ロジスティクス大阪府泉佐野市に本社を置く関空運輸は、1991年設立の総合物流企業。もともとはミキサー車による生コンクリート輸送を手がけていたが、関西国際空港の完成に伴い需要が減少。事業転換を迫られるなかで、一般貨物を扱うトラック運送業へと舵を切った。
その後は港湾貨物を中心に倉庫業や輸出入関連業務を拡大。現在は本社のある大阪に加えて東京にも拠点を構える。社員数は110人でパートを含め152人体制で事業を展開。平均年齢は38歳と若く、最年少19歳から最古参で勤続34年のベテランまで幅広い人材が支えている。車両台数は41台、倉庫面積は9000平方メートルに上る。

▲関空運輸、内畑谷剛社長(出所:関空運輸)
近年は環境課題にも積極的に取り組んでいる。従来はExcel(エクセル)で算定していたCO2排出量に精度の不安があったことから、2024年にアスエネの「CO2排出量見える化SaaS」とSXコンサルを導入。自社の排出量を正確に把握できるようになったほか、従業員の環境意識が高まる効果もあった。「環境物流」「ホワイト物流」を推進する姿勢を荷主にも伝え、脱炭素社会に向けた第一歩を踏み出している。内畑谷剛社長は「価格を上げるのではなく、条件と価格の適正化を重視する。そのなかで積載効率を高め、環境負荷を下げるのが目標」と強調する。
事業の柱は「運ぶ・預かる・つなぐ」に「作る」を加えた4本柱。「作る」とは輸入オフィス家具やジム用機器の組み立て・設置で、東京拠点の「テクニカルロジ」事業として展開。輸出分野では19か国に販路を広げ、タイへは週2.5トンの空輸と月15トンの船便を組み合わせて出荷。イギリスへは大葉やミョウガなど、和食のつまものやあしらいを月200-300キロ輸出している。「海外で和食食材の需要は大きい。商社機能を組み込み、自ら販路を切り拓いてきた」と内畑谷社長は語る。

▲関空運輸りんくう物流センター(出所:関空運輸)
同社の大きな特徴は「人材を育てる会社」であることだ。社員の平均年齢は38歳。最年少は19歳と若く、最古参は創業期から勤め続ける59歳の社員で勤続34年に及ぶ。世代の幅が広く、長期定着者が多いのは、採用と育成の姿勢に理由がある。
同社は経験者だけに頼らず、未経験者を積極的に採用。普通免許しか持たない状態で入社し、会社の支援を受けて中型・大型免許を取得し、数年後には大型トラックのドライバーとして独り立ちする例も珍しくない。内畑谷氏は「免許がなくても物流に挑戦できる環境をつくりたい。すでに技能を持った人を採るのではなく、育てることで会社は強くなる」と話す。こうした方針により、人材不足が叫ばれる業界のなかでも安定した採用と定着を実現している。
採用活動では「働きやすさ」と「社会性」を打ち出す。例えば、社員には「希望に沿った働き方」を可能にする体制を整備。長距離運行や夜勤を希望しない社員には、地場輸送を中心にアサインするなど柔軟な運用を行っている。これにより家庭やプライベートと両立しやすく、社員の満足度も高い。

▲トラックを子どもの絵で飾り、心にゆとりを持つことで交通事故を減らす取り組み「こどもミュージアム」に参加した同社トラック
地域社会に根ざした広報活動も積極的だ。泉佐野市内のショッピングモールで企業紹介の動画を放映したり、ポスターを掲出して地域住民に会社の存在を広く知ってもらう。さらに少年サッカー大会のスポンサーとなり、ユニフォームに社名を掲げて子どもたちを支援。子ども向けの探検イベントでは、トラックの運転席に乗せたり倉庫を見学してもらうなど、物流の現場を体験できる機会を提供してきた。
こうした活動は、単なるCSRにとどまらず、採用面にも大きな効果を生んでいる。地元での認知度が高まることで、「関空運輸なら安心して働ける」というイメージが定着し、就職希望者が集まりやすくなった。内畑谷氏は「物流会社は社会的責任を担う存在。地域とつながり、応援されることで人材も自然と集まってくる」と強調する。
人材育成と地域貢献を両輪とし、採用の強化につなげる──。関空運輸の姿勢は、ドライバー不足が常態化する物流業界のロールモデルといえるだろう。
(土屋 悟)
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