
▲寺岡洋一会長(出所:全日本トラック協会)
ロジスティクス全日本トラック協会の寺岡洋一会長は2026年の年頭所感で、改正物流法や中小受託取引適正化法(取適法)、トラック適正化2法を軸に、取引慣行の是正と持続可能な輸送の土台づくりを最重要テーマに据えた。
適正原価の導入により不当な低運賃発注を抑止し、燃料・人件費などコスト上昇分を運賃へ転嫁できる環境整備を進める考えを示した。委託次数の制限や白トラ規制、許可更新制などは段階施行として見通しを提示し、実態調査への協力やGメンの是正指導強化も明記。あわせて、CLO(物流統括管理者)選任義務化への対応支援、安全対策の徹底、脱炭素、道路インフラ・休憩施設の整備要望など、制度実装と現場負担の両面から課題に取り組む姿勢を強調した。
以下、全文。
令和8年を迎えるにあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年6月、前任の坂本克己最高顧問の後任として全日本トラック協会の会長に就任しました。昨年は私個人にとっても、そしてトラック運送業界にとっても激動の年だったといえるでしょう。
まず、昨年4月には「改正物流法」(新物流効率化法、改正貨物自動車運送事業法)が施行され、5月には「取適法」(製造委託等に係る中小受託事業者に対する支払の遅延等の防止に関する法律)が成立し、ことし1月1日から施行されました。そして、6月には「トラック適正化2法」(改正貨物自動車運送事業法、貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律)が成立しました。
また11月の与野党合意により、ことし4月1日に軽油引取税の暫定税率が廃止されることになりました。軽油引取税の暫定税率廃止に伴い、運輸事業振興助成交付金の維持に向け、超党派による議員立法で先の臨時国会に「運輸事業振興助成法改正案」(運輸事業の振興の助成に関する法律の一部を改正する法律案)が提出されました。令和13年3月31日までの5年間、現行の交付金制度が維持される内容となっています。
トラック適正化2法の成立や運輸事業振興助成法改正案の国会提出に至ったのは、国会議員の先生方や国土交通省をはじめとした関係省庁及び労働組合のご理解はもとより、業界の皆様が一致団結して必死に汗を流してきた結果だと考えております。改めて、業界の皆様方のご尽力に心より御礼申し上げますとともに、運輸事業振興助成法改正案の早期成立に向け、引き続き関係の皆様のご理解・ご協力お願いいたします。
トラック適正化2法では、改正貨物自動車運送事業法のなかで、トラック運送事業の許可について5年ごとの更新制の導入▽国土交通大臣が定める「適正原価」を下回る運賃・料金の制限▽再委託の回数を2回以内に制限するよう努力義務化▽違法な白ナンバートラックの利用を禁止し(罰則付)、荷主などに対しては是正指導も実施──などを盛り込んでいます。
また、この事業法を担保するための「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」(新法)は、基本方針の策定▽法制上の措置など▽物流政策推進会議──を柱としています。トラック適正化2法で示された内容が実現した暁には、業界を取り巻く景色が一変するのではないかと感じています。
全ト協では、私が委員長を務める、本件に特化した「トラック適正化二法対策委員会」を新たに立ち上げ、昨年8月27日に第1回委員会を開催しました。第1回委員会では、委員会設立の意義と経緯について説明した上で、「改正事業法の全面施行まで3年。業界の健全な発展に向けて、本日お集まりの皆様が一致団結して、全面施行に向けて精一杯取り組んでいきたい」と決意を述べました。
ことし4月には、「委託次数の制限」と「違法な白トラに係る荷主等の取り締まり」が施行され、続く第2段階は、公布後3年以内に施行とされており、令和10年春頃になると思われますが、ここから「許可更新制度」と「適正原価の遵守義務」が施行することになります。全ト協では今後も、国交省と強く連携しながら、トラック適正化2法の全面施行に向けて準備を進めてまいります。
