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官民協調の貿易DX標準化で国際競争力向上を目指せ

2026年10月2日 (金)

ロジスティクス東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中の「物流DX EXPO 2026 夏 東京」は会期3日目を迎え、特別企画「物流DX未来会議2026 AFTER ACTION IN TOKYO」が行われた。そのなかで、日本貿易DX協会代表理事でShippio代表取締役CEOの佐藤孝徳氏と経済産業省通商政策局貿易振興課課長補佐の板橋洋平氏が登壇し、LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長がモデレーターを務めるセッション「有事を勝ち抜くグローバルSCM〜縦割りを脱却し、国際物流戦略を利益の源泉へ〜」が開催された。


セッションの冒頭、未だに紙書類や手作業、システム間の非連携が多く残る貿易手続きの現状が指摘され、金銭的・時間的コストの大きさが課題として共有された。モデレーターの赤澤氏が「もう平時がなく、ずっと有事のような状況が続いている」と近年の地政学リスクやサプライチェーン(SC)混乱を投げかけると、板橋氏は「常に有事という危機感や現状認識は、経産省全体でも共有されている。SCの維持・強化は政策の1丁目1番地だ」と応じた。

▲経済産業省通商政策局 貿易振興課 課長補佐の板橋洋平氏

その上で、経済産業省が2022年ごろから3年間にわたりユースケース可視化や補助金支援を行ってきた歩みを振り返りつつ、板橋氏は「補助金を出すだけでは、ゼロイチで生み出した『点』の成果にとどまり、面的には広がっていかない。技術支援とセットで、サービスが使われる市場や需要そのものを形成していく必要がある」と強調した。その具体的な道筋として、非競争領域である「データセットの標準化」を横串で通すことでベンダー側の開発・提供コストを下げ、荷主企業が「費用対効果(ROI)が見合う」と感じて継続的に対価を支払える環境を整えることを挙げた。板橋氏は「スマートフォンのアプリ市場のように、共通の基盤の上でさまざまなドメインに特化したソリューションが生まれ、ベンダーが次々と参入して利用者が自由に選べる業界構造を作りたい」と展望を説明。さらに、「市場拡大の初期段階で横断的な標準を整備しなければ、個社ごとの独自標準が乱立し、ティア2、ティア3以下の中小企業にしわ寄せが行くだけでなく、将来的に海外とデータ連携できなくなるリスクがある」と警鐘を鳴らした。

▲日本貿易DX協会代表理事でShippio代表取締役CEOの佐藤孝徳氏

こうした業界課題を乗り越え、健全な市場形成を民間主導で推進する枠組みとしてことし8月に設立されたのが「日本貿易DX協会」だ。代表理事を務める佐藤氏は、過去数十年の業界の歩みを振り返り、「貿易はステークホルダーが非常に多く、標準化を進めようとすると各社の個別要件を盛り込みすぎて仕様が肥大化し、結果として誰も使えないものになってしまっていた」と反省点を指摘。その教訓を踏まえ、同協会では「すべての要望を取り込むのではなく、なるべく削ぎ落とし、『最低限これがあれば動くよね』という標準化を目指す」と方針を語った。また、データセットの標準化や海外動向のリサーチ、政策提言の統一窓口といった協調領域を官民で整える重要性を説き、「サービスの使い勝手や価格などの企業間競争は健全に維持しつつ、共通インフラで提供コストを抑えることで、利用者が納得して対価を支払えるサステナブルな市場を確立したい」と語った。

さらに議論は、テクノロジーの進化が貿易実務をどう変えるかという展望へと及んだ。佐藤氏は、これからの貿易DXの鍵はAIの活用にあると指摘。「これまではPDFやメールをソフトウエアが読める形に一律整形することが標準化だったが、AIの本質は『文脈の読み替え』を上手にやることにある。同じ1つのコンテナでも、商品の数量、重量、インボイス価格、遅延情報など、受け手が求める情報は異なる。AIがその文脈を適切に汲み取り、必要な情報を提示できるようになる」と解説した。

▲LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長

その上で、「物流サプライチェーンの『見える化』(ビジビリティ)を議論する段階はもう乗り越えた。その先にあるAIを用いたアクションの推奨や意思決定の支援、改善サイクルにたどり着こうとしている」と力強く語った。加えて、これまで人海戦術でカバーしてきた現場のオペレーションについて、「人がたくさんいたから成り立っていたが、人手不足と人材流動性が高まるこれからの日本社会では維持できない。DXを通じて、いかにより早く、より効率的に人をオンボードさせてパフォーマンスを出してもらうかが急務だ」と述べた。

セッションの締めくくりに向け、板橋氏は「日本発のデータ標準やサービスモデルを確立できれば、新興国をはじめとする海外への横展開や、デジタル赤字の解消にもつながる」と将来の展望を語った。そして、「我々行政にとって、現場のリアルな課題や生の声を聞くことが何よりも一番大事。ぜひ気兼ねなく意見を寄せてほしい」と参加者に呼びかけた。佐藤氏も「協会を立ち上げた後、3か月、6か月でどのような具体的な変化を生み出せるかが本当の勝負。官民で連携しながらスピード感を持って進めていきたい」と意欲を示し、日本のグローバルサプライチェーン強靱化に向けたセッションは盛況のうちに幕を閉じた。

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