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駆け込みは買い占めと同種の過ぎた利己主義/解説

2021年1月12日 (火)

話題久々に”寒い冬”が到来している日本列島各地。コロナ禍ゆえに、ウインタースポーツや冬季ならではの行事や観光は控えなければならないが、それでもやはり冬はそれらしくあるほうが好ましい。しかし、物流を担う陸運事業者にとっては、気象情報の頻繁な確認と荷主対応の調整に追われる事態の出現にもなる。特に今回の寒波と降雪は車両運行に大きな影響を及ぼした。(企画編集委員・永田利紀)

大雪の北陸で物流ストップ、輸送強行求める荷主も(21年1月10日掲載)
https://www.logi-today.com/415062

運輸各社の事業継続と安全管理のせめぎあいは、荷主の理解や協力を前提に妥協点が決定されるべきだ。「うちの荷はなんとしても届けて欲しい」は全荷主の偽らざる本音に違いないが、天災や気象に起因する滞りは、かかわる者すべてが等しく負担すべき我慢である。台風や降雪などによる道路や鉄道への影響を案じ、そうなる前に荷を動かしておきたいと荷主各社が駆け込み依頼すれば、立場として弱い運送事業者は無下に断れないことも多いだろう。

そうなると、今回のような「予想以上に降り出しが早まって」「これほどの降雪量になるとは」などの憂き目に遭遇してしまう可能性も高まる。遅延や欠品が許されない荷種については、最優先の物流維持を手当てすることに議論の余地はない。しかし納期の順延や別ルートを選択することによる納品日の変更は、荷主次第で可能なケースも多々あるはずだ。

「止まりそうだからわが社の荷を優先して出してほしい」は「なくなりそうだからわが家の分だけ多めに買っておこう」と同種の心理と行動と思える。無理や差し迫った中での行動は、安全や安定を原則とする運送機能には禁物。

そんなイロハのイを失念したり無視したりの果てには、事故や停滞や断裂という禁忌の言葉が待ち受けている。荷主各社の理解を望むとともに、国の荷主向け啓蒙活動の強化を望む次第だ。言うまでもなく、運送事業者は平時から荷主への有事対応の説明と理解を得ることに勤しんでもらいたい。