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阪神高速死亡事故で報告書公表

「運行管理形骸化し飲酒運転抑制できず」事故調指摘

2019年8月5日 (月)

▲事故を起こした車両(出所:事業用自動車事故調査委員会)

話題事業用自動車事故調査委員会(自動車事故調)は2日、大阪市平野区の阪神高速道路14号松原線で2017年11月22日に発生した大型トレーラーがタクシーに衝突し、タクシーの乗客1人が死亡、ほかの乗客と運転者の2人が重傷を追った事故の調査報告書をまとめ、公表した。

17年11月22日0時41分頃、阪神高速14号松原線の下り線で、香川県観音寺市の運送会社に所属する大型トレーラー(大型トラクタ・バンセミトレーラー)がアルミ鋼材1万6000キロを積載して走行中、第1通行帯から第2通行帯へ車線変更した際、第2通行帯を走行していたタクシーに衝突。さらにタクシーを中央分離帯との間に挟みながら走行を続け、タクシーは中央分離帯の街灯に衝突して停止した。問題となったのは事故時、大型トレーラーの運転者から基準値を超えるアルコールが検出された点だ。

調査報告書によると自動車事故調は、トレーラーの運転者が「事故前に乗船していたフェリー内で事故の8時間前から5時間前にかけて持ち込んだ焼酎900ミリリットルの半分程度を飲み、フェリーを下船する際には点呼を受けることもアルコール検知器で検査をすることもせずに運転を開始した」ことを明らかにした上で「事故時は、高濃度のアルコールを体内に保有した状態で運転したものと認められ、著しく注意力、判断力が低下していた」と指摘。

こうした運転者の状態によって「右車線を走行する相手車両に気が付かずに車線変更をしたことが事故の原因」になった可能性が高いと判断した。

また、報告書では「運行経路上にある7時間半のフェリー乗船中に同僚運転者もフェリー内での飲酒が確認されるなど、同運転者が勤務する事業者の運転者の間では、フェリー乗船中の飲酒が常態化していた」という驚くべき実態にも言及。

「この慣習は長らく同事業者の運転者の中でまん延していたものであり、その廃止を進言したり会社に報告したりする者がいないまま、継続されてきた」とし、飲酒行為が運転者一人の「無自覚」のみにとどまるものでないことを強調した。

ここまでくると、運送会社の管理が正しく行われていたのかどうかも疑わしくなる。会社は社内規程で「飲酒運転」を行った場合や「検挙」された場合に懲戒解雇とする規定を設けていたほか、職場内教育時に飲酒運転防止の指導を毎月実施していたというが、一方で、フェリー下船時の点呼やアルコール検知は行われていなかった。

自動車事故調の聞き取りに、トレーラーの運転者は「フェリー内での飲酒、運行管理者Aや運行管理者Bから『今でもフェリー内で飲酒しているか』と何回も聞かれ、その都度『あまり飲み過ぎるなよ』と何度か注意されていた。気が緩んだ頃合いを見て言っていたのではないかと思う。ほかの運転者数人も、同様に聞いていた」と回答している。

こうした管理実態、報告書は「フェリー内での飲酒の正確な情報を把握していなかったことなど、飲酒運転の抑制に関しての運行管理が形骸化していた」ことを問題視し、「このようなことから、同事業者内では長期間にわたり順法精神を欠いた運転者間の行動が放置されていたことが、このような飲酒運転による重大事故につながった」と結論づけた。