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【解説】※記事後半で設計図面公開

異業種から参入、浦安スロープ式マルチ型倉庫の実力

2020年7月15日 (水)

拠点・施設かつて石油掘削機器メーカーとして世界に名を馳せながら、2016年に製造業から撤退した旧・新井鉄工所(現社名=アライプロバンス、東京都墨田区)が、準備期間を経て、東京湾岸の浦安エリアに鉄骨造4階建て・延床面積1万500坪のマルチテナント型物流施設を建設する。舞台は製造事業から物流施設開発・運用へと変わるが、不死鳥のごとくカムバックを果たした同社初の物流施設開発プロジェクトはいかなるものか。

まずは立地からみていきたい。開発予定地は同社浦安工場跡地の4500坪(土地面積)で、8月にも着工が予定されており、車で東京港へ15分、羽田空港へ30分と主要な物流インフラを利用しやすいほか、東京駅、新宿、池袋といった都心部へ30分以内に到達できる「物流拠点の一等地」ともいえる立地である。

30分/60分到達エリア(LogisticsToday編集部作成)

海コントレーラーが接車できる仕様の新拠点は、首都高速道路湾岸線浦安入口まで3キロと近く、国際物流の対応に適している。

鉄鋼業が集積する企業団地の一角に建設されるため、周辺住民との関係を気にすることなく、24時間体制で稼働できる点も魅力。周辺の賃料相場は首都圏の募集賃料ベースでみても高いレンジにあるといえるが、汎用性や高い機能性を備えた物件であれば、却って費用対効果に優れるケースも多いだろう。

建物の機能面ではどうか。周囲には大手物流施設ディベロッパーが手がけるような高機能倉庫が少なく、大半はボックス型の倉庫となっているが、アライプロバンスの物件は2階部分へのスロープが設けられ、効率的なスペース運用が可能。1階から4階部分までフロアごとに2か所の事務所スペースを配置している点も便利なポイントだ。

各テナント区画には、荷物用エレベータ2基、あるいは荷物用エレベータ1基と垂直搬送機1基を実装する予定で、床荷重は1階が2トン(1平方メートルあたり)、2-4階は1.5トン(同)、トラックバース40台分、有効天井高5.5メートル――と、使い勝手に優れた汎用的な仕様を採用。BCP対応として72時間の非常用発電設備を備え、屋上には太陽光パネルの設置を検討する。

また建物前にはバス停が設置されているが、同社の負担で雨風をしのぎやすいボックスタイプの洒落たバス待合所を敷地内に配置する計画があり、倉庫勤務者の通勤環境の向上が期待できるのは利点。浦安市の人口の多さを背景に、雇用の確保しやすさでも優位性がある。

これらのようにアライプロバンスとして最初に手がける物件でありながら、都心型物流拠点に最適な希少立地、汎用性と高い機能性を併せ持つ建物スペック、雇用の確保といったさまざまな面で優れる賃貸向け物流倉庫だといえよう。

■アライプロバンス「浦安市港物流センター」(仮称)の設計図面イメージ