ロジスティクス「危険物倉庫緊急サミット第2弾『危険品物流、進化論。』~規制緩和で拓く、ビジネス好機の扉~」を、11日本誌は開催した。2022年の第1弾から3年を経て、危険品物流は「保管場所不足」というハード面の課題に加え、24年問題を背景とした「運べないリスク」という深刻な輸送危機に直面している。
イベントには、プロロジス(東京都千代田区)のエグゼクティブ・ディレクター開発部部長の佐藤英征氏、三和建設(大阪市淀川区)の執行役員大阪本店次長である松本孝文氏、長瀬産業(東京都千代田区)の機能化学品事業部トータルソリューション部の北越開陽氏が登壇。保管と輸送の両面から、サプライチェーン維持のための企業間「協調」の必要性を訴えた。

▲危険物倉庫緊急サミット第2弾「危険品物流、進化論。」の様子
イベント前半では、保管領域の激変が整理された。危険物市場変化の主役は従来の原料から、スプレー缶やリチウムイオンバッテリー(LiB)搭載品へシフトしている。在庫集約による指定数量超過が発生し、危険物倉庫の需給は依然としてひっ迫している。これに対し、供給側も進化を遂げている。プロロジスは茨城県古河市で大規模な危険物倉庫群を展開し、一般倉庫との一体運用モデルを確立。三和建設は、法規制の隙間を埋めるコンサルティング型の建設提案を加速させている。
また、本年の消防法関連規定の改正により、一定条件下での一般倉庫内でのLiB保管や、移動ラックの設置基準が明確化された。庫内での非防爆デジタルツールの使用も解禁され、保管効率と作業生産性の向上に向けた環境整備が進んでいることが共有された。
後半の議論は、より深刻さを増す「輸送」の現場実態に集中した。長瀬産業の北越氏は、荷主から寄せられる切実な声を代弁し、「路線便(混載便)での危険物の受託拒否が始まっている」と警鐘を鳴らした。危険品の取り扱いに必要な資格者やノウハウを持つドライバーが減少する一方で、コンプライアンス順守の要求は高まるばかりだ。その結果、従来は路線便で運べていた貨物が運べなくなり、高コストなチャーター便(貸切便)で少量を運ばざるを得ない状況に陥っている。北越氏はこれを「効率の悪い物流が生じ、集積場所が増えるという悪循環」と表現し、リソースそのものが枯渇する危機感を共有した。

▲長瀬産業の北越開陽氏
この「運べないリスク」に対する解決策として提示されたのが、長瀬産業が2023年11月から提供する「化学品AI共同物流マッチングサービス」だ。同サービスは、荷主や物流会社が抱える「帰り便(空車)」や「積載率の低い便」の情報をAI(人工知能)が集約し、最適なパートナーを自動でマッチングさせる仕組みだ。現在、利用企業は85社を超え、荷主と物流会社が半数ずつの割合で参加している。北越氏は具体的な成功事例として、大阪-富山間の輸送ルートを紹介した。大阪から北陸へ輸送するA社と、北陸から大阪へ輸送するB社をマッチングさせることで、双方の帰り便を有効活用し、積載効率を30%から60%へと劇的に改善させた。「これまでは関係のなかった企業同士を結び付けることで、限られた輸送リソースを有効活用できる」。北越氏は、AIを活用した企業間の連携こそが、物理的なリソース不足を補う鍵だと強調した。
輸送効率の向上は、マッチングなどのソフト面だけではない。倉庫という「ハード面」からのアプローチも進んでいる。三和建設の松本氏は、トラックの待機時間削減や荷役効率化に寄与する設計の重要性を説いた。具体例として挙げられたのが、プロロジスが開発した「プロロジスパーク古河6」などの最新施設だ。ここでは、雨天時や猛暑下でも作業がしやすいよう、大型の庇(ひさし)を設置している。

▲三和建設の松本孝文執行役員
また、別のプロジェクトでは低床が基本となる危険物倉庫において、敷地内に掘り込み式のスロープを設けることで、海上コンテナのデバンニング作業を効率化する独自の設計も導入している。
プロロジスの佐藤氏は、「施設側で輸送や荷役の負担を軽減する工夫を凝らすことが、結果として物流全体の効率化につながる」とし、デベロッパーとしても輸送課題に向き合う姿勢を示した。

▲プロロジスの佐藤英征部長
議論の最後には、使用済みリチウムイオンバッテリーの回収など、「静脈物流」の課題にも触れた。新品(動脈)の供給が増えれば、必然的に廃棄・リサイクル(静脈)の需要も爆発的に増加する。しかし、現在の処理施設や輸送キャパシティは限界に近い。北越氏は「動脈物流の帰り便を静脈物流に活用する」という構想を披露したが、同時に「産業廃棄物の収集運搬業許可が自治体ごとに必要となる」という法制度の壁も指摘した。
総括として、3氏は「危険品物流の課題は、もはや一社単独では解決できない」という認識で一致した。保管(倉庫)、建設(ハード)、輸送(ソフト)が複雑に絡み合うなか、業界の垣根を超えた協力体制が不可欠だ。松本氏は「知識を増やし、他社と連携することで解決策を模索していく」と述べ、佐藤氏も「デベロッパーとして土地や建物の提供を通じ、新たなニーズに応えたい」と意欲を見せた。法改正やローカルルールの情報共有を含め、サプライチェーン全体での「協調」が、危険品物流の未来を拓く唯一の道だ。

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