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日本郵船、ONE軌道に乗るも今期経常利益ゼロ予想

2020年5月25日 (月)

財務・人事日本郵船が25日に発表した2020年3月期の連結決算は、営業開始2年目を迎えたオーシャンネットワークエクスプレス(ONE、シンガポール)が収支を大幅に良化したことで、経常利益444億円と前期の経常赤字20億円から大きく業績を改善した。

一方で、ONEを含む定期船事業は前期末に北米港湾荷役子会社を売却したことや、その他のターミナルでも取扱量が前年を下回ったことで、部門売上が前期比29.4%減の2022億円。物流事業の部門売上も新型コロナウイルスの影響を受け、9.4%減の4763億円となったため、全体の売上高は8.8%減の1兆6683億円となった。

航空運送事業は、米中貿易摩擦などの影響により低調な荷動きとなったが、国際旅客便の運休・減便により需給がひっ迫したため、貨物積載率が改善され部門売上は32.4%増の751億円を計上した。一方、部門損益は整備費用の増加などで前期並みの155億円の損失となった。

物流事業は、米中貿易問題や香港情勢の混乱、新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に海上貨物取扱量が大幅に減少。航空貨物取扱量も、日本やアジアの需要低迷を受けて減少した。ロジスティクス事業は欧州・米国で採算改善の取り組みが進む一方、東南アジアの収支改善には時間を要している状況。内航輸送はおおむね堅調に推移したことに加え、新規航路の開設もあり、取扱量が増加した。部門売上は9.4%減の4763億円、部門利益は39%減の47億円だった。

不定期専用船事業の部門売上は2.6%減の8198億円に留まったが、部門利益は30.9%増の441億円を計上した。自動車輸送部門は3国間航路を中心とした配船合理化や選択的な貨物集荷により、前期比で輸送台数は減少したものの、輸送効率は改善。自動車物流では、一部既存事業の合理化を行うとともに事業ポートフォリオの再編に着手し、トルコ・エジプトでの新規事業開始や中国・中央アジア間の鉄道輸送など、グループネットワークを生かした新たな物流提案を行った。

ドライバルク輸送部門は、長期契約の獲得に注力し、先物取引を含めた収入の固定化、効率的な運航の徹底をはじめとしたコスト削減、高コスト傭船の期限前返船などの施策を重ね、収支の安定化に取り組んだ。

エネルギー輸送部門では、新造LNG船が3隻竣工。安定的な収益を生む長期契約が想定通りに推移したほか、海洋事業のFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)・ドリルシップが順調に稼働した。

今期は4月から6月までを最悪期と捉え、その後経済活動が緩やかに回復することを想定しているものの、新型コロナウイルスのマイナス影響は500億円から600億円となる見通し。特に大きな影響を受けるのは定期船部門と不定期専用船部門で、定期船部門は105億円の部門赤字、不定期船部門も83%の減益を予想する。全体の業績は、売上高1兆4300億円(14.3%減)、営業利益50億円(87.1%減)、経常利益0円(前期444億円の利益)を見込む。

■決算集計(見出し:年/決算期/四半期、[]:前年同期比、単位:百万円)
 20/3/通期 [前年同期比]20/3/3Q [前年同期比]20/3/中間 [前年同期比]20/3/1Q [前年同期比]
売上高1,668,355 [-8.8%]1,253,259 [-9.5%]824,737 [-9.9%]406,402 [-12.6%]
営業利益38,696 [249.1%]32,469 [611.4%]15,836 [ - ]5,470 [ - ]
最終利益31,129 [ - ]18,739 [ - ]11,123 [ - ]9,141 [ - ]
売上高営業利益率2.3%2.6%1.9%1.3%