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日本郵便、ドローン事業化想定し起業支援の枠組み開始

2017年9月4日 (月)

▲(写真左)日本郵便・福田聖輝副社長(右)サムライインキュベート・榊原健太郎社長

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ロジスティクス日本郵便は4日、ベンチャーキャピタルのサムライインキュベート(東京都品川区)と共同でオープンイノベーションプログラム「ポストロジテック・イノベーション・プログラム」を立ち上げ、スタートアップ企業の募集を開始すると発表した。物流や郵便分野の技術革新を支援し、自社の事業に取り入れることを目指す。

プログラムへの参加企業には、日本郵便が持つ設備などのアセットを開示し、スタートアップ企業との共同活用を検討する。サムライインキュベートは企画、運営、実施のほか、メンタリングサポートや優れたビジネスアイデアを持つ企業への出資を検討する。

プログラムは「多様化するライフスタイル、地域コミュニティにおいて、郵便・物流のラストワンマイルをテクノロジーで変革する」をメインテーマに掲げ、(1)テクノロジーを生かした郵便・物流の仕組み(2)テクノロジーを生かした郵便・物流の管理(3)既存分野にとらわれない新サービスなどのテーマを持つ企業の参加を想定。

サムライインキュベートの榊原健太郎社長が「時代の変化とともに地域コミュニティのあり方も変化している。ここで物流ラストワンマイルを変革していくことを想定している」と話すように、ドローンを利用した宅配を強く意識しているとみられる。

▲実証実験で使うドローン実機

スタートアップ企業に対しては、取り組むテーマに応じ、1日3000万箇所への郵便配達、14万台の郵便事業車両、18万本の郵便ポスト、2万4000の郵便局――といったアセットやデータにアクセスできるようにする。また、郵便局やドローンの実証実験設備などの概念実証(PoC)を通じ、検証に必要な「舞台」を整える。日本郵便との事業の親和性が高く、同社が評価する企業に対しては、出資やテストマーケティング費用の拠出を検討する。

ドローン実証実験を行う場所として埼玉県ふじみ野市など4か所を候補として検討し、プログラム採択企業は3社の選定を想定している。募集期間は9月4日から10月4日までとし、同月下旬に採用企業を決定、2018年1月下旬に成果発表会を行う。

■質疑応答
――ネット通販の普及で人手不足が深刻となっている。ドローンが人手不足を補うものと考えているのか。
日本郵便の福田聖輝副社長(福田氏):ほかの宅配企業と同様の状況だが、できるだけ社員化を進めている。2016年からドローンを研究しているが、規制面なども同時に進んで行かなければ難しく、ドローンが直ちに人手不足の解消になるとは考えていない。

――ドローンを使って何をするのか。最終的な目標は。
福田氏:想定しているのは、山間僻地、離島といった郵便局から郵便局の間の輸送だ。

――超えるべき課題をどのように考えているのか。
福田氏:風・雨の問題や送電線、重量、電池の持ちといった課題があるが、これらは徐々に解決されていくだろう。ただし、目視範囲で飛ばさなければならないといった規制面の課題もある。これらが同時にどれだけ解決されていくかがポイントになるだろう。

――一番の狙いは。
福田氏:ユニバーサルサービスを提供する上で、日本郵便には全国津々浦々まで配達する義務がある。山間や僻地に1通でも配達する。ドローンがこういう面で活用できないかと考えた。

――オープンイノベーションプログラムということで、多様な企業が多様なレベル感のアイデアで申し込んでくるだろうが、これによって何が生まれることを期待しているのか。
福田氏:生産性やサービス向上などの提案をこれまで設けて改善に取り組んできた。郵便局内では機械化もしたし、効率化できたと思うが、配達は人手に頼っているところが多い。ポストや車両などをわれわれは単に郵便を運ぶにすぎないと見がちだが、外から見れば、異なる見方があるのではないか、オープンにすることで意見や提案をもらえるのではと期待している。