常総の進展は、常総市を次世代の食品関連物流の拠点として発展させる可能性を秘めている。

▲「アグリサイエンスバレー常総」構想のイメージ(クリックで拡大)


▲「アグリサイエンスバレー常総」内にある(左から)ジェラート店、TSUTAYA BOOKSTORE(出所:戸田建設、カルチュア・コンビニエンス・クラブ)

(5)企業進出を後押しする自治体のサポート体制

常総市は、企業誘致に非常に積極的な姿勢を示しており、さまざまな支援策を用意している。企業立地に関する相談窓口の設置や、税制面での優遇措置など、手厚いサポート体制は、企業が安心して進出できる環境を提供しているといえるだろう。

エリア特性と進出企業事例

常総市の物流エリアは、主に圏央道・常総IC周辺の北部エリアと、内守谷工業団地周辺の南部エリアに分けられる。

北部エリアは、圏央道へのアクセスが容易なため、広域配送センター、EC物流、低温物流に適したポテンシャルを持つ。実際、グッドマンジャパンによる大規模物流施設「グッドマン常総」シリーズをはじめ、日本GLPの冷凍冷蔵物流施設も立地しており、大手EC事業者や物流事業者の進出が見られる。「グッドマン常総1」では、アパレル企業が入居しており、従業員の採用・定着も順調に進んでいる。まちづくり一体開発による周辺環境の充実と物流施設内の環境整備により、若年層や女性の従業員が多いという。

一方、南部エリアは、既存の工業団地の集積があるため、製造業の原料・製品保管や加工物流に適している。食品メーカーや機械メーカーなどの物流拠点が立地し、賃貸物流施設ではプロロジスやオリックス不動産、日本GLPの物件が安定稼働している。


▲(左から)「GLP常総」、「プロロジスパーク常総」

常総市の物流市場:今後の展望と期待される動き

今後、常総市の物流市場は更なる発展が期待される。常総市は、競争力のある賃料で大規模床面積を提供できる強みがあり、人件費コストも周辺エリアに比べて抑えられるため、企業の物流コスト最適化に貢献するだろう。さらに、アグリサイエンスバレー構想の進展と相まって、食品関連をはじめとする新たな物流ニーズが創出され、今後の物流施設開発を後押しする可能性を秘めている。

ことし2月に完成したばかりの「グッドマン常総2」では、先進的なデザインと働きやすい職場環境の整備に加え、太陽光発電システムやEV(電気自動車)ステーションを導入するなど、サステナビリティにも配慮した最新鋭の物流施設となっている。また、物流会社も多く進出していることから、今後課題となる輸送力の確保においても持続性をもたせることができるだろう。

▲「グッドマン常総2」

2024年問題を契機に、26年4月には大手事業者で物流統括管理者(CLO)の選任が義務化される。サプライチェーン全体での物流負荷低減、効率的な運用への動きが加速するなか、荷主企業による物流拠点の配置見直しが進む可能性があり、今まで注目されてこなかったエリアにも目が向けられることが予想される。人件費や燃料費を含む他の物流コストが上昇するなかで、床代を抑えておきたいというニーズにも常総市は応えられるだろう。

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