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【解説】ヤマトのDM便委託は「伏線回収」の始まりか

2020年10月8日 (木)

話題ヤマト運輸がクロネコDM便の配達業務を10道府県で日本郵便に委託する、との報道(10月6日付「ヤマト、ライバルの日本郵便にDM便の配達委託」)は、同社の「すがた」を正しく理解する上で、重要な要素になっていくだろう。DM便をめぐるこれまでの経緯から、今後の動向を考えてみたい。(永田利紀)

2015年3月の「メール便」廃止直前には集荷時のサイズチェックと厚み別価格の適用、メール便対象外による通常便受託などがある程度は厳格化されていたものの、それ以前は多少の「腹膨れ」や「中身は薄手の洋服」「厚みのない雑貨」は当たり前だったし、よほどの厚みなどのサイズ違反がない限り「1個80円」で集荷していた。

「本当は60サイズ」の荷がメール便扱いになっていたのだから、収益に及ぼしていたマイナスの影響は小さくなかったはずだ。ちなみに当時の60サイズの同一ブロック内料金の最安値帯は250-300円程度。つまり全部でないにしても相当比率で60サイズ品がメール便に流れていた。少なくても1個当たり170円から200円以上の受注金額減となり、投函のみという配達時のコスト軽減を差し引いても、利益減は明白だった。

「Tシャツ類ならメール便を常用している」「キッズ専門ショップなのでセール品の2点以内発送にはメール便」「薄手の小型品なら、送料無料対象商品はすべてメール便使用」など、廉価販売のECではごくあたりまえのことだったし、当時の楽天などの販売サイトには、「送料無料!ただしお届けはメール便」というアパレルを中心とする通販ショップの訴求文字がたくさん載っていた。

信書問題とは別の経営観点からも、当時のメール便は稼ぎ頭の60サイズの領域を侵食する「内なる敵」と化していたので、抜本的な改善・改変が急務化していたことは疑いがない。増加の一途だった既存メール便の単価アップ移行を「ネコポス」や「宅急便コンパクト」といったサービスへの付け替えで乗り切ったと評せる。

■DM便委託、大型品の料金設定から見える「ヤマトの意思」

一方で「クロネコDM便」は「請求書・納品書・見積書・契約書などの信書」「オークション落札品」「パスポート」「現金・小切手・クレジットカード」を除いたパンフレットなどの宣伝広告書類のみの取り扱いで、申込者も法人・個人の事業主として明確に郵便と区別しているが、本来ヤマトが得意とする小型宅配物とは異相だ。何よりも単価が低いという点で、ヤマトをはじめとする個配業には無理のあるサービスだ。「集合住宅の集合ポスト配限定」とでもしないかぎり、既存個配インフラでの利潤確保は難しいだろう。

それが今回発表された「クロネコDM便のJP委託」の経緯であり、典型的な「餅は餅屋」となった。こうなると「信書も不参入で正解。ケガの功名だった」ともいえそうだ。

もうひとつ着眼しておかなければならない点がある。それは対極にある「大型品」の取り扱いについてだ。周知のとおり、近年の大型宅配物の値上げ傾向は、荷主側にとって尋常ではない内容となっている。言外に「あまり取り扱いたくない」ことをにおわせている、といった指摘も多い。値上げ前と後のタリフを見比べれば頷けるところが大だ。

220サイズの模型を、わざわざばらして3分割して80サイズ3個口で送ったほうが、220サイズ1個口よりも安くなる――といった話は、もはや珍しくなくなった実例の一部に過ぎないが、そんな現状にとまどう荷主各位への説明として「佐川以外のガリバー2社は、120サイズを超える大型個配物を望まない」というのが妥当となるだろう。日本郵便やヤマトの荷主呈示価格にはその意思が明確に表現されているように見えるし、事実、大型物を主力取扱品とする事業者への「集荷不可」通知が頻発した時期もある。

今回の発表からは「今は高額単価だから請けている」状態の140サイズ以上、特に200サイズ超のワンマン配達の限界値であり「積載効率の限界値でもある大型品」の取り扱いを、すべて他社に丸投げするといった姿も見えてくる。現状の単価なら一定の取次手数料を確保したうえでの委託が十分可能だろう。

一見すれば年次のできごとや方策として、数年前からひとつひとつ置かれてきた布石の数々だが、「最適と判断できる収益が確保可能なサービスゾーンのみに集中」するという、そんな意思決定を実行するために準備してきた伏線の回収が始まったと捉えることができそうだ。