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MOVO Vistaで実運送体制管理簿の課題を解決、荷主も運送会社も

アナログ対応の限界、可視化の先に輸配送DXの道

2025年5月27日 (火)

話題物流業界に構造改革を迫る2024年問題、そしてことし4月に本格施行された改正貨物自動車運送事業法。特に「実運送体制管理簿」の作成と情報通知の義務化は、多重下請け構造が常態化していた業界にとって、その透明化と効率化を迫る大きな転換点となっている。

施行から1か月半が経過した今、運送事業者の対応状況はどうなっているのか。そして、この変革を単なる義務対応に終わらせず、真の業務改革、DX(デジタルトランスフォーメーション)へと繋げるためには何が必要なのか。

いち早く実運送体制管理簿への対応機能をリリースし、多くの運送事業者から相談を受けてきたHacobu(ハコブ、東京都港区)。同社が提供する配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」(ムーボ・ヴィスタ)は、この課題にどう向き合い、どのような解決策を提示しているのか。

MOVO Vistaのプロダクト責任者である佐藤拓真氏に、実運送体制管理簿を巡る現状と、その先にあるべき物流DXの姿について話を聞いた。

▲Hacobu MOVO Vista プロダクト責任者・佐藤拓真氏

いまだ手探りの現場、アナログ対応に限界感じる声

「実運送体制管理簿の義務化から1か月半が経過したが、多くの事業者がまだ手探り状態、あるいは十分に対応しきれていないのが実情ではないか」。

佐藤氏は、現在の運送業界の状況をこう分析する。

Hacobuには、制度施行後も問い合わせが絶えず、特に「とりあえず紙やエクセルでやってみようとしたが、情報収集や管理の手間が膨大で現実的ではない」という声が多く寄せられているという。

「当初は『罰則がないなら後回しでも』という雰囲気も一部にはあったかもしれない。しかし、国土交通省は対応を怠れば行政処分の対象となり得ると明言している。単なる書類作成ではなく、事業継続に関わる重要な取り組みだ」

実際、アナログでの対応は困難を極める。実運送体制管理簿には、実運送事業者名、貨物の内容・区間、そして「請負階層」といった情報を、運送単位で記録し、1年間保存する必要がある。多重下請け構造が常態化している場合、これらの情報を受託事業者のさらに受託事業者から正確に、かつ迅速に収集し、管理・通知するのは至難の業だ。

「結局、情報を集めるための電話やメール、ファクスのやり取りが膨大な量になり、担当者が疲弊してしまうケースが後を絶たない」と佐藤氏は語る。

▲国交省が公表している実運送体制管理簿のイメージ(出所:国土交通省)

高まる荷主の関心、問われるサプライチェーン全体の透明性

こうした状況下で、変化の兆しも見え始めている。それは「荷主側の関心の高まり」だ。

「ことしに入ってから、『荷主から実運送体制管理簿について問い合わせがあり、どう対応すればいいか』という相談が運送事業者から増えている。また、荷主企業から直接、自社のサプライチェーンにおける実運送体制を把握したいという要望もいただくようになった」。

改正物流2法では、荷主企業にも荷待ち・荷役時間の把握・削減努力や物流統括管理者の選任などが求められており、サプライチェーン全体の透明性確保と効率化への意識が高まっている。実運送体制管理簿は、そのための重要な情報源となる。

「Hacobuとしては、この実運送体制管理簿の義務化は、多重下請け構造を是正し、最終的にはドライバーの運賃を引き上げ、なり手を増やすという大きな目的のための第一歩だと捉えている。その意味で、荷主企業が関心を持ち始めたことは非常にポジティブな変化だ」と佐藤氏は期待を込める。

アスクルロジストの挑戦、法改正を「業務改革の好機」に

そのような中、いち早くMOVO Vistaを活用し、実運送体制管理簿への効率的な対応と業務全体のDXを推進しているのが、ASKUL LOGIST(アスクルロジスト、江東区)だ。同社はアスクルの100%出資子会社として、全国15拠点の物流センター運営と、そこから配送拠点への幹線輸送・域内輸送を担い、月間6000件以上の膨大な輸送案件を扱っている。

▲MOVO Vista活用例(クリックして拡大)

アスクルロジストは、2021年からMOVO Vistaを導入し、輸送管理のアナログ業務からの脱却を進めてきた。

「アスクルロジストはもともと、輸送の受発注を中心とする業務を効率化し、デジタル化したいという目的でMOVO Vistaを導入していただいた。全国の協力会社との間で発生する膨大な配車手配や請求業務を、電話・ファクス・メールといった従来のアナログな手法から脱却させ、関係者全員が同じ情報をリアルタイムで共有できる仕組みを構築することを目指した」と佐藤氏は解説する。