燃料価格をはじめとする輸送コスト上昇分や、ドライバーの労働条件改善を進めるための原資については、荷主に対して適切に運賃・料金として転嫁していくことが基本であり、トラック運送事業者が適正な運賃・料金を収受できる環境を整備することが重要であると考えます。そうした中で高騰する輸送コストや人件費などの上昇分を荷主に転嫁できていない運送事業者が少なくありません。荷主からコスト上昇分を運賃・料金として適正に収受できなければ、運送事業者の多くが持続可能な事業経営を行うことができなくなります。一方で、車両価格について、アルミや半導体など原材料費の高騰、あるいは安全や環境性能向上のための装備が増えることなどによって価格が高騰しており、全ト協として車両価格の高騰問題についてもしっかり対応してまいります。
さらに昨年9月、軽油価格カルテルの疑いで公正取引委員会により石油販売会社に対し、犯則調査が行われました。大変遺憾なことであり、全ト協としては、徹底的な事実解明と厳正な対処を求めるとともに、公取委の動向を注視し適宜対応を図ってまいります。
現在、国交省では、トラック適正化2法で規定された適正原価の算定に向けた準備が進められております。適正原価という指標を国に示していただくことは大変ありがたいことであり、法的根拠のある適正原価が導入されることで、荷主が運送事業者に対して不当な運賃で輸送を依頼することへの大きな抑止力になることが期待されます。
一方、適正原価の算定にあたっては、現在、国交省において、全事業者を対象に実態調査を実施しており、本調査では全国のトラック運送事業者から原価構造などのデータを提供いただく必要があります。会員事業者の皆様には必ず回答をお願いいたします。
併せて、全ト協では、適正原価の実効性を高めるとともに、運送事業者が適正な運賃・料金を収受できる環境の整備を進めるために、国交省をはじめとした関係省庁と連携し、独占禁止法や取適法における取り締まりや指導の強化、令和6年11月に体制が強化されたトラック・物流Gメンによる情報収集や荷主などによる悪質な行為に対する是正指導の強化などを通じて、輸送コスト上昇分やドライバーの待遇改善に向けた原資を確保できるような取引環境の整備に向け、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。
昨年4月に施行された改正物流法では、荷主および物流事業者などに対し、トラックドライバーの荷待ち時間などの短縮、積載率の向上などに資する取り組みを行う努力義務を課しているほか、元請け事業者に対し、実運送事業者の名称などを記載した実運送体制管理簿の作成を義務付けるとともに、荷主やトラック運送事業者などに対し、運送契約締結時の書面交付などを義務付けています。
さらに、ことし4月から、一定規模以上の荷主に対して、物流統括管理者(CLO)の選任、中長期的な計画の作成や取り組み状況の報告などが義務付けられます。取り組みの実施状況が不十分な場合は、勧告・命令が実施されることとなります。
これらにより、物流業界の多重下請け構造を是正し、実運送事業者の適正な運賃収受を図っていくことになります。
全ト協では、改正物流法を解説する会員事業者向けホームページを開設したほか、実務者向けに法改正の内容を分かりやすく解説する動画を公開するなど、会員事業者の理解促進に取り組んでいます。
また、運送契約の範囲や運賃・料金の明確化を図るため、運送契約締結時に、運送サービス(付帯業務なども含む)の内容やその対価などについて記載した書面の交付が運送事業者と荷主の双方に義務付けられたことを受けて、全ト協では会員事業者が荷主との運送契約を円滑に、かつ効率的に締結できるよう、「運送申込・書面化アプリ」を開発し、デジタル化対応が進んでいない中小運送事業者に無償で提供しています。
併せて、全ト協では国交省と連名でリーフレットを作成し、事業者や荷主に向けた広報活動を展開するなど、業界全体で発信力を高め、改正物流法の周知徹底に努めたいと考えています。
トラック運送業界は、「安全で安心な輸送サービスを提供し続けること」が社会的使命であり、常に「安全」を最優先課題と位置付けながら事業を展開しなければなりません。
しかしながら、事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数は令和6年よりも減少しているものの、依然として多い状況にあります。また、根絶すべき事業用トラックによる飲酒事故も依然として発生しているほか、大型車による車輪脱落事故も発生しています。
