
記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「ZAICO、東北発スタートアップ支援事業に採択」(1月19日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)
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話題日本の物流・製造現場が直面する「人手不足」は、地方においてより深刻かつ切実な課題となっている。こうしたなか、山形県米沢市に拠点を置くZAICO(ザイコ)が、経済産業省などが推進する「J-Startup TOHOKU」に選定された。同社が開発するクラウド在庫管理システム「zaico」が示唆するのは、単なる一企業の成功ではない。地方の現場に根ざしたデジタル技術こそが、地域経済の持続性を支える「最後の砦」になり得るという可能性だ。
「現場の言葉」を翻訳できる距離感
ZAICOの原点は、代表・田村壽英氏の実家が山形で営む倉庫業にある。あるとき田村氏は、システム導入に抵抗のあった現場スタッフが、私生活ではスマートフォンを自在に使いこなしているのを目の当たりにした。「スマホアプリなら現場で使ってもらえる」。この確信こそが、地方のDX(デジタルトランスフォーメーション)を阻む「ITへの心理的障壁」を突破する鍵となった。
ここで重要なのは、同社が今も山形に拠点を置き続けている点だ。地方の現場には、マニュアル化できない独自の商習慣や、都会のオフィスでは想像もつかない泥臭い課題が山積している。システムベンダーが地方に根ざす意義は、単なる地産地消ではない。現場と同じ空気感を共有し、スタッフが発する「使いにくい」という本音を、即座に「改善」へと翻訳できる距離感にある。IT専任担当者を置けない中小零細企業にとって、この「伴走者としての近さ」こそが、導入後の挫折を防ぐ最大の武器となるのだ。
大都市圏への資金流出を止め、地方で循環させる
これまで地方企業がデジタル化を図る際は、都市部のIT企業のサービスを導入するのが一般的だった。しかしこれは、地方の資金が都市部へと流出し続ける構造でもあった。山形から生まれたZAICOが「東北のロールモデル」に選ばれたことは、こうしたお金と技術の流れに新たな選択肢を提示している。

▲ZAICOの田村壽英社長(出所:ZAICO)
地方の切実な悩みから生まれたソリューションを、同じ痛みを知る地域の企業が活用し、そのフィードバックがさらにシステムを磨き上げる。こうした「地方発・現場起点」の循環を後押しするためには、行政によるバックアップも欠かせない。J-Startupのような支援枠組みや補助金を活用して地場の技術を導入することは、産業の空洞化を防ぎ、地域全体で生産性を底上げするための極めて現実的な戦略といえる。
2030年、地場の産業を守り抜くための決断
現在、地方は労働人口の減少だけでなく、深刻な過疎化という一刻を争う事態に直面している。さらに「2030年問題」として、物流分野では全国の荷物の約3割が運べなくなるリスクが目前に迫る。もはや、アナログなやり方に固執して静観している猶予はない。
「地方だからこそ、DXが進まない」のではなく、「地方だからこそ、現場に寄り添うデジタルを積極的に導入していくべき」なのだ。行政のサポートを逃さず活用し、地場の産業基盤を自らの手で守り抜く。その決断を下すために残された時間は、決して多くない。
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