ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

WtE技術の実用化へ本格的事業展開、エナウム

2025年10月29日 (水)

荷主廃棄物からのエネルギー回収(WtE)技術の実用化を目指し今月16日に設立されたエナウム(千葉県木更津市)は29日、廃棄物を水素由来エネルギーや持続可能な航空燃料(SAF)に変換するガス化システムの本格的な事業化を目指し、今年度から実証的な商用システムの導入を開始すると発表した。2027年度以降、全国に地域分散型エネルギーネットワークを構築し、SAF製造プラントの本格稼働を開始して国内航空会社への供給体制を確立するとしている。

同社は、25年にわたりWtEの研究開発実績を持つマイクロ・エナジー(神奈川県厚木市)の技術を社会実装しようと、橋本芳郎マイクロ・エナジー社長らが参加して設立した。

マイクロ・エナジーが開発したWtE技術では、廃プラスチックや都市ごみ、災害瓦礫、太陽光パネル、下水汚泥、森林バーク(樹皮)など、あらゆる廃棄物を分別せずに処理でき、水素濃度60%、CO濃度30%という理想的な配分の混合ガスを生成する。

▲WTEシステム(出所:エナウム)

この混合ガスは高品質なSAFの製造に最適で、タール含有量も従来技術と比較して圧倒的に低い。

10トンの都市ごみから、1万1000立方メートルの合成ガス(発熱量2万4000メガカロリー)を生成し、10.6メガワット時の発電が可能になる。これは490世帯分の1日の電力使用量に相当する。同量の廃棄物から2000リットルのBTL(バイオ液体)合成燃料も作り出せる。

製造されるBTL燃料は、交通安全環境研究所での長期検証試験で軽油相当の性能が確認されている。着火性に優れ、硫黄分がゼロでSOx(硫黄酸化物)も排出しない。

同社によると、こうした技術の実用化によって、2030年代に本格化する太陽光パネルの大量廃棄問題への対応が可能になり、アルミフレームやガラス、シリコンセル、樹脂などを分離する複雑な工程が不要になるだけでなく、灰分から希少金属やガラスを回収することもできる。

大規模災害時のがれきも、木材やプラスチック、コンクリート片など素材を問わず混合処理でき、発電することによって、早期の電力供給も可能になる。

また、全国の下水処理場から排出される汚泥も効率的にガス化でき、1日に汚泥が50トン発生する中規模処理場では、処理費用を削減しながら52.8メガワット時の発電が可能になり、処理場の電力自給率を大幅に向上させるうえ、売電による収益も見込める。

林業で年間200万トン発生する樹皮も、同社のシステムを使えばSAFの原料となる。1日10トンの樹皮で2000リットルのSAFを製造できるといい、林業の新たな収益源として期待できる。

同社は今年度中に全国3-5か所で実証的な商用システムを導入し、太陽光パネル処理や汚泥処理、林業などの分野でモデルケースを確立。来年度には地方自治体や民間事業者と提携し、10-20か所へと拡大する。27年度以降、日本全国に地域分散型エネルギーネットワークを構築した後は、アジア太平洋地域を中心に、新興国への技術輸出も検討する。

同社の早川昇CEOは「資源循環型社会の実現と地域のエネルギー自立を支援する社会インフラ企業を目指して全国の自治体、事業者と協力し、日本が世界に誇れる循環型エネルギーシステムを構築していく」としている。

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com

LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。

ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。