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トラック依存98%に警鐘、東京港モーダルシフト議論

2025年12月5日 (金)

ロジスティクス東京港埠頭(東京都江東区)は2日、28回目となる「東京港メーカー等物流担当者意見交換会」を開催した。会場には荷主企業を中心に多数が参加し、港湾行政、船社、鉄道の3者が最新施策を共有した。登壇したのは、東京都港湾局港湾経営部の傳法聡子氏、オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)輸入営業部の栗崎恵司郎氏、日本貨物鉄道(JR貨物)営業開発部国際営業グループの久保田聡氏で、港湾運営から地方港活用、鉄道輸送まで多方面のテーマが取り上げられた。

▲意見交換会の様子

傳法氏は東京港の輸送実態とモーダルシフトの必要性を説明。2023年の国の調査では、東京港のコンテナ搬出入の98%がトレーラー輸送に依存し、長距離輸送ではトラック確保の困難化やコスト上昇が見込まれるとした。一方、東北地域では25%が内航船輸送で、地域によりモーダルシフトの進度が大きく異なる。さらに輸出入の偏りにより空コンテナ回送が多く発生する構造的課題も示した。

▲東京都港湾局港湾経営部の傳法聡子氏

都が対策として、内航フィーダー活用時の補助金、港湾のコンテナターミナル間の横持ち1輸送あたり1万円の支援、東京貨物ターミナル駅と連携した鉄道利用の積み替え支援を行っていることを紹介。また、港湾近接デポを活用する「オフピーク配送モデル」では、夜間輸送と午前中搬出によりゲート前待ち時間の大幅削減が確認されているという。傳法氏は「航路や鉄道ネットワークの活用がCO2削減と輸送効率化につながる」と述べ、荷主企業に取り組み活用を促した。

ONEの栗崎氏は「ONE Green Belt」(OGB)を軸に、地方港活用の必要性を説明。輸出入貨物が東京港に集中する状況は、バース混雑や滞船リスクを高めており、物流の安定性確保のためにも内航船社と連携した貨物流動の分散が欠かせないとし、「東京港に依存しがちな輸出入オペレーションを見直し、地方港を組み込んだ輸送ルートを選択肢として持つことは、港湾負荷の軽減だけでなく、荷主側のリスク分散にもつながる」と強調した。

▲オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)輸入営業部の栗崎恵司郎氏

さらに、環境対応の重要性にも言及し、IMO(国際海事機関)の国際的な温室効果ガス削減要求が強まるなかで、「環境目標に対するONEの方針は変更せず、引き続き取り組む」と述べた。欧米では企業の調達方針にCO2排出量基準を組み込む動きが進んでおり、船会社にも一層の脱炭素対応が求められていると説明。氏は「地方港を活用した分散輸送は、環境負荷低減にも寄与する。安定輸送とサステナビリティの両立に向け、OGBの活用を広げたい」と述べた。

JR貨物の久保田氏は国際海上貨物における鉄道輸送の活用可能性を説明した。鉄道輸送は認知度が低く、輸送シェアも0.2%にとどまるが、全国に広がる鉄道網を貨物列車が1日18.3万キロ(地球4周半相当)走行しており、長距離大量輸送に強みを持つとした。

▲日本貨物鉄道(JR貨物)営業開発部国際営業グループの久保田聡氏

輸出入貨物向けのサービスは3つある。第1に、20フィート・40フィート海上コンテナを貨車にそのまま積載する「ダイレクト輸送」。第2に、40フィートのハイキューブが走行できない区間を補うため12フィートコンテナへ積み替える「クロスドック」。第3に、船社と連携してレールと海上輸送を組み合わせる「国際フェリー・ロード一貫輸送」。

さらに、10トン車と同等の積載量を持つ31フィートコンテナなど、多様な貨物に対応するコンテナラインアップも紹介した。久保田氏は「鉄道はCO2削減効果が大きく、長距離輸送の代替手段として有効性が高い」と述べ、港湾側の支援策と合わせた活用を呼びかけた。(土屋悟)

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