話題SBSホールディングス、リコー、リコーロジスティクスの3社の経営トップは18日、記者会見を行い、リコーがリコーロジスティクスの株式の66.6%をSBSHDへ180億円で売却すること、リコーと大塚商会で構成する共同持株会社(JV)が33.3%を保有してリコーロジへの物流委託を継続することを明らかにした。
このスキームにより、リコーのリコーロジに対する持分比率は22.2%で持分法適用会社となり、SBSHDの連結子会社になる。会見でリコーの山下良則社長は「成長戦略の一環として物流機能を強化する。それがリコーロジスティクスの株式を譲渡するということだ。これまで単独で物流の強化に取り組んできたが、もう自前主義でやるのは得策でない」と述べ、3PLに強みを持つSBSHDを物流の「パートナー」として選んだ意義を説明した。
また「一番期待しているのは連携強化だ」と強調し、自社が取り組むオフィス移転にSBSが持つ物流の知見を取り入れていくことなどを例に挙げ、既存事業の強化につなげていくとともに、新たな事業の創出でリコーとSBSが協力していくことへの期待感を示した。
物流子会社の経営権を譲渡することに対しては「物流の現場が本体から遠くなるのは危惧している」とした上で、「そのためにも、SBSと人材交流をしようという話もしている」と話し、SBSグループとの連携強化に言及した。
SBSHDは、リコーロジの買収で売上規模が2245億円(直近の決算数値の単純合算)となる。同社の鎌田正彦社長は「ことし(2018年12月期)の決算で2000億円、5年で3000億円が見えてくる。(その先には)5000億円、1兆円を目指していきたい。今回のM&Aを機に、リコーと一緒になって日本の物流のトップ集団となる」とのビジョンを語り、リコーとの連携によって競争力を強化していくことにも自信を示した。
また、これまでの成長を振り返り「雪印物流(現SBSフレック)を買収して全国のチルド物流網が整い、東急ロジスティック(現SBSロジコム)買収で関東を中心としたドライ品の物流が強みとなった。リコーロジが加わることで、ドライ品についても全国レベルで強化できることになる」と話し、リコーロジを買収する効果として直接的には3PLを中心とする事業エリアの拡大につながる、と説明。
さらに、自動ピッキングなどの物流向けICTやロボットの開発をリコーと一緒になって開発していくことにも意欲を示し、「これによってリコーの新たなビジネスモデルに協力できるだけでなく、SBSが日本で最先端の(テクノロジーを武器とする)物流会社になれる」と強調した。
記者会見の質疑応答の詳細は次の通り。
――(リコーが物流部門を譲渡する相手として)いろいろな候補がいたと思うが、SBSを選んだ経緯と決め手は。いつごろから進めていたのか。
山下良則・リコー社長:さまざまな選択肢を用意して進めてきたが、(SBSは)社員を大事にしてくれる会社だということを重く見た。リコーに対する姿勢とビジネスへの姿勢にも賛同できると思った。(交渉を開始した)時期は説明が難しい。昨年4月の社長就任時に経営のバトンを受けて引き継いだ案件の一つだ。
――SBSがリコーロジスティクスを傘下に収めてすぐに現れる効果は。
鎌田正彦・SBSホールディングス社長:SBSのトラック、倉庫を使ってもらうことができる。倉庫を集約することも可能。リコーロジスティクスは若松勝久社長に経営の陣頭指揮をとってもらい、私は社外役員として、いい方向に導いていきたい。
――リコーとして物流を強化するために譲渡したというが、株式の8割を手放すという選択をした理由は。
山下氏:手放すというつもりはない。マジョリティーを持ってもらったほうがいいという判断だ。
――山下社長は昨年、構造改革で自前主義からの脱却を強調していたが、その観点から今回の取引をどう位置づけているのか。
山下氏:成長戦略の一手として理解してほしい。SBSとの両社で新たなサービスや事業を考えていきたい。
――大塚商会とJVを作って間接的にリコーロジの株式を保有するということの意味は。
伊藤則和・リコーグループマネジメント部長:リコーと大塚商会が直接、リコーロジの株を持ったほうがいいという考えもあるだろうが、今回のスキームでは「荷主連合」として3分の1超を持つことができる。その3分の1を大塚商会が持ち、リコーロジの荷主として、一体となって接していく。
――リコーロジの社名はどうなるのか。
鎌田氏:リコーロジスティクスという社名にSBSを冠するかどうかを含め、検討中だ。
山下氏:私はSBSリコーロジスティクスになっていくものと思っている。
――リコーロジの事業に占めるリコーグループ向けと外部向けの内訳は。またリコーからの仕事が減っていくという懸念は。SBSはそれを担保することをしているのか。
若松氏:リコーの物流費900億円の半分をリコーロジが担当している。欧州・米州・中国の域内販売物流以外がリコーロジ。外販比率は35%で200数十億円が外部向け3PLとなっており、今後も継続する。
――山下社長はリコーが物流部門を売却する背景として、物流事業の経営環境の厳しさを挙げていた。SBSをパートナーとしなければダメだと判断した理由は。
山下氏:他社と物流を共同化することも考えたが難しく、壁が大きいというのが正直なところ。実態として、月末、期末、年末といった繁忙期にトラックを手配するのは厳しい。平準化しなければならないという認識はあるが難しく、危機感を持っていた。
――SBSHDの鎌田社長は、今後5年で3000億円の売上高を達成できると話していたが、その方法は。
鎌田氏:M&Aの話は絶えず寄せられているが、3000億円はM&Aがなくても達成できるという感触を持っている。
――リコーロジは生産・調達分野に強く、SBSロジコムは保管・流通・販売分野に強いが、双方の顧客から包括受注できるようなシナジーを想定しているのか。
鎌田氏:リコーロジとSBSロジコムは別の会社だ。それぞれが成長していく。情報交換を緊密にしながら、全方位の物流ができる会社を目指す。どんな仕事でもやりきる会社にしていきたい。