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需給最適化、インド物流可視化、物流ロボット活用――成果つなぎ社会還元

NECの物流変革見えた、最適解導く基盤活用に強み

2019年9月20日 (金)

話題「NECは120年前、音声という『情報をつなげる』機器である電話機事業からスタートし、情報をセンシングする画像認識や情報を処理するコンピューティングなど、一貫して情報をつなげることに注力してきた。物流業界は今、より効率的な物流に向けて企業間の連携が求められており、NECは企業の壁を越えてサプライチェーンの情報を1つにつなげるプラットフォームを実現することで貢献していく」

▲NECの梅田陽介氏

8月27・28日に開催されたロジスティクス・ソリューション・フェア(東京ビッグサイト)で、NECの梅田陽介氏(交通・物流ソリューション事業部)は、同社が「なぜいま、物流に注力しているのか」を訴えた。宅配クライシスなど物流が社会課題として認識されるようになった時代背景を踏まえ、これまで手がけた数々の基盤整備の実績について語りかける同氏の話をきっかけとして、「NECの物流ソリューション」に注目してみた。

▲NECブースは関心を寄せる多くの人で賑わった

■NECが描く物流変革のすがた

同社は、物流変革の中核に「ロジスティクスプラットフォーム」の構築を掲げる。実世界の「モノの流れ」をデータとして収集し、収集したデータを分析・高度化して、その答えを実世界にフィードバックすることでサプライチェーンの全体最適を目指すというものだ。

このプラットフォームは、メーカーから卸、小売、消費者までのサプライチェーンに関わるあらゆる情報をつなげ、将来の物量を高精度に予測。予測した物量から、在庫・人・車両・拠点といった物流リソースの最適な配置を提案する。また、物流現場側もデジタル化することにより情報をつなげ、物量の変化に対応できるようにしていく。

▲ロジスティクスプラットフォームのイメージ

実現に向けた同社の取り組み事例を紹介する。

■AIを用いた「需給最適化プラットフォーム」

同社は、正確な需要予測をもとに「食品ロス」を削減し、必要以上に投じていた動脈・静脈物流のリソースをほかの物流に生かす取り組みを始めている。食品ロスは年間640万トン以上、1日あたり大型トラック1700台分が廃棄されている計算で、ロスを削減すれば不足している物流リソースにも還元できる。

その取り組みの核となるのが同社の「ホワイトボックス型」と呼ばれる異種混合学習で、予測結果に対する根拠を提示するAI(人工知能)だ。より精度の高い需要予測を行うためには、経験や感覚に頼っていたものをAIが数値をもって人を納得させ、逆に結果に対して誤差があるときには人が根拠を修正する試行錯誤が欠かせない。これは結果だけを提示する「ブラックボックス型」では実現できない工程だ。

また、同社では食品・消費財向けプラットフォームに加えて、半導体・電子部品向けのプラットフォームについても展開を企画している。半導体のサプライチェーンは、素材メーカー・半導体メーカー・専門商社・完成品メーカーと多くの企業が並ぶため、川上から川下の間で”ぶつ切り”になった情報管理と在庫管理によって、物量の波動が大きく、物流も右往左往してしまいがちだ。ここに、各企業の仕入れ・生産・在庫・出荷のデータをつなげるプラットフォームを導入し、ムダをなくして物流負担を軽減することを目指している。

■インドの物流可視化プロジェクト

同社の取り組みは海外でも高い評価を受けている。インドでは物流インフラの整備が十分ではなく、それが物流コスト増やリードタイムの長期化につながっており、産業発展の大きな妨げになっていた。

そこで同社はインドの開発公社と合弁会社を設立し、RFIDを用いてコンテナの現在地を正確に把握する仕組みを導入。RFIDの取り付けと読み取りゲートの設置によって課題を解決した。貨物の位置をほぼリアルタイムに把握することで、利用する荷主は生産・在庫計画の精度向上に役立てることができるようになった。

現在では、全コンテナの95%をカバーしており、今後は正確に捕捉したデータから最適な輸送経路を荷主に提案するなど、物流効率化に向けた新たな取り組みもスタートさせるという。

■「協調搬送ロボット」で物流現場の省力化支援

▲2台1組で飲料が入ったコンテナを挟み込んで搬送する

物流現場の省力化を助ける技術の実装も始まっている。その1つが「協調搬送ロボット」だ。荷物を2台1組で挟み込んで運ぶのが特徴で、これにより専用のコンテナや台車を用意せずに既存のものをそのまま使用することができる。

また、カメラ・センサーを用いて人やモノの動きをリアルタイムに把握し、状況に応じた最適なルート・動作をロボット側に指示するため、人とロボットが共存する現場でも安全でスムーズな作業環境を実現する。

■自動運転・ドライバー運転の双方を技術支援

▲ドライバーのよそ見を検知している様子

トラック輸送支援として、自動運転とドライバー運転の双方に対応するソリューションを提供している。自動運転では、危険予測AIや全方位センシングを用いて周囲の状況を判断し危険を回避。万が一の状況では、遠隔監視のオペレーターが遠隔操作を行う。この遠隔操作には、遅延せずに安定した通信が欠かせないため、同社の「適用遠隔制御システム」がスムーズな映像転送を支えている。

また、ドライバーの運転支援では、視線の動きや脈拍などの生体情報からドライバーの体調変化を察知するほか、歩行者や障害物を検知してドライバーに知らせる技術も提供している。

同社はこれらの事例のほかにも、画像認識技術を用いた省力化や「空飛ぶクルマ」の実証実験など、幅広く物流の課題に取り組んでいる。

■NECが物流で実現したいこと

▲NECのステージで日本通運の担当者が管理システムの説明を行った

NECが物流にどんな変革をもたらそうとしているのか。その答えは、人とモノを”情報でつなげる”物流基盤の構築とそれを支える技術支援を通じて、より効率的で最適な物流を実現すること。1社では解決できない物流課題も、さまざまな企業と協働することで解決に向けて動き出している。フェアでは、共同開発した鉄道輸送の管理システムについて日本通運の担当者がNECのステージで説明する場面もあった。

同社が目指す世界を描いたメッセージビデオはこう結ばれている。

誰でも公平にモノ・サービスを享受できる、そんな時代を皆様とつくっていきましょう。
数々の基盤整備に貢献し社会に欠かせない存在となった同社が今、物流の課題に取り組むパートナーを求めている。物流の課題は、今や社会全体で取り組むべき課題となった。困難に直面したとき、さまざまなアプローチで課題の解決にあたるNECと、一度話をしてみてはどうか。