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タイの火力発電所建設に伴う資材輸送めぐる贈賄容疑で

東京地検、三菱日立PSの元役員・ロジ部長を起訴

2018年7月20日 (金)

事件・事故三菱日立パワーシステムズは20日、タイで請け負っていた火力発電所の建設工事に必要な資材の輸送をめぐり、現地港湾当局の「公務員と思われる人物」らに2000万バーツ(6688万円)を不正に支出したとして、東京地検が元役員2人と元ロジスティクス部長の計3人を不正競争防止法違反の疑いで起訴したと発表した。

不正支出は司法取引制度のない2015年2月に行われたが、その後3年間にわたり、東京地検の捜査に協力した結果、ことし6月に同制度の適用に合意した。

同社の発表によると15年2月、同社の資材運輸部門の担当者は「建設資材の海上輸送を依頼していた物流業者の下請け輸送業者が、発電所の建設現場近くに設置された桟橋に資材を荷揚げしようとしたところ、地元港湾当局の公務員と思われる人物を含む地元関係者らにより桟橋を封鎖された上、2000万バーツの金銭を支払うよう要求された」との連絡を受けた。

これに対し、同社関係者は「依頼していた物流業者が、桟橋使用許認可取得手続きを適切に実施していなかったという予期せぬ事象により封鎖されたものであり、これにより資材の荷揚げが遅れた場合、発電所の建設遅延が発生し、多額の遅延損害金などを支払う義務が生じる」ことが見込まれたため、要求に応じるべく2000万バーツを輸送業者に支払う。これによって桟橋の封鎖を解除させたが「実際に、輸送業者により2000万バーツが公務員などに交付されたかまでは当社では確認していない」という。この際、同社関係者は建設業者へ架空工事を追加発注する形で対応したことにより、2000万バーツを捻出した。

その後、同社は15年3月、内部通報によってタイで公務員への不正な金銭の支払いがあった疑い把握。社内調査に着手した上で、同月さらに詳細な調査を実施するため、外部の法律事務所に依頼し、弁護士らによる関係者へのヒヤリングや関係資料を収集。この結果、法令違反が疑われたとして、同年6月に東京地検へ報告書を提出した。

こうした「協力姿勢」が評価されて検察官から司法取引制度の適用を提案されたわけだが、同社は同制度に応じたことについて「不正行為に関与していない多くの社員を含め、当社のステークホルダーの利益を守るために必要かつ合理的な判断であったと考えている」とコメントしている。

今回の贈賄事件を受け、同社が策定した再発防止策と処分は次の通り。

■再発防止策
贈賄防止に関し経営トップによるメッセージ発信
投書窓口の通報手段の多化(ウェブ窓口、フリーダイヤル窓口の追加)
受注前・受注後の贈賄リスクチェックの徹底
海外建設現地での出金に関する監査強化
管理職全員からコンプライアンス誓約書の再取得
外部講師などによる贈賄防止教育の実施

■処分
社長:報酬の30%を3か月返上
副社長(営業担当役員):報酬の20%を3か月返上
営業戦略本部長(営業担当役員):報酬の20%を3か月返上
経営総括部長(コンプライアンス担当役員):報酬の10%を3か月返上
不正な金銭の支払いに関与した当時の関係者:2016年2月に社内処分を実施