ロジスティクス大和ハウス工業グループの大和物流(大阪市西区)が、自社運営の物流センター計11施設で17件の倉庫業法違反があったと公表した。うち8施設では、変更登録手続きの担当者が通知書を偽造し、社内に虚偽の報告をしていたことも判明している。手続き漏れそのものより、それを覆い隠す偽造にまで至った経緯が事の重さを物語る。変更登録という地味な手続きが、なぜこれほど見落とされやすいのか。制度の建付けから考えたい。(編集委員・刈屋大輔)
区画ごとの事前登録
倉庫業法は、倉庫を新たに営業に使用する場合や規模を拡大する場合、使用を開始する前に変更登録を受けることを義務付けている。施行規則が事後の届出で足りる「軽微な変更」と定めているのは、倉庫の用途廃止や名称変更、主要構造以外の変更など限られた場合だけだ。新設や増築、規模拡大を伴う変更はここに含まれず、事前の変更登録が必要になる。
登録は建物や区画ごとに与えられる許認可であるため、既に別の倉庫で登録を持っていても、新たに借りた倉庫や同じ施設内の隣接区画には、あらためて事前の申請が必要になる。行政書士への相談でも「既に登録済みだから手続きは不要」という誤解が後を絶たないという。標準的な審査期間は地方運輸局長権限で2か月とされる。
大和物流が確認した17件のうち、実に10件は既存倉庫の面積変更に伴う登録の遅れだった。無登録のまま新規に稼働を始めた事案が3件、稼働終了まで無登録が続いた事案が1件、稼働後に登録を受けた事案が2件、面積変更の登録を受けないまま営業を続けていた事案が1件ある。多くを占めたのは、まったくの新設ではなく既存拠点の増床にまつわる登録漏れだった。EC(電子商取引)需要の拡大や物流拠点の全国展開競争を背景に、倉庫業の拡大が新規開設だけでなく既存施設の積み増しという形でも進んでいる以上、この種の漏れは特殊な事例と言い切れない。
拡大期に潜む死角
物流施設の新設や増床が相次ぐ局面では、開所や増床の日程が先に固まり、登録手続きがそれに追いつかない事態が起こり得る。区画単位で審査が必要になる制度の建て付けは、拠点網を広げる事業者ほど見落としやすい死角になりかねない。
三郷物流センターII(埼玉県三郷市)は2023年の開所時からこの事前登録を経ないまま稼働を続けていた。大和物流は、変更登録業務を担当者一人が一元的に担っていたと説明しており、属人化した体制が長期にわたる未発覚につながった可能性は否めない。8施設・9件にわたる偽造が複数の管理階層をすり抜けていたとみられ、個人の不正という説明だけでは片付けにくい面もある。
軽い罰則、重い偽装
倉庫業法上、変更登録を受けずに倉庫を変更した場合の罰則は50万円以下の罰金にとどまる。今回の担当者が変更登録の遅れをそのまま申告していれば、代償はその程度で済んだ可能性がある。しかし実際には通知書を偽造し、社内に虚偽の報告を重ねる道を選んだ。結果として招いたのは、懲戒解雇に加えて刑事告訴の準備という、行政罰とは比べものにならない重い代償だった。手続き違反を認めるより、それを隠す方がはるかに重い代償を招く。それでも隠蔽が選ばれてしまう構造があるのだとすれば、見過ごせない論点になる。
今回の事案を受けて取材した3PL事業者からは、審査期間の長さそのものを負担視する声も聞かれた。荷主から急な増床要請が寄せられても、標準2か月とされる審査を待っていては保管を引き受けられず、荷主が他社に流れてしまいかねないという。制度が求める事前性と、現場が直面する納期の切迫が噛み合っていない現実は、大和物流に限った話ではなさそうだ。
未登録のまま寄託物品を保管していた三郷、大阪北、岡山の3施設は、顧客の了承を得て他の倉庫へ貨物を移すなどの是正を済ませた。鳥栖物流センターも未登録区画から登録済み区画へ貨物を移動している。該当施設は9月17日付で登録が完了し、国土交通省からは厳重注意を受けた。大和物流は外部有識者の助言を得ながら社内チェック体制を見直す方針も示している。
倉庫業法の登録制度は、他人の物品を預かる倉庫業者の管理体制を担保し、寄託者の利益を守るために設けられている。今回浮かび上がったのは、一社特有の不正というより、拡大期の物流施設運営に共通しうる制度上の死角である。
審査に一定期間を要する変更登録の運用が波動的な施設需要と噛み合いにくいという課題は、国土交通省自身にとっても無縁ではない。18年には、借庫を使う倉庫業者向けに、あらかじめ施設基準への適合確認を受けることで変更登録の処理期間を短縮できる「基準適合確認制度」が設けられている。
今回のような事案を防ぐ近道は、新たなルールを求めることよりも、既にある緩和策がどこまで現場に浸透し、活用されているかを点検することにあるのかもしれない。事業者への再点検の呼びかけは、この既存策の周知度を問い直すことでもあるはずだ。
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