
話題「2024年問題」を契機とした物流クライシスは、皮肉にも日本のサプライチェーンに革新の号砲を鳴らした。荷主、物流事業者、行政、そしてテクノロジー企業が連携し、これまで“当たり前”とされてきた非効率に挑む。共同輸送、中継拠点、輸送・保管の自動化──。数々の実証実験が社会実装フェーズへと移行し、国の補助金も拡充されるなか、物流は今、まさに新しい“カタチ”を生み出すための産みの苦しみを迎えている。
新たなスタンダードを創造する営みは、常にリスクを伴う。特に、大規模な投資を必要とする物流施設というインフラにおいては、その一歩を踏み出す“ファーストペンギン”の覚悟は並大抵のものではない。彼らは、前例のない挑戦の海へ、何を羅針盤として飛び込んでいくべきなのか。その問いに答えるべく、筆者は日本の「賃貸用物流施設」の歴史そのものを創り上げてきた業界のファーストペンギン、プロロジスを訪ねた。
マルチの覇者が明かす“ソリューションプロバイダー”としての顔
今や物流施設の代名詞となった「大規模マルチテナント型施設」。天井高5.5メートル、床荷重1.5トン(1平方メートルあたり)、柱間隔10メートル、上層階へ大型車両が直接アクセスできるランプウェイやスロープ──。これらの“標準”を日本市場に定着させ、今日の賃貸用物流施設市場の礎を築いたのがプロロジスであることは論を俟たない。

▲マルチテナント型物流施設「プロロジスパーク」のイメージ(写真は「草加」)
しかし、同社の真価はそれだけではない。これまで日本国内で開発を手掛けた賃貸用物流施設は121棟、総延床面積は820万平方メートル(2025年10月1日時点)に上るが、そのうち実に49棟、208万平方メートルがBTS型(特定企業専用設計)施設なのだ。棟数で見れば、実に4割が顧客一人一人のために創り上げられたオーダーメイドの物流施設ということになる。汎用性と標準化を突き詰めたマルチテナント型の覇者が、なぜこれほどまでにBTS型開発に注力してきたのか。
その答えは、同社が単なる「箱貸し屋」ではなく、顧客企業の事業戦略に深く伴走する「ソリューションプロバイダー」であるという矜持にある。プロロジス開発部部長の村上隆志氏は、その思想をこう語る。
「マルチテナント型施設は、汎用的なスペックであるがゆえに、どうしても収まりきらないニーズがある。冷凍冷蔵、危険物、あるいは製造ラインとの一体化など、お客様が実現したいオペレーションが特殊であればあるほど、BTS型開発の価値は高まる。我々の役割は、お客様の『こうしたい』という想いを、過去の膨大な開発実績というフィルターを通して、『これならいける』という最適解に導くことだ」
この“最適解に導く力”こそが、同社が多くの顧客企業から選ばれ続ける最大の理由だ。そして、BTS型開発を成功させるためには、単なる箱の提供ではなく、顧客との揺るぎない信頼関係と特殊な要望に応える技術力が伴わなければならない。実際、同社にBTS型開発を依頼した企業のほとんどは、まずマルチテナント型施設に入居し、そこで築かれた信頼関係を基盤にBTS開発へと発展しているという。

▲プロロジス開発部部長の村上隆志氏
“当たり前”を創り続けてきた「伴走者」としての実績と信頼
“最適解に導く力”の確かさは、これまでの実績が何よりの証。前述の基本スペックに加え、従業員向けの共用設備(カフェテリアやコンビニエンスストア)、免震構造や非常用発電機といったBCP対策、そして賃貸用の危険物倉庫──。今でこそ“当たり前”になりつつあるこれらの設備の多くは、かつてプロロジスが市場の声を汲み取り、リスクを取って標準化してきたものだ。
BTS開発における提案力は、さらにその先を行く。例えば、キユーソー流通システム向けの「プロロジスパーク仙台泉」。同一建屋内に4温度帯を備えるという難題に対し、結露リスクを最小限に抑えるため、温度帯区画を階層別ではなく縦に区分するという画期的なプランを提示。将来性まで見越したこの施設は、キユーソー流通システムの東北エリアにおける事業戦略そのものを具現化したものといえる。


▲キユーソー流通システム向けのBTS施設「仙台泉」
また、ロジスティードケミカル(東京都台東区)向けの「プロロジスパーク古河2」では、危険物倉庫と一般物倉庫の一体開発という要望に対し、自社所有地の一部を危険物倉庫用地として売却するという大胆なスキームを提案。不動産デベロッパーの常識にとらわれない最適解を導き出した。

