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北海道で物流施設向け小型LNG充てん設備の実証実験

2020年10月28日 (水)

調査・データ三菱商事とエア・ウォーターは27日、大型トラック1台分の駐車スペースに収まる小型の液化天然ガス(LNG)充てん設備を共同開発し、11月から北海道で、大型LNGトラック向けに燃料供給する実証実験を開始すると発表した。

国内では大型LNGトラックが商用化されていないが、長距離輸送の現場で同車両が普及する未来に備える。また、小型かつ移設可能な設備とすることで、自社で燃料補給設備を保有することが多い物流会社や物流施設向けに、LNG設備を導入しやすい環境を整える。

実証実験では、いすゞ自動車が試験的に開発した大型LNGトラック1台とイベコ(伊)製のトラック2台を使用。小型LNG充てん設備の有用性を確認するほか、大型LNGトラックが実走行する際の二酸化炭素(CO2)排出削減効果と燃料費削減効果を検証する。

両社が共同開発した小型LNG充てん設備は、コンテナを2つ重ねて1つの設備とする可搬型で、最大10トンのLNGを保管可能。自家発電設備を搭載しているため、停電時も燃料供給できるほか、排熱回収温水を循環利用し、寒冷地や高湿度の環境で発生する氷結トラブルを回避する。

設備の費用は従来のLNG充てん設備の半分以下。トラックへの充てん時間は、軽油の場合と同じかそれ以下の1回あたり10分未満とされており、1日で最大60台に連続充てんすることができる。

三菱商事は取材に対し、「大型LNGトラックは、大型軽油トラックと比べて10%以上のCO2排出量削減が期待できる。現時点の技術レベルでは、電気自動車や燃料電池車に1000キロ以上の長距離走行は難しく、今後はこの分野でLNGトラックと燃料電池トラックの共存が予想される」と回答。将来的にはCO2フリーのLNGを供給することで、さらなる削減効果を得ることを検討しているという。

両社は今後、三菱商事が関わるLNGサプライチェーンと、エア・ウォーターが持つLNG関連設備の開発・製造技術、物流ネットワークを組み合わせ、2020年代半ばを目標に、小型LNG充てん設備とLNG供給網の全国展開を目指す。

今回の実証実験に大型LNGトラックを提供するいすゞ自動車は取材に対し、「現時点で商用化の明確な見通しは立っていない。実証実験に車両を提供するだけで、両社の事業化の枠組みに加わっているわけではない」と、あくまで車両を提供しているだけという立場を明確にしている。

いすゞ、大型LNGトラックのモニター走行開始