
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「フランスベッド、木製フレーム製造を佐賀に集約」(10月6日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
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荷主フランスベッドホールディングス(HD)が9月26日に発表した生産拠点の集約は、一見すると昨今顕著な「北九州への拠点移転」の流れに乗った動きのように映る。しかし実態は異なる。同社は元々、佐賀県上峰町に優位性の高い生産拠点を構えている。今回の決定は新規進出ではなく、既存の佐賀工場への集約という性質のものだ。

▲佐賀県上峰町へのふるさと納税でもらえる返礼品にはフランスベッド製品が名を連ねる(出所:ふるなび)
福島県白河市の東北工場を6月末で閉鎖し、木製ベッドフレームの製造を佐賀工場に一本化する。その後、7月1日付で佐賀工場を運営するフランスベッドファニチャー(佐賀県上峰町)はフランスベッドが吸収合併する。表面的には効率化を目的とした再編に見えるが、その背景には日本の家具・インテリア市場が直面する深刻な構造的問題が横たわっている。
「この動きの背景には国内の家具・インテリア市場が直面する、人口減少、住宅着工件数の減少による縮小傾向がある」と同社の担当者は語る。同社の発表資料でも明記されているように、家庭用ベッドの生産数量は減少の一途をたどっている。
日本の総人口は2008年をピークに減少局面に入り、特に生産年齢人口の減少が顕著だ。さらに、新設住宅着工戸数も長期的な減少トレンドにある。新しい住宅が建たなければ、当然ながら新規の家具需要も生まれない。ベッドは耐久消費財であり、一度購入すれば10年以上使用されることも珍しくない。買い替え需要だけでは市場を支えきれない状況が続いている。
こうした市場環境の変化は、フランスベッドのような老舗メーカーにとって看過できない問題だ。かつては成長市場であった家庭用ベッド市場が、今や縮小市場へと変貌を遂げている。2工場体制を維持するだけの生産量を確保できなくなったことが、今回の集約決定の直接的な要因となった。
同社は中期経営計画(2025年3月期-27年3月期)で、高齢者市場での成長を目指し、経営資源をシルバービジネスへ重点的に投入する方針を掲げている。これは市場の構造変化に対応した戦略的な選択だ。
日本の高齢化率は世界最高水準にあり、25年には65歳以上の人口が全体の30%に達すると予測されている。介護ベッドや医療用ベッド、高齢者向け家具などのシルバー市場は、家庭用ベッド市場とは対照的に成長が見込まれる分野だ。フランスベッドは創業以来培ってきた技術力を活かし、この成長市場に経営資源を集中させることで、企業としての持続的成長を図ろうとしている。

▲介護用品のマルチフィットベッド(出所:フランスベッド)
インテリア健康事業の構造改革は、こうした戦略転換を実現するための基盤整備という側面も持つ。縮小する市場での生産体制をスリム化し、成長市場への投資余力を生み出す。痛みを伴う改革ではあるが、長期的な企業価値向上のためには避けて通れない道だと言えるだろう。
東北工場の閉鎖に伴い、同工場に勤務する従業員については、グループ内の他拠点(工場・物流拠点など)への配置転換や再就職支援を実施する予定という。地域経済への影響も考慮しながら、丁寧な対応が求められる局面だ。
今回の構造改革が業績に与える影響については現在精査中とし、具体的な金額は明らかにしていない。工場閉鎖に伴う特別損失の計上が予想されるが、中長期的には固定費削減による収益性の改善が期待できる。
日本の製造業が直面する人口減少と市場縮小という構造的課題。フランスベッドの今回の決断は、この課題に正面から向き合い、生き残りをかけた戦略転換を図る一つのケーススタディーとして注目したい。縮小する市場からの撤退ではなく、効率化を図りながら成長市場へシフトする。この改革の成否が、同社の今後を大きく左右することになるだろう。(星裕一朗)
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