国際米連邦最高裁は2026年2月20日、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき各国に課した関税について、大統領の権限を逸脱した違法な措置とする判決を下した。判決は6対3。IEEPAに基づく相互関税、フェンタニル関税など全ての関税が法的根拠を失い、即時に無効となった。トランプ大統領は判決を「恥さらし」と批判し、同日中に1974年通商法122条に基づく全世界一律10%の代替関税を発動すると表明した。日本を含む各国との貿易合意の前提が根本から覆り、グローバルサプライチェーンは再び大きな不確実性に直面している。荷主企業、物流企業ともに、サプライチェーンマネジメント(SCM)を経営の中核に据えた対応が不可避だ。(編集長・赤澤裕介)
通関・物流の実務に直結
ロバーツ長官が執筆した法廷意見は、IEEPAの条文にある「輸入を規制する」という権限に関税の賦課は含まれないと明確に判断した。ゴーサッチ、バレット両判事が同調する補足意見で大統領への権限委譲の限界を強調し、ケーガン判事もソトマイヨール、ジャクソン両判事とともに結論に同意した。反対意見はトーマス、カバノー、アリートの3判事が執筆した。
この判決で無効となったのは、カナダ・中国・メキシコ向けフェンタニル関税、70カ国・地域以上を対象とした相互関税(いわゆる「解放の日」関税を含む)、ブラジル向け関税、インド向け二次関税だ。日本に対しては25年7月の日米合意でIEEPA関税率が15%に設定されていたが、その法的根拠が消滅した。
一方、通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム関税(25%)、自動車関税(日米合意で15%)は今回の判決の対象外で、引き続き有効だ。対中301条関税も別の法的根拠に基づいており、影響を受けない。
トランプ大統領は判決から数時間後にホワイトハウスで記者会見を開き、通商法122条に基づき全世界からの輸入品に10%の関税を課す大統領令に署名すると表明した。同条は国際収支の悪化を理由に最長150日間(5カ月間)の関税を認める規定で、IEEPAのような無期限・包括的な関税とは性格が異なる。大統領はさらに、既に徴収したIEEPA関税の還付について「今後5年間は法廷闘争を続ける」と述べ、各国との貿易合意についても一部変更の可能性を示唆した。
タックス・ファウンデーションの試算では、IEEPAに基づき徴収された関税の累計額は1600億ドル(24兆円)を超える。ペン・ウォートン予算モデル(PWBM)は1750億ドル(26兆円)超と見積もっている。ただし最高裁判決は還付プロセスを示さず、具体的な手続きは国際貿易裁判所(CIT)に委ねられた。住友化学、豊田通商、リコーなど日系9社が現地法人を通じてCITに還付請求訴訟を提起済みで、提訴企業は全体で1000社を超えている。
物流・サプライチェーンへの影響は甚大だ。過去1年間、荷主企業は高関税を前提に調達先の変更、在庫の積み増し、生産拠点の移管といったサプライチェーンの再設計を進めてきた。IEEPA関税の無効化と通商法122条への切替により、税率体系が再び大きく変わる。通関実務ではHSコード別の税率変更への即時対応が求められ、フォワーダー、通関業者の業務負荷は一気に高まる。
122条関税は5カ月の時限措置だ。期限後の関税政策は見通せず、荷主企業には短期の税率変動と中期の制度変更リスクを同時に織り込んだ経営判断が求められる。調達、在庫、生産拠点、物流ルートの全てが通商政策の変動に直結する以上、サプライチェーンマネジメントを経営の中核に据える体制づくりが急務だ。
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日本企業の実務対応(関税還付手続き、通関実務の切替など)については解説記事「関税還付24兆円、権利保全の期限迫る」で、232条・301条など判決対象外の関税の見通しについては「122条は150日限り、関税の主役交代へ」で、グローバルサプライチェーンの中期的な影響については「調達先の正解が国ごとに変わる時代」で、それぞれ詳報する。
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