▲ロジスティードケミカル向けのBTS施設「古河2」は、危険物倉庫棟(左下)と一般倉庫(右上)の一体開発
こうした柔軟かつ的確な提案を可能にしているのが、プロロジス独自の組織体制だ。村上氏は「BTS型開発では、土地取得から企画を担う開発部隊、建物の設計を担うエンジニア、そして完成後の管理運営を担うプロパティマネージャーまで、各分野の専門家がプロジェクト発足時からワンチームでお客様と向き合う。『建設会社に聞いてみないと分からない』ということはほぼなく、一気通貫でサポートする体制が整う」と解説する。
このワンストップ体制が、圧倒的なスピード感と精度の高い提案を可能にする。例えば、ある顧客から「当社が扱う荷物は重いので床荷重は平米あたり3トンは必要だ」という要望が出た際も、プロロジスは過去の膨大なオペレーションデータから「お客様の業務なら2トンで十分」と助言し、コストの最適化を実現したという。
さらに、EC(電子商取引)大手ZOZOの専用センター開発では、建物の基本スペックはマルチテナント型に準じつつ、自動化設備(マテハン機器)のレイアウトに合わせて、建物の設計段階から防火区画の位置を最適化。これも、顧客のオペレーションを深く理解し、潜在的な課題まで先回りして提案できるプロロジスならではの「伴走力」の証左だ。


▲ZOZO向けのBTS開発「つくば3」
新たな挑戦の舞台、「プロロジスパーク行田」が秘める可能性
そんなプロロジスが、“今すぐにでも開発に着手できるBTS用地”として提示するのが、埼玉県行田市の「プロロジスパーク行田」だ。6万平方メートル(1万8000坪)という広大な敷地は、新たな物流のカタチを模索するファーストペンギンたちにとって、まさに白紙のキャンバスとなる。

▲「プロロジスパーク行田」の完成イメージ(顧客ニーズにより仕様は変わる)
「正直に申し上げて、今はまだ、行田という地名自体に強い訴求力があるわけではない。しかし、だからこそ、この土地には無限の可能性がある」
村上氏がこう語るように、この用地は埼玉県との長年にわたる信頼関係の末に取得した経緯があり、プロロジスは入居企業のニーズに合わせて、敷地の分割から建物の仕様まで、ゼロベースで最適なプランを構築する構えだ。
東北自動車道・羽生インターチェンジまで15分という立地は、関東全域から東北、関越方面への広域配送拠点として機能する。周辺には自動車、食品、飲料メーカーの工場が集積しており、サプライヤーの門前倉庫や、生産拠点と連携した保管・出荷拠点としてのポテンシャルは高い。また、半径30分圏内に68万人という豊富な人口を抱え、雇用確保の面でも優位性を持つ。
「例えば、昨今の建設費高騰で自社での拠点新設を断念したメーカーも少なくない。そうした企業にとって、賃貸でありながら自社のオペレーションに完全特化した施設を構築できるBTSは、有力な選択肢となり得る。我々には、お客様の投資を最適化するためのノウハウもある」(村上氏)
さらに同氏は、この用地が持つユニークな可能性に言及する。「これだけの広さがあれば、例えば、競合する2社が共同配送センターを立ち上げる、といった先進的な取り組みも可能だ。あるいは、製造業のお客様が倉庫併設型の工場を建設する、といったご相談にも応じられる。行政(埼玉県・行田市)との連携も密であり、企業誘致に関するさまざまな支援も期待できる。我々は、あらゆる可能性に対してオープンなので、ぜひ、皆様の『やりたいこと』をぶつけてほしい」

物流業界が大きな変革期を迎える今、求められるのは過去の延長線上にはない、大胆な発想とそれを実現する実行力だ。プロロジスという“最強の伴走者”を得て、ここ行田の地から、未来の物流スタンダードを創り出す。そんな気概に満ちたファーストペンギンの登場を、プロロジスは待っている。
敷地面積:6万平方メートル(1万8000坪)
延床面積:最大約12万平方メートル(3万6000坪)
構造:地上2-4階建て※
着工予定 2026年春※
竣工予定 2027年秋※
※入居企業の要望に応じて設計予定
東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルディング22階
TEL:0120-936-380
Mail:pldnews@prologis.co.jp
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