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鹿島、ICタグ活用、プレキャストコンクリート部材のトレーサビリティを確立

2010年5月25日 (火)

話題ICタグからの情報の読み取り(鹿島)鹿島は5月24日、ICタグを用いたプレキャストコンクリート部材の品質管理の取り組みを開始したと発表した。プレキャストコンクリート部材の製作過程で、プレキャストコンクリート部材にICタグを埋め込み、部材管理に必要な情報を入力。これらを施工中、完成後もPDAで認識できるようにするもの。

 

これまでPDAを用いた現場内での部材管理は行われてきたが、ICタグを埋め込んで部材を管理するのは初めて。同社が今回のビルに適用するプレキャストコンクリート部材は種類が多く、強度が異なるため、部材管理の一層の厳格化が求められていた。今回試行するのは約200ピースの部材となるが、将来的にはこの管理手法を用いることで、トレーサビリティの向上を図り、発注者・ユーザーからの将来的な品質情報の保管と活用を容易にしていく狙い。

 

プレキャストコンクリート部材は外見だけでは部材に使用された材料、配合、養生、強度などを知ることができないため、これまでは紙札やマーキングなどで管理していた。この方法だと、製作途中に紙札がはがれるなどの理由で、部材番号を転記ミスする可能性があった。特に高強度のプレキャストコンクリート部材は見た目だけで判断できないばかりでなく、シュミットハンマーなどを用いても強度を測定することが困難だという。

 

新方式を採用する元赤坂Kプロジェクト(仮称)の現場では、構造計画上、36Nから150Nまでの強度の異なったコンクリート部材が多数使用されており、部材管理が重要なため、導入を決めた。同社では「コンクリート強度が増し、建物のライフサイクルが50-100年と長期化し、内装と躯体を分離してスケルトンインフィルを重視する中で、長期間にわたる建物の性能評価・品質管理が益々重要になっていく」とICタグ導入のメリットを説明している。

 

工程はまず、プレキャストコンクリート部材へのICタグの埋め込みを行う。使用するのは大きさ22ミリ、書き込み可能容量112バイトのものを使用し、製作・施工段階のICタグへ情報入力する。読み取りは作業員が携帯できるPDAを用い、これをICタグにかざすことで現場の施工中、竣工後も製作履歴の閲覧が可能になる。製造段階で仕様どおりにコンクリートが打設されたことをICタグに記録し、現場で取付時に確認することにより、設計図書通りの構造体が構築されることを担保する。通常では確認が困難な建方完了後の部材番号やその製造情報についても、プレキャストコンクリート部材取付後に容易に読み取ることが可能。

 

この結果、建物竣工後でもそれぞれのプレキャストコンクリート部材の製造、施工履歴情報をICタグから読み取ることができるため、「保守管理、リフォームの上での有用な情報源となる」。また、プレキャストコンクリート部材へ入力する製作・施工段階の情報は、既開発の新建方計画・管理システムを活用することで、プレキャストコンクリート部材の3Dモデル上で管理し、視覚的に分かり易く表現される。