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時間重視から危機対策へ、UNCTADが物流の転換主張

2020年11月16日 (月)

ロジスティクス国連貿易開発会議(UNCTAD)はこのほど発表した報告書で、新型コロナウイルスの影響により世界の海上貿易が2020年に4.1%減少する、との予測を発表した。

​報告書は、パンデミックがサプライチェーン、海運ネットワーク、港湾に衝撃を与え、貨物量の減少と成長見通しの悪化につながっていると指摘し、「サプライチェーンと経済をさらに混乱させるパンデミックの新たな波が、より急激な衰退を引き起こすかもしれない」と警告している。​

▲国際海事貿易と世界の生産量(出所:国連貿易開発会議)

国連貿易開発会議のキトゥイ事務局長は「国際的なサプライチェーンが円滑に機能するためには、世界の海運業界が持続可能な回復に向けた取り組みの先頭に立つことが不可欠」「業界は、ジャスト・イン・タイムの効率性を求めてきた物流を『ジャスト・イン・ケース』(万が一の事態)に適合させるために関与すべきだ」と主張。

世界の経済生産が回復することを前提に海上貿易の成長がプラスに戻り「21年には4.8%拡大する」とも予測しているが、これは「変化に備え、新型コロナウイルス後の変化した世界のために、十分な準備をする海上輸送産業」の必要性を強調する文脈の中で示されている。

報告書は、危機のピーク時にコンテナ船業界が「市場シェアではなく収益性を維持するために、より厳しい規律を適用し、能力を削減し、コストを削減した」ことにも触れ、結果として運賃市況は需要の低迷にもかかわらず安定的に推移したが、荷主にとっては「商品を輸送するための厳しいスペースの制約と納期の遅れ」をもたらしたと指摘。

こうした海運業界の取り組みを踏まえた上で「海上サプライチェーンの将来を保証し、リスクを管理するには、戸別訪問輸送業務の可視性と機敏性を高める必要がある」と提言。その手段の一つとして、荷主やサプライチェーンの関係者は「文書のデジタル化」を受入れなければならない、と付け加えた。

このほか「30万人以上の船員が契約期間終了後も数か月にわたって海上で足止めされている」ことにも言及し、各国当局に対し「船員を新型コロナウイルスの旅行制限から免除される主要労働者に指定」するよう、繰り返し要請していることを明かしている。