▲「管理簿」をワンクリックで出力(クリックで拡大)

その結果、アスクルロジストでは、輸送管理にかかる業務時間を75%以上削減するという大きな成果を上げた。そして、今回の実運送体制管理簿の義務化にあたっては、既にMOVO Vistaで管理されていた受発注情報や協力会社情報、車両情報などを活用し、スムーズな対応を実現した。

「同社では、全国の輸送案件について、協力会社に協力を得ながら、実運送体制管理簿に必要な請負階層や実運送事業者といった情報をMOVO Vista上でほぼ100%入力・管理できている。これは、日頃からMOVO Vistaを通じて協力会社との間で情報連携の基盤ができていたからこそ実現できたことだ」

アスクルロジストの事例は、法改正を単なる義務対応と捉えるのではなく、業務全体のデジタル化と効率化を進める「好機」と捉え、システムを積極的に活用することで、法令遵守と生産性向上の両立が可能であることを示している。

※アスクルロジストの具体的な取り組みや成果については、同社が登壇したセミナーのアーカイブ動画で詳しく解説されている。詳細は本記事の最下部参照。

「QRコード」が繋ぐ2次請け以降の壁、アナログとデジタルの融合

一方で、アスクルロジストのように全ての協力会社にシステム導入を求めるのは現実的ではないとの意見も多い。こうしたことから、HacobuはMOVO Vistaの新機能として「QRコード連携」を開発した。MOVO Vistaを利用していない(アカウントを持っていない)事業者には、配送依頼書にあるQRコードから専用フォームにアクセスすることで、車両情報やドライバー情報、請負階層といった実運送情報を簡単に入力、報告できる仕組みだ。

メール・ファクスを介した実運送情報の一元管理(クリックして拡大)

これにより、元請け事業者は、下請け構造の末端までデジタルの情報連携を広げ、実運送体制管理簿に必要な情報を効率的に収集できるようになる 。アナログな情報伝達(メール・電話・ファクス)に起因する手間やタイムラグ、情報のヌケモレといった問題を大幅に削減できる画期的な機能だ。

MOVO Vistaの「管理簿作成」はその一部、「見える化」の先にあるもの

重要なのは、こうした実運送体制管理簿の作成・出力機能が、MOVO Vistaの数ある機能の一つであるということだ。MOVO Vistaの本来の価値は、配車受発注から車両・ドライバー管理、運行状況の把握、請求処理に至るまで、企業間の運送業務全体のプロセスをデジタルで繋ぎ、効率化することにある。

例えば、安田倉庫とグループ会社の安田運輸では、MOVO Vistaを導入し、倉庫拠点・運送部門・協力会社間の情報連携をデジタル化。運送依頼業務時間を最大90%、請求書作成業務時間を80%削減するなどの成果を上げている。さらに、各拠点で蓄積されたデータを可視化することで、拠点横断での配車業務最適化を目指しており、今後は実運送体制管理簿出力機能の活用も予定しているという。

また、鉄鋼業界を担う物流会社では、従来ファクスや電話が中心だった配車業務にMOVO Vistaを導入。協力会社との情報連携をデジタル化し、業務効率化はもちろん、請負階層を含めた案件ごとの収支管理の精度向上にも取り組んでいる。

佐藤氏は強調する

「実運送体制管理簿についても、情報を『見える化』することがゴールではない。そのデータを見て、自社の輸送実態や下請け構造の課題を把握し、どう改善していくか。例えば、特定の輸送区間で請負階層が深くなっているのはなぜか、リードタイムの問題なのか、協力会社の選定に課題があるのか、といった分析を行い、具体的なアクションに繋げていくことが本来の目的だ」

MOVO Vista内ダッシュボード(クリックして拡大)

MOVO Vistaでは、今後、ダッシュボード機能を拡張し、請負階層の構成比率や実運送会社ごとの輸送状況などを多角的に分析・可視化できる機能の追加も予定しているという。まさに、法改正対応を入り口としながらも、その先にあるデータドリブンな経営改善、持続可能な物流体制の構築を支援するソリューションなのである。

2024年問題、そして改正物流2法の施行は、物流業界に大きな変革を迫っている。しかしそれは、旧来の慣習を見直し、デジタル技術を活用して新たな協調関係を築く好機でもある。HacobuのMOVO Vistaは、その変革を後押しする強力なツールとして、多くの荷主企業・元請け事業者と運送事業者に新たな道筋を示してくれるだろう。

「MOVO Vista」解説セミナーを配信中

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https://www.go.movo.co.jp/SeminarMovie20250226_DX_LP.html

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