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2020年 年頭所感

NSU海運、谷水社長「次の10年に向けて」

2020年1月7日 (火)

ロジスティクスNSユナイテッド海運は6日、谷水一雄社長の年頭所感を発表した。新和海運と日鉄海運が合併し、同社が発足して10年目にあたることしは、次の10年に向けた取り組みについて語った。

(以下、要旨)

▲谷水一雄社長

昨年はやるべき課題の多い年で、スクラバー工事、適合油への切り替え、そしてバーレマックスほか多くの新造船竣工と忙しい年となったが、やるべきことをやれば収益はついてくるという年でもあった。いよいよ準備期間から本番へ。これからの3か月が踏ん張りどころ、スクラバー、適合油のトラブルミニマムと安定運航により、まずは目の前の通期目標達成に向け頑張っていこう。

そして2020年は統合10年と節目の年。昨年の夏から皆さんと次の中期計画を検討中だが、これまでの10年を振り返るとともに、次の10年に向けた準備を進める大事な計画となる。大切なことは、引き続き持続可能なより良い会社にするため全員参加で議論していくということだ。

これまでの10年は、旧新日鐵住金誕生により、拡大する輸送ニーズに応えるための船隊整備が中心課題だった。また統合会社としての門構え、財務健全化、事業ポートフォリオ見直しなど、ハード面にフォーカスしてきた。そして皆さんのおかげで会社として一定の実績をあげることができた。

次の10年も、引き続きどんな船づくりをどう進めていくか、ハードの課題は重要だ。地球温暖化対応という最終目標から船づくりを解きほぐし、進むべき方向をまとめ、今何をすべきか具体化していく。さらに、今まであまりフォーカスしてこなかった「人と技術」つまりハードを支える見えない資産にもフォーカスしていきたい。今のままでいいのか、虚心坦懐に見つめ直そう。

繰り返しになるが、当社の企業価値は、誠実で良質な海上輸送品質と鉄鋼電力資源各社との取引を通じたバルクでの実績、そしてそこから生まれる信用と信頼。このUブランドを支える人と技術に一層磨きをかけて次の10年につなげていこう。

ことしの取り組み課題についていくつか触れたいと思う。 第1は、着実な業績積み上げだ。先ほども少し触れたが、2019-20年で当面の船隊拡大整備が一巡、いよいよこれを利益につなげていく段階に入っていく。従来のコア事業を土台に少しずつ新たな展開も積み上げ、引き続き中期の目標達成に向けた頑張りに期待している。

第2は、事業環境変化への対応。日本経済を語るとき、必ず挙げられるのが日本の地盤沈下だ。中でも世界経済に占める日本のウエイト低下を象徴するのが製造業の苦戦だ。そして、その典型がわれわれに最も関係する鉄鋼であり造船である。中国との競争にどう対応するか、これは日本の縮図でもあり大きな曲がり角となっている。昨年、日本製鉄の構造改革に向けたアナウンスがあったが、今後打ち出される具体的施策によっては、数量面・配船面・船舶ニーズの面で従来とは違った柔軟な対応が求められる。その際当社の基本はインダストリアルキャリアでありその原点を大切に、常に原料と鉄鋼製品、外航と内航も合わせ真摯に対応できるよう務めていこう。一方で、目線をもう少し海外にも向けながら新たなことにもチャレンジしていく年にしたいと思う。

第3は、二酸化炭素削減への取り組みと次の時代の船づくりだ。昨年12月当社はLNG燃料バルカー設計の基本認証を取得し、今後の建造に向けて動き始めた。日本のLNG普及の動きは遅れており、大型船中心に当面の現実的な手段としてモメンタムを上げていく必要がある。どうすれば競争力を確保できるのかさらに具体的検討を重ねていきたい。
環境をめぐる世の中の動きは想像以上に速い。対応を怠るとドロップアウトしてしまう。当社としての運航効率改善と環境マネジメント目標である二酸化炭素削減に向けて知恵を出していこう。

第4は、船会社として運航面の信頼性維持向上である。最近はバルクにおいても期待される運航管理レベルが上がっており、中期経営計画のタスクフォースでも取り上げたように、高度化する顧客ニーズに応えるべく運ぶ力をさらに磨いていこう。安全運航、船舶管理、船員教育、IT活用、どんどんアイデアを出してもらい、経営資源も投入していく。

第5は、当社ならではの内部統制活動の展開と働きやすい職場づくりである。会社運営においてガバナンスは骨格、CGコードは筋肉、それらを支えるのは血管や神経となる各職場での自律的内部統制活動だ。昨年は当社ならではのリスクマップ活動も緒に就いた。また意識調査でも職場から生の声が寄せられている。こういった活動を定着させ、経営としても真摯に受け止め、広い意味でのコンプライアンス意識向上と業務の改善、働きやすい職場づくりに務めていきたいと思う。またパワハラ防止も忘れてはならない。上下相互に信頼し合える職場に向けて働きかけていきたい。

ことしはいろいろとチャレンジングな1年になりそうである。あらためて広がる海にどんな絵を描いていくのか。その一歩となる年にしたい。 現在進行中の中期計画検討にあたって、キックオフから始まり、タスクフォース、職場での具体化、海外拠点との意見交換、そして全体会議と、コミュニケーションが広がったのではないかと期待している。こういうプロセスを通じて全員がお互いの理解を深め、大きな課題を共有し、同じ方向を向いて頑張ることが大切だ。新たな10年に向けて、次につながるいい流れをつくっていきたいと思う。