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日本海事センター「パナマ運河拡張後の国際物流に関する調査」で中間報告

海事センター、パナマ拡張で「貨物増えると言い切れない」

2014年3月31日 (月)

調査・データ日本海事センターは3月31日、「パナマ運河拡張後の国際物流に関する調査」の中間報告として、コンテナ貨物輸送を中心とした調査結果をまとめた。

中間報告によると、アジア発米国東岸のコンテナ貨物は、西岸揚げインターモーダルのシェアが10年で9%低下しており、東岸への海上輸送(パナマ運河・スエズ運河経由)へシフトしていることが分かった。

また、中国南部や東南アジアなどアジア側生産拠点の南下やパナマ運河通航料の上昇などが要因となって、パナマ運河経由からスエズ運河経由へのシフトも進んでいる。スエズ運河経由のシェアは、08年第3四半期の15.4%から、13年第3四半期には36.5%へと2倍以上に拡大している。

これらの調査結果に基づき、同センターは「パナマ運河拡張によって、北米東岸向けの船舶の大型化の可能性が高まる」ものの、「パナマ運河経由のコンテナ貨物量が増加するとは言い切れない」と分析。

その背景として、「船舶の大型化は見込まれるも、パナマ運河経由の運賃低下につながるか不透明」なことや、「東岸向け貨物増加には東岸鉄道事業者などの戦略や人口流動、経済発展などが重要」を指摘した。

また、スエズ運河には、より大型の船舶が利用できる「パナマ運河にはないメリット」があり、米国東岸沿岸港湾、カリブ沿岸港湾、鉄道インフラ整備、荷役処理能力の低さが課題となっていることも要因に挙げた。

仮にパナマ運河の通航料が上昇した場合、「パナマ運河通航料が10%上昇すれば、運河通航量は11.1%減少する」との国内船社のデータを引用し、スエズ運河の利用が促される可能性もあると指摘した。

調査委員会は、同センターがパナマ運河の重要性を踏まえ、2013年度に設置。拡張工事の完成で混雑の解消や大型船舶通航などへの期待がある一方で、「05年から11年までの6年間でコンテナ船の通航料が2倍近くまで上昇しており、今後も通航料上昇の懸念があるほか、米国からのシェールガス輸出が始まった場合、パナマ運河拡張による通航可能タンカーの大型化で、日本にメリットが大きいと考えられる」として、調査に着手していた。

■中間報告書のダウンロードURL
http://www.jpmac.or.jp/information/pdf/343_2.pdf