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第1回 主要クラウドWMSアクティブ導入拠点(アカウント)数調査結果

アクティブ拠点数トップは「ロジザードZERO」

2020年11月4日 (水)

話題日本の消費者向け電子商取引市場におけるEC化率は、経済産業省が統計を取り始めた2010年の2.84%から19年には6.76%へと、2.4倍に膨張した。市場規模は19.4兆円(前年比7.7%増)に達したが、新型コロナウイルスが直撃した20年は巣ごもり消費が盛んになった社会背景を反映し、この流れがさらに加速して20兆円台に乗せるのは確実だ。この現象が物流業界に与えるインパクトは計り知れない。

つい最近まで物流向けロボットの普及レベルは「黎明期」にあるといわれたが、20年夏以降、一気に普及期に突入した。ただ、その一方で物流企業にとっては、コロナウイルスの影響によって荷主の経営状況が不安定化したり、コロナ需要を捉えて出荷が爆発的に増大したりといった、短期的には需要の読みにくい展開を迎えている。裏を返せば、多様なニーズへの対応力を高めた物流企業に、多様な物流案件が集中しはじめているということだ。こうした物流取引のあり方を可能にする最も大きな要因の一つが「クラウドWMS」だろう。(編集部)

低コストで素早く現場を立ち上げようとした場合、選択肢のトップに上がってくるのは「構築が完了している仕組みにインターネット経由で接続し、スピーディーに利用を開始できる」ことを理由に、クラウドWMSとなるケースが多い。かつてはセキュリティーや自社の事情に合わせたカスタマイズの難しさもあったが、最近の大手ベンダーでは、業種ごとに特化したサービスや、現場事情に適したカスタマイズへの対応力を高め、クラウドサービスと対極にある自社サーバー設置型(オンプレミス)との差異も薄まってきた。

■首位ロジザード、第1回クラウドWMSアクティブ拠点数調査

LogisticsTodayでは、主要なクラウドWMSベンダーを対象に稼働中の導入拠点数、業種別と売上規模別の顧客内訳を調査した。この調査から見えてくるのは、EC需要の高まりの中でどのサービスが選ばれているのか、サービスごとの強みは何か――といった情報で、「どんな現場にどのサービスが適しているのか」を検討する材料やヒントになりえる。

数多くのシステム開発会社がリリースしている市場だけに、どのサービスを選択するかは重要だ。WMS選びが顧客からの評価を左右することを考えると、WMSの選び方に何らかの考え方や基準が求められる。この話題については、本サイト企画編集委員・永田利紀による解説「選定ポイントは『業務フローの直列化』」を参照してほしい。

解説「WMS選定のキーワードは”業務フローの直列化”」https://www.logi-today.com/405047

最も支持されているクラウドWMSを知るには、「実際に導入されて現在も稼働している拠点(アカウント)数」を見るのが適している。ベンダーにとっては自社サービスがどの程度支持されているのかをストレートに表す。LogisticsToday編集部によるクラウドWMSアクティブ拠点数調査(2020年6月末時点)の結果、トップに立ったのは「ロジザードZERO(ゼロ)」を擁するロジザード。アクティブ拠点数は2位以下を大きく引き離す1244拠点と、唯一4ケタ台に乗せた。

2位は707拠点で稼働しているシーネット(千葉県船橋市)の「Ci Himalayas」(シーアイ・ヒマラヤ)で、首位のロジザードと異なり事業規模の大きな食品向け物流に導入されるケースが多い。3位はWMS分野の老舗、フレームワークス(東京都港区)の「iWMS X5」で、アクティブな拠点数は200。次いで4位がアトムエンジニアリング(栃木県宇都宮市)の165拠点、5位がダイアログ(東京都品川区)で75拠点――となった。

主要5社の製品を導入している企業の業種と売上規模についても調査した。ロジザードとフレームワークスの製品を導入している企業の8割、アトムエンジニアリングとダイアログも4-6割が運輸・倉庫業となったのに対し、シーネットは卸の割合が3割と最も多く、運輸・倉庫業は4分の1にとどまるなど、顧客の業種が大きく異なっている。

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導入企業の売上規模も大きな差異がみられた。特にロジザードは売上規模10億円以下の中小企業が65%とかなりの割合を占めているのが特徴だ。これに対し、シーネットは半数、フレームワークスに至っては9割が売上500億円以上の大企業で、顧客の業種と併せて考えると、同じWMSであってもまったく別の世界でビジネスを展開しているような様相を示す。

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■ロジザードZEROの顧客層を「解剖」してみると…

ロジザードZEROはアパレル、EC事業者からの支持が圧倒的な点が特徴で、導入事業所の売上規模にも現れている。特に物流を考慮する必要を感じはじめたEC事業者が「まずはロジザードZERO」と”登竜門”的な使い方から採用を決めるケースが多いとみられるが、手厚いサポート体制を活用して自社の特性に合わせた改修を重ねることで、コストを抑えながら長く使い続ける事業者も多いという。

同社の亀田尚克取締役は、突出して稼働拠点数が多くなった背景について「ロジザードZEROのリリース当初から、3PL事業者のEC案件を徹底的にフォローしてきた結果だと思う。ロジザードはこれまでに、長年蓄積したノウハウを反映した機能だけでなく、手厚い導入サポートでECに対応した現場立ち上げをたくさんサポートしてきた」と話す。

「『出荷絶対』の社訓に基づき、企業文化として失敗が許されないECの物流を20年間365日休まずに徹底的にサポートしてきたことが、当社の強み」(亀田氏)

アクティブな導入拠点数でトップに立ったロジザードの場合、その8割近くを運輸・倉庫業が占める結果となったが、その詳細な内訳を見ると、より同社の顧客層が鮮明に浮かんでくる。「製品カテゴリー」で最も多くのシェアとなったのは「アパレル」で24%、次いで「化粧品・美容器具」が11%、「アクセサリー・靴・鞄」が9%、「生活雑貨・日用品」が8%――と、これら4カテゴリーで52%に達している。

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いずれもインターネット通販(EC)で取り扱われることの多い製品カテゴリーで、亀田氏の発言を裏付ける結果となった。これらのデータから、同社のクラウドWMS「ロジザードZERO」は、「アパレルに強い」ということ、「特にEC事業者などの物流業務を受託する運輸・倉庫業に支持されている」こと――の2つが特徴となっている。

今回の調査では、「いま」支持されているクラウドWMSベンダーと、どのような層がこれらのベンダーを支持しているのかが明らかになった。次回はより多角的な面から各社の製品を整理してみたい。

解説「WMS選定のキーワードは”業務フローの直列化”」https://www.logi-today.com/405047