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日本郵船、グリッドと配船最適モデルを共同開発

2022年3月22日 (火)

ロジスティクス日本郵船は22日、日本郵船グループのMTI(東京都千代田区)とAI(人工知能)プラットフォーム開発のグリッド(東京都港区)の2社とともに、AIによる自動車専用船の配船計画最適化モデルの共同開発を開始したと発表した。

日本郵船では、次にどの港に移動して次の航海を開始するかを決める「配船計画」について、船積み需要を考慮した船のスケジュールや船型、供給可能スペースなどの様々な条件を組み合わせて熟練担当者が策定している。これまで内製の配船計画システムを駆使してきたが、判断要素が多岐にわたり状況変化への対応が難しかった。脱炭素化の取り組みが海運業界でも加速するなかで、120隻におよぶ自動車専用船をいかに効率的に運航するかが、温室効果ガス排出削減への新たな課題となっている。

こうした課題に対応するための取り組みとして、MTIとグリッドの2社と協業し、日本郵船の自動車専用船隊の配船計画最適化を目指す。日本郵船の配船計画策定ノウハウと、MTIが培ってきた船舶運航のシミュレーション技術を、社会インフラに特化したテクノロジーベンチャーであるグリッドのAI技術力と組み合わせることで、配船計画の最適化モデル構築に取り組む。

(出所:日本郵船)

日本郵船の内製システムで採用されていた数理最適化技術に、デジタルツイン(IoTなどのテクノロジーを活用して現実の生産設備などをデジタル上に再現する技術)や最新の機械学習技術を採用。モデル構築だけでなくアプリケーション開発も協業の対象とする。

3社は自動車船配船計画の最適化により、温室効果ガス排出量の削減と業務プロセス改善の両立を目指す。最適化モデルとシステムの開発を進め、ことし6月にシステムのトライアルを開始。24年度に本格運用を始める計画を掲げている。

(出所:日本郵船)

物流事業者と先進技術開発企業との連携はDX化の「定番」の姿になっていくのか

日本郵船グループとグリッドによる、自動車専用船のAIによる配船計画最適化モデルの開発が始まることになった。いわゆる「職人芸」として認識されてきた配船技術を客観的な観点で「見える化」することにより、業務の最適化・効率化を推進する取り組み。海運業界における生き残りを賭けた差別化を推進する意味でも、優位性の高いシステムとなりそうだ。

グリッドは、日々の業務をデジタル空間に再現することで現場を見える化し、高精度なAIで計画の最適化を実現するプラットフォーム「ReNom Apps」(リノーム・アップス)を開発。2021年7月に提供を開始した。グリッドは物流をはじめとする、あらゆる社会インフラの最適化を目的としたAIプラットフォームの開発に注力する企業として注目を集めている。

(イメージ)

今回の日本郵船グループとの連携も、グリッドが掲げる「脱炭素化と経済活動を両立したGX(グリーントランスフォーメーション、企業における温室効果ガスの排出源である化石燃料や電力の使用を、再生可能エネルギーや脱炭素ガスに転換することで、社会経済を変革させること)」の取り組みの一環と言える。

日本郵船とMTIにおいては、海運DX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進する好機となる。新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済へのダメージからの回復や新興国における経済成長などによる、海運ビジネスの急速な拡大を見据えた業務の最適化は喫緊の課題だ。

ここで出遅れると、世界の海運プレーヤーのなかで存在感を示すことは困難になりかねないからだ。こうした観点から、グリッドと連携した意義は大きい。物流事業者とグリッドのような先進技術開発企業との連携は、業務最適化におけるDX化の推進という文脈において「定番」の風景となっていくだろう。(編集部・清水直樹)