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トランプ政権の圧力に抗し、CKハチソンが「逆襲」

パナマ運河売却交渉に中国企業参加か

2025年7月29日 (火)

国際香港の複合企業CKハチソン・ホールディングス(長江和記実業)は28日、パナマ運河両端の港湾運営権を含む世界的な港湾事業の売却交渉で、中国本土の戦略的投資家を新たに迎え入れる方向で協議を継続すると発表した。この動きは、「パナマ運河を奪還する」と宣言したトランプ大統領の圧力に対する事実上の反撃とみられ、グローバルサプライチェーンと米中間の地政学的緊張に新たな火種を投じている。

トランプの「勝利宣言」が一転

ことし3月、CKハチソンは世界43港の売却をブラックロック主導の米国系コンソーシアムに合意したと発表した。トランプ大統領は即座にこれを「勝利」と宣言し、「パナマ運河の奪還を既に開始している」と議会演説で豪語していた。

しかし、中国政府が激しく反発し、独占禁止法審査を開始すると共に、国有企業にCKハチソン創業者李嘉誠氏一族との新規取引停止を命令。4月2日に予定されていた正式契約署名は「明白な理由」により延期された。

(出所:CKハチソン・ホールディングス)

中国側は国有海運大手COSCO(コスコ)を売却先コンソーシアムの対等なパートナーとして参加させることを売却承認の条件として要求している。中国当局は、この条件が満たされなければ取引を阻止する構えを示していると報じられている。

COSCOは年間300隻の貨物船がパナマ運河を通航する運河の主要顧客であり、中国にとって戦略的に重要な海運ルートへの影響力維持を狙ったものとみられる。

パナマ運河は世界の海上貿易の約3%を処理する戦略的な海上交通の要衝で、年間通航料収入の大部分は米国関連船舶によるものだ。CKハチソンは1997年から運河両端のバルボア港とクリストバル港を運営し、2021年に47年まで契約を自動延長していた。

米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のクリストファー・エルナンデス・ロイ上級研究員は米メディアの取材に対し「これはトランプ政権の西半球での中国巻き返し戦略にとって重大な勝利を意味するものだった」が、「中国が看過できない動き」だったと分析していると報じられている。

中国政府系紙大公報は、米国が売却を「卑劣な手段で強要した」と非難し、「米国は必ずこれを利用して中国の海運・貿易を制約する」と警告している。

一方、シンガポール経営大学の高亨利(ヘンリー・ガオ)教授は米誌の取材に対し「主として政治・戦略的考慮に基づくもので、ラテンアメリカを裏庭とみなす米国には容認できない動きだが、二国間貿易交渉が進展すれば、より友好的な解決も可能」と述べたと報じられている。

CKハチソンは「関係当局の承認を得るには、コンソーシアム構成と取引構造の変更が必要」として、中国企業参加による「新たな取り決め」実現に必要な時間を確保する考えを示した。

トランプ政権は「中国による運河の軍事化の可能性」や「運河アクセス制御への懸念」を理由に中国排除を推進してきたが、今回の展開により、かえって中国の影響力が強化される皮肉な結果となる可能性が高まっている。

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