環境・CSR新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は5日、豊田通商と共同で中国・北京市に工場単独の自動車解体としては日中両国で前例のない、前処理からフロン破壊などの有害物処理、車体裁断や廃タイヤの破砕までトータルで解体とリサイクルを行う大規模集約型のリサイクルシステムの実証プロジェクトを実施した、と発表した。
解体に伴う環境負荷を低減し、90%という日本国内以上のリサイクル率を維持しつつ、年間1万台以上の使用済み自動車の処理が可能となった。
この処理能力は、北京市で解体・リサイクル処理されている使用済み自動車の13%に相当し、今回のプロジェクト成果を基に、豊田通商は日本企業として初めて中国国内で自動車解体リサイクル事業に参入する方針を打ち出した。これにより、NEDOでは「日本発の自動車リサイクル技術の普及」につながることを期待している。
実証プロジェクトは、中国国家発展改革委員会との連携で実施した。日中の産業構造の違いを踏まえ、プロジェクトでは解体の上流に当たる有価物の取り外し、有害物の除去などの前処理の機械化に加え、積載効率や安全作業を達成するプレス・切断機の導入、下流に当たる配線類からの銅回収、廃タイヤの原料化などの発生物の再資源化技術まで統合した、トータルシステムを構築した。
また、廃液やフロンなどの有害物の回収・処理工程までを統合することで、環境負荷低減を徹底。特に、エアコンの冷媒として使われるフロン類は、解体工程内で回収・破壊処理までを行うことで、1台6590キロのCO2削減効果を生む。
これら一連の工程を一元管理して最適化を図ることにより、日本国内以上のリサイクル率90%以上と低環境負荷を維持しつつ、年間1万台の処理が可能なシステムを構築することができた。
NEDOと豊田通商は、2015年度末までに、開発した設備を使用して実証データの蓄積とシステムの改良を行う。豊田通商と昭和メタルは、昨年末にプロジェクトの現地パートナー企業「北京博瑞聯通汽車循環利用科技」へ資本参加しており、2月27日には北京市で、プロジェクトの成果報告会と併せて、同合弁企業の開所式も開催している。
同社は、中国初の大規模集約型のリサイクルシステムの構築を実現した合弁企業を解体工場モデルプラントとし、中国で成果の事業化を行う。さらに、ほかの都市へと普及させることで、日本技術の海外展開と環境問題の解決に寄与する。