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CUBE-LINX、普及支援から次世代物流へ、決定打欠くEV普及の現状打開目指す

商用EV運用の限界打破こそ、持続的物流の勝ち筋

2026年2月20日 (金)

環境・CSR2050年のカーボンニュートラル達成目標は、 特にCO2排出量の多い業界である物流・運送事業にとって、またスコープ3領域までの管理義務を負う荷主企業にとっても、避けては通れない課題だ。

当然、商用者における脱炭素を強力に押し進めていかなければならないタイミングだが、「EV(電気自動車)車両への転換は、期待していたほどの進度には至っていない」 というのが、CUBE-LINX(キューブリンクス、東京都日野市)桐明幹社長の率直な感想である。

日野自動車と関西電力の合弁で商用EVの導入・運用支援を手がける同社は、EV車両導入の検討段階から、充電器の選定・設置、充電計画や運行設計、運用改善、関連事業者との調整までを一体で担う。EV車両をただ購入するだけでは効果的な活用はできない。 自動車と電気を知り、「使えるEV運用」の実装を後押しできるのが同社なのである。

▲キューブリンクス 桐明氏

“必要だが踏み出せない”停滞の正体

「商用EVの社会実装が思ったようには進んでいないのは事実。だからといって市場が諦めた、選択肢から排除されたというわけではない。具体的な検証は重ねられているが、最後に背中をひと押しする何かが足りないといった状況ではないか」(桐明氏)

環境対策というと、ただコストがかかり事業を圧迫するだけの取り組みとみなされがちである。しかし、ディーゼル車の燃料費高騰や、アドブルー(エンジン用の高品位尿素水)調達、オイルや消耗部品交換などにかかるコストと比較して、徐々に「EVは安い」との認識も広がり始めているという。

同社がことし1月に公表した、商用車を運用する企業の車両管理担当者を対象にした調査では、77.4%が直近3年間で商用車1台あたりの運用コスト増を実感し、その最大要因は「燃料費の高騰」(59.5%)だったとしている。「EV利用のコスト合理性への関心は確実に高まりつつある。必要性は感じながらも最後のハードルが越えられない、その決定打がない、そんなジレンマのようなものを感じる」(桐明氏)

(クリックで拡大、出所:キューブリンクス)

まず、EV運用における最初の大きなハードルとなるのが、初期導入コストの大きさである事は間違いない。前述の調査でも、商用EV導入を阻む懸念としては「車両本体価格が高い」(42.8%)が最多で、初期投資が意思決定を止めている構図が浮かぶ。持続可能性を見据えて、EV運用など環境対策を先行する事業者においても、その54.1%が「施策の運用によりコストが増加した」と感じており、“環境投資と経営コストのジレンマ”が可視化されたといえる。環境意識の高まりや、EV運用のコスト合理性が高まるにつれて導入検証は進むが、「最後の決断を下すまでには至らないのが現状」(桐明氏)と指摘する。

特に中小運送事業にとっては、企業努力だけでEV車両への転換を図るのには無理があるだろう。政府として本気でカーボンニュートラルを目指すなら、もっと大胆な支援策も必要ではないかと桐明氏に問うと、「わかりにくく、利用しにくい補助金などではあまり大きな効果は望めない。例えばメキシコでは都心に入ることができる車両を、時間帯によってEVに限定するような施策で商用利用を拡大した事例がある。日本でも、EV車に限って高速道路無料にするなど、わかりやすく大胆なメッセージを打ち出して運用を後押しすることも必要ではないか」と訴える。

航続距離の“信仰”を捨て、運行実態に合わせた車両を

また、 車両の選択肢・ラインアップが限られていることも導入のブレーキとなっており、「商用EVは“短距離でしか使えない”という思い込み自体が、多様なニーズに合った車両開発を妨げているのでは」(桐明氏)と語る。

確かに商用EV利用の適正領域はラストワンマイル、近距離配送に限られるという認識は強い。商用車メーカーの取り組みも、長距離輸送に対応できる環境車両開発で技術力を示し、近距離対応の商用EVと切り分けてきたようにも思える。

しかし、「もはやドライバーの働き方自体が600キロを一挙に運ぶという時代ではなくなっている。商用EV車も600キロを無充電で走るという発想にこだわらず、新しい働き方、運び方のレンジに応じた車両の選択肢が必要」と桐明氏はいう。これは、運行距離が現実的に制約された現状を踏まえ、設計思想も運用も“実用域”へ寄せる必要があるという問題提起であり、その適正運用をサポートできるのがキューブリンクスにほかならないという提言でもある。

“人が辞めにくい現場”へ、EVによるドライバー確保の効能

決定打さえあれば、商用EV運用を加速させるべき理由はまだまだある。カスタマーソリューション部マネージャーの須藤賢志氏は、「今後、ますます難しくなるドライバーの人材確保においても、商用EV運用に優位性がある」という。

同社は、商用EV利用者を対象とした別の調査結果も公表している。それによると、業務でEVを日常的に運転する人たちは、従来車両より「疲労やストレスが減った」という回答が4割を超え、今後も業務車両はEVが望ましいとする肯定回答は73.8%に達している。従来車でストレスを感じた点の上位は「給油所へ行く手間や給油作業」(40.9%)、「メンテナンスの手間」(37.6%)、「エンジンの騒音や振動」(31.5%)で、EVがドライバーにとって優しく、“人が辞めにくい現場”を後押しする可能性が見える。須藤氏は、「実際の導入現場から高い評価を得ている事が、私たちのソリューションが物流の適正化に貢献しているとの実感につながっている」という。

