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特定技能ドライバー「安全教育が制度の生命線」

2025年11月11日 (火)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「日本トランスN、ベトナム人ドライバー2人が着任」(10月6日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

ロジスティクス自動車教習所を母体とするシンクスリー(徳島市)は、特定技能外国人ドライバーの受け入れ支援で、独自の教育プログラムを強みに物流業界での存在感を高めている。

同社の祖川嗣朗社長は、「安全教育を軽視した安易な受け入れが横行すれば、制度そのものが崩壊しかねない」と強い危機感を示す。交通安全を最優先し、持続可能な受け入れモデルを構築する考えだ。

同社は登録支援機関として、特定技能外国人ドライバーの受け入れを支援している。直近では、大阪府を拠点に物流事業を手がける日本トランスネット(大阪府河内長野市)に、同社が支援する外国人ドライバーが着任した。物流業界では2024年問題に直面し、ドライバー不足が深刻化するなか、24年12月に運用が始まった特定技能制度への期待は高い。しかし、受け入れ企業にとっては言語や文化の違い、煩雑な手続きが課題となっている。

▲日本トランスネットに着任するベトナム人ドライバー2人(出所:シンクスリー)

「自分たちが今この業界に参入しなければ、制度が続かないという危機感から始まった」。祖川社長は事業開始の動機をこう語る。背景には、十分な交通安全教育を受けないまま来日したドライバーが事故を起こすことへの強い懸念がある。同社は、自動車学校が持つ交通安全教育のノウハウを最大限に活用し、人材教育を事業の核に据えた。この事業は、ベトナムで人材関連業務の経験が豊富な村瀬海外事業統括責任者の参画によって本格的に始動したという。

同社の取り組みは、ドライバー候補者の選定段階から始まる。ベトナムの送り出し機関を厳選し、ブローカーの介在や候補者に不当な借金を負わせるような悪質な業者は徹底的に排除した。候補者には、日本の自動車学校で使われる適性検査を実施し、運転の適性を事前にスクリーニングする。さらに、現地の自動車学校と連携し、日本の指導員が「日本式の教習」を直接指導する体制を構築した。入社後も、ドライブレコーダーの映像を日本の現役指導員が分析し、運転技術の課題改善を継続的に支援する。

祖川社長は、現状の特定技能ドライバー市場に対して警鐘を鳴らす。「免許の外面切替だけで済ませ、安全教育を全く行わない登録支援機関が非常に多い」。コストやスピードを優先するあまり、最も重要な安全が軽視されていると指摘する。こうした状況が続けば、重大事故の発生を招き、世論の反発から制度自体が頓挫するリスクがあると懸念を示す。同社は、事業の持続性こそが重要だとし、安全運転への意識を共有できる運送会社と共に、外国人材が真に活躍できる環境を築いていく方針だ。(菊地靖)

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