
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「日本郵便2Q、損失幅500億円改善も赤字継続」(11月14日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
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財務・人事日本郵政は14日、2026年3月期第2四半期の連結決算を発表し、通期の業績予想を修正した。グループ全体の連結経常利益を期初予想から600億円引き下げ9600億円としたほか、中核の日本郵便が担う郵便・物流事業セグメントの営業損益予想を、従来の290億円の黒字から240億円の赤字へと、一挙に530億円も下方修正した。郵便料金の値上げやJPトナミグループの連結化による増収効果があったものの、点呼業務の不備に伴う行政処分への対応費用や、人件費の高騰が経営を圧迫する。

▲2026年3月期通期業績予想(出所:日本郵政)
中間期の連結経営成績は、経常収益が前年同期比3.1%増の5兆6824億円、経常利益が同12.6%増の5216億円と増収増益を確保した。しかし、詳細を見ると物流事業の構造的な厳しさが浮き彫りとなる。郵便・物流事業セグメントの営業損益は255億円の赤字だった。前年同期の947億円の赤字からは改善したが、郵便料金改定による単価上昇やJPトナミグループの子会社化などの増収効果(プラス1766億円)を、営業費用の増加(プラス1074億円)が大きく相殺した形だ。
特筆すべきは、通期予想における郵便・物流事業の530億円もの下方修正だ。最大の要因は、全国の郵便局で長期間放置されていた点呼業務不備に伴う「行政処分の影響」と「再発防止策のコスト」だ。日本郵便は6月、国土交通省から一般貨物自動車運送事業の許可取り消し処分や輸送の安全確保命令を受けた。これにより、1トン以上の自社トラックが使用不能となり代替輸送としての委託費が急増したほか、信頼回復に向けたオペレーションの再構築が急務となった。

▲郵便・物流事業セグメント決算の概要(出所:日本郵政グループ)
再発防止策として、日本郵便は今年度中に「貨物軽自動車安全管理者」を5万人選任し、講習を受講させる計画を打ち出した。さらに、集配関係社員12万人を対象としたコンプライアンス研修を実施し、意識改革を徹底する。これらに加え、日本郵便の7月31日発表の内容によると、全集配郵便局にアルコールチェックや点呼記録の電子化が可能なシステムを導入し、9月末までに機器配備を完了、11月末からの運用開始を進めるとしている 。これら「人」への教育投資と「設備」へのデジタル投資が、短期的なコストとして重くのしかかる。

▲点呼業務の不備事案の再発防止策等の報告(出所:日本郵便)
物量面での苦戦も続く。中間期の総引受物数は5.4%減の77億4600万通・個にとどまった。荷物分野では「ゆうパック」が0.6%増、「ゆうパケット」が5.3%増と微増したが、利益率の高い郵便物は7.1%減と減少幅が拡大している。人件費単価の上昇により、人件費総額は前年同期比で341億円増加しており、物量の伸び悩みとコスト増の板挟み状態が鮮明だ。
一方で、グループ戦略としての物流網強化は進める。4月に子会社化したJPトナミグループの影響で814億円の増収効果があったほか、10月にはロジスティードホールディングスとの資本業務提携を決議した。国際物流事業は、海上運賃の下落や取扱量の減少で330億円の減収となったが、コスト削減によりEBIT(利払い・税引き前損益)の減少は3億円にとどめ、42億円の黒字を維持した。
日本郵便は、点呼不備による信頼失墜とコスト増という「負の遺産」を清算しつつ、郵便物減少という構造変化に対応しなければならない。5万人の管理者育成とデジタル点呼の徹底が、現場の安全文化を再構築し、将来的な収益基盤の回復につながるかが問われる。
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