▲キューブリンクス 須藤氏

さらに、EV活用による「運用における燃料費差」「アドブルー不要」「オイル交換不要」「交換部品削減」 などのコスト低減分をどこに投資するのか。持続可能な事業経営を考えるなら、ドライバーの賃金にこの削減分を反映させていくことが、人材の獲得、確保においてますます重要になる。

荷主企業のCLO(物流統括管理者)体制への移行も商用EV普及を後押しする可能性がある。保守的な意思決定文化が変容し、サプライチェーン全域の脱炭素による社会貢献の意識も高まる。CLOの決断が、今は足りない“最後の一押し”となることも期待される。

桐明氏は市場の成長速度が想定より遅いことを認めつつ、同様のサービスを展開する事業者より先んじて市場を開拓し、“我慢したもの勝ち”の経営姿勢を貫いてきたことが、「商用領域での導入支援実績ではおそらく業界最多クラスの実績」(桐明氏)につながっていると語る。

すでに同社が導入をサポートした車両は300台を超え、「最近は配送センター丸ごとEVに変えていく、新設する物流センターをEV前提にする」(桐明氏)といった商談が増えていることも明かす。導入は“試し乗り”から“拠点単位の置き換え”へと質的に変わり始めていること、EVシフトを競争力とする企業が着実に増えていることの証明である。これらEV運用サポートで積み上げた実績は、今後期待される新技術との連携においての大きな財産だと桐明氏はいう。

次世代の輸送基盤「自動運転トラック」運用を支える知見

桐明氏が見据えるのは、「自動運転トラック」の社会実装との親和性だ。

桐明氏は「自動運転と電動は切って離せる内容ではない」と明言し、EV車両の運行をコントロールしてきた知見が「自動運転になったときの充電周り」へ拡張できると見通す。実証段階が続く自動運転だが、実際の運用にあたっては、幹線から車両が“外れない”往復シャトル型になるのか、車両基地・整備・駐車など幹線を“外れる”運用となるのか、それぞれに最適な充電器配置や充電運用に関する経験値が不可欠となる。

無人化とEV化・脱炭素化が進むほど、トラック輸送の常識も変わるかもしれない。桐明氏は、「自動運転EVトラックでは、なによりも定時制が重視されるべきではないか」 との私見を語る。定時・定間隔で往復し続け、必要なタイミングで載せ降ろしする運用を「昔の回転寿司スタイル」と表現し、物流ニーズにマッチする運用だと提言する。もちろん、そこに同社の技術や知見がどう組み込めるかも、すでに想定しているのだろう。

車両技術、自動運転技術、情報通信技術、荷主・メーカー、物流事業、インフラと制度整備など、「競争と共創」の両面で社会実装への最適化検証が加速する。EV車両における運用最適化についての議論も、今後深められる事は間違いない。同社が粘り強く積み上げてきた実績も、CO2やコストの削減だけの役割を超え、次世代の輸送インフラ運用提案として実証すべき局面を迎える。環境対策としての電動化ではなく、無人化を前提にした”新しい運行設計”とセットで語られるべき段階に入りつつあるのだ。

商用車市場の再編が転機、動き出す大きなストーリーとの連動に期待

同社は、近距離圏のEV化を後押しするレベルにとどまらず、最適化の領域を広げ、次世代の輸送インフラにも踏み込もうとしている。

その一方で、電気自体の価格高騰や供給力不足に直面するなどの先行き不透明なリスクがあることも否めない。今後、ますます電気使用量の増大が見込まれるなかで、この国のエネルギー政策に関する議論が事業に影響することもあり得る。安価な外国製EV車両導入を普及の呼び水とする方法論も、バランスを間違えればこの国の経済安保にも関わる問題となる。

さらに、「環境車両による輸送コスト増加分を消費者が容認できるような意識の変化が、果たして社会全体で醸成されていくのか」(桐明氏)も問われる。進むべき方向は間違ってないとの確信はありながらも、その行く手に待つ不確定要素は多岐にわたる。21年の創業からは”逆風”もあったはず、それでも「我慢したもの勝ち」を貫く同社の姿勢は、これからの社会にとって必要不可欠なソリューションを提供しているとの自負があるからだろう。

そんなキューブリンクスにとって、重要な転機となり得るのが、親会社である日野自動車の事業再編である。

日野自動車と三菱ふそうトラック・バスは、ことし4月に新持ち株会社「ARCHION」(アーチオン)の下で統合を進める計画である。商用車市場の大変革となる出来事だけに、もちろんキューブリンクスの今後にも大きな影響を与えるだろう。

この大変革をいかに“追い風”にできるのか。事業を取り巻く大きなストーリーの中でキューブリンクスという小さな“核”が、どんな成長を遂げ、どんな役割を担うことができるのか、同社の動向からますます目が離せない状況だ。

商用EV普及の“最後の決定打”を欠く日本市場で、アーチオン発足を契機に車両・インフラ・運行支援を束ねた投資とパッケージがどこまで前に出るか。商用EVの拡大が“我慢した者勝ち”から“勝ち筋の見える市場”へ転じるかどうかは、まさにその再編の中で試される。(大津鉄也)

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