話題ヤマト運輸は19日、同社がドイツポストDHLグループ傘下のストリートスクーター社(STS社)と共同開発した小型商用EVトラックの実車発表会を実施した。「宅配に特化した開発を行った」という同車両は、2020年1月から5月までに1都3県で500台が導入される。
同車両は、普通免許で運転が可能で、6時間の普通充電により100キロ走行可能と、都市部の集配車の平均走行距離40キロを十分にカバーできるほか、荷室は軽ワゴンの2倍の積載量を確保し、730リットルの冷凍冷蔵庫も備える。
荷室の高さはゴルフバックを立てたまま乗せることができる130センチを確保。従来の集配車と同じ3か所のドアを設置することで荷室に乗り込まずに荷物の積み下ろしができる。
ヤマトホールディングスの長尾裕社長は、集配用にEV車を導入する理由について「企業の社会的責任」と「労働力不足への対策」を挙げ、次のように話した。
同社は、今回導入する500台で年間3500トンのCO2排出量を削減できると試算しており、今後2030年度までに小型集配車の半数にあたる5000台のEV化を進めるという。
労働力不足に向けては、「アンカーキャスト」と呼ばれる契約配達員の確保と負担軽減を目的に、ドライバーの立場に立った多くの機能を盛り込んだ。
(1)乗降しやすいシート高とシート面
1日平均200回の乗降を考慮して、シート高を普通乗用車並みにすると同時に、シート面をフラット化して乗降時の負担を軽減。シートヒーターを標準装備とした。
(2)手間をなくすキーレスエントリー
ドライバーの接近と離脱を車両が感知し、キーを操作せずに運転席と荷室の施錠・解錠ができる仕組みを採用した。
(3)負担の少ない荷室床面の高さ
大きく屈んだり、荷室に乗り込むことなく荷物の積み下ろしができよう、 荷室床面を高すぎず・低すぎない地上90センチとした。
(4)死角を補う「マルチビューモニター」
車両を真上から見下ろしたような映像が映し出される「バードビュー」を搭載。前進・後進・右折・左折に合わせてそれぞれの死角を映し出す機能も盛り込んだ。
ヤマト運輸の栗栖利蔵社長は、これらの環境性能とドライバーの使いやすさのほか、EV車ならではの静粛性に言及し「地球にも、町にも、社員にも優しい新しい宅配のカタチを目指す」と今回のEV車のコンセプトを強調した。
共同開発を行ったSTS社は、これまでドイツ国内で1万2000台のEV車を提供しているが、欧州市場以外では今回が初めての導入となる。同社のイエルグ・ゾマーCEOは、「ヤマト運輸との共同開発は、グローバル市場のリーダーを目指す上で大きな一歩となった。今後は大型EVトラックも投入していく」と話し、幅広い車種の開発とエネルギー管理サービスの提供を目指すという。