話題まとまった面積の農地が物流施設へ転用しやすくなる見通しとなった。遊休地や低未利用地といった「活用されない土地」への対策が社会的な問題となる中、政府は7月にも「原則不許可」となっている農地区分の転用を「原則許可」へと転換する見通しだ。
LogisticsTodayの取材に対し、農林水産省は「これまで原則不許可となっていた農地区分でも『土地利用調整が行われたもの』に限って例外的に許可していくことになるだろう」と説明した。これは、自治体などとの土地利用調整が行われれば、農地転用を許可する方針へと転換することにほかならない。都市計画法を所管する国土交通省とともに、利用調整の成立を要件として転用・開発を認める方針で、7月中の閣議決定を目指すという。
現行の農地転用制度は、農地に適している順に「農用地区域内農地」「甲種農地」「第1種農地」「第2種農地」「第3種農地」の5つに区分されており、このうち転用が「原則許可」されるのは「市街地化の傾向が著しい区域」にある第3種農地に限定。第2種農地は「農地以外の土地や第3種農地に立地困難な場合」などに限定して許可することとなっている。
残る農地区域内農地から第1種農地までは原則不許可とし、「土地収用法対象事業などのために転用する場合」などの例外要件を満たすケースのみ許可することとなっているため、実際に物流施設への転用が許可された事例は1件しかない。
しかし、耕作放棄地の増加や自治体・地域による開発ニーズの高まりを背景に、こうした流れを変える「転換点」となったのが、第1種農地として初めて物流施設への転用が認められた大和ハウス工業開発の物流施設「Dプロジェクト流山」(千葉県流山市、2018年竣工予定)だ。
同社はこれまで、積極的に農地を物流施設へ転換する取り組みを進め、例えば埼玉県三郷市の市街化調整区域・第2種農地では200人近く存在する地権者を一元管理し、3500人の新規就労を生み出す物流施設「Dプロジェクト三郷」の誕生につなげるなどして実績を重ね、ついに第1種農地を物流施設へ転換する初事例「Dプロジェクト流山」の開発を実現した。
Dプロジェクト流山の開発用地は18.2ヘクタールに及ぶ第1種農地に指定されていたが、同時に65%もの不耕作地が発生していた。本来、第1種農地は「10ヘクタール以上の規模の一団の農地」や「良好な営農条件を備えている農地」が指定されるものであるにもかかわらず、実際の利用ニーズとかけ離れた状態となっていたことから、地元の要望と同社の働きかけで初の転用許可取得に至った。
土地利用調整という要件を満たす必要があるものの、今後はこうした農地を物流施設に転換する動きが活発化することになりそうだ。