国交省では、令和7年度までを計画期間とする「事業用自動車総合安全プラン2025」に代わる次期総合安全プランの策定に向けた準備を進めています。全ト協では、次期総合安全プランを受けて策定する次期「トラック事業における総合安全プラン」に基づき、事業用トラックが関係する交通事故による死傷者数などの目標達成を図ります。会員事業者の皆様におかれましては、今一度基本に立ち返り、緑ナンバーの自信と誇りをもって安全運行の徹底に努め、安全・安心な輸送の確保をお願い致します。
気候変動をもたらす地球温暖化防止のため、全ト協では2050年のカーボンニュートラルを目指し、「トラック運送業界の環境ビジョン2030」を定めています。本ビジョンのメイン目標として、トラック運送業界全体の2030年のCO2排出原単位を2005年度比で31%削減することを掲げ、環境対応車導入促進助成事業や「トラックの森」づくり事業などの取り組みを引き続き推進してまいります。また、「黄金のペットボトル」など社会問題化するゴミのポイ捨て問題についても、業界全体の意識の向上を図るため、会員事業者の皆様のご協力をお願いいたします。
トラック運送事業者が「国民生活と経済のライフライン」としての機能を果たし続けていくためには、利用者目線での計画的な道路整備の推進が必要です。
道路を使用するドライバーの労働環境改善の観点から、暫定2車線区間の4車線化やミッシングリンクの解消、渋滞対策の推進、高速道路のサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)などにおける駐車スペースの整備・拡充など、多くのトラック運送事業者の輸送効率化に繋がる道路整備の推進が求められます。また、トラック輸送は国民生活と産業活動を支える公共的物流サービスの担い手であることから、運送事業者にとって利用しやすい高速道路料金水準が求められます。
全ト協では全国道路利用者会議と連携して、我が国の生産性を向上させ、成長力および国際競争力を強化するため高規格道路のミッシングリンクの解消や暫定2車線区間の4車線化、重要物流道路の整備推進など幹線ネットワークの強化を国交省などに働きかけていきます。また、高速道路料金について、利用に応じた料金制度としつつ、運送事業者向け割引の継続を強く求めていきます。さらに、ドライバーの働き方改革や生産性向上、カーボンニュートラル推進を図るため、利用者目線での渋滞対策の実施、道の駅などの休憩施設の機能強化、中継物流拠点の整備および交通結節機能の強化などを求めていきます。
SA・PA、道の駅における駐車スペースや休憩・休息施設は、労働関係法令の順守およびドライバーの労働環境改善のためになくてはならない必要な施設であることから、全ト協では、SA・PA、道の駅における大型車および特大車用の駐車スペースや休憩・休息施設となる建屋内設備の整備・拡充、特にシャワー施設の設置箇所拡大について、引き続き国交省などに対して要望活動を行っていきます。
我々トラック運送事業者の願いは、エッセンシャルワーカーとして物流の現場で日々奮闘しているドライバーに、夢や希望、誇りを胸に、「我々が日本のくらしと経済を支えている」との熱い思いをもちながら、日々仕事をしてもらうことに他なりません。
多くの運送事業者が荷主などに対して果敢に運賃・料金交渉を行い、適正運賃・料金を収受することで、ドライバーの地位向上と労働条件の改善が図られるとともに、それが安定的な物流の確保につながり、国民経済の健全な発展に寄与するのです。
スピード感をもちながら重点的に解決していかなければならない課題は、地域によって温度差があり様々です。私は、「業界内の風通しを良くしていくこと」も非常に重要であると考えています。会員事業者の皆様方から、様々な課題を全ト協に対し積極的にご提供いただくとともに、全ト協としては、そうしたお声に真摯(しんし)に耳を傾け、「会員ファースト、業界ファースト」で業界の健全な発展に資する諸施策を強力に推し進め、個々の事業者の持続的な成長につなげていきたいと考えております。
会員事業者の皆様方のますますのご発展とご健勝、ならびにご多幸を心より祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。
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