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サービスの最重要項目は「継続すること」/解説

2021年3月9日 (火)

話題ライフコーポレーションに続いて、またもアマゾンと食品スーパーの提携(出店形式)が発表された。おそらくは後続が絶えぬ様相となりそうな気配に満ちているし、消費者には利便向上がもたらされるので好ましい限りだ。ネットスーパー間の競合によって、より充実したサービス内容となることに異存はないのだが、払拭できない気がかりな点も記しておきたい。

アマゾン、東海エリアでも食品スーパーと協業(21年3月9日掲載)
https://www.logi-today.com/423956

(イメージ画像)

過去にもあった事例だが、アイテムや配送網の急速な拡張・拡充、配送料の行き過ぎた抑制、配送所要時間の過圧縮などの行く末にあるのは、突然の「サービス停止」や「サービス改変」である。総花的なサービス計画には、必ずと言っていいほど採算と不採算のデコボコと、虫食い化する相応の中身が追いかけてくるものだ。

特に個配と同様の経路と動作手順を踏むネットスーパーの配達現場では、電卓を叩いた時には成り立っていたはずの収支が、稼働してすぐに大きく狂うことなど珍しくない。実例は個配大手3社のこの10年を調べれば、余りある情報が得られるだろう。

不採算によってダメージを受けるのは事業者よりも、最終ユーザーであることは説明するまでもないことだが、問題はその中身だ。選択肢の多い都市部なら、1社の不採算による撤退や、サービスの改悪や陳腐化は、代替サービスによって埋め合わせができる可能性が高い。もちろん、サービス提供者の変更にまったく支障や不満が伴わず――というわけにはいかないかもしれないが。

事態が深刻化するのは、唯一のサービス提供者による無二の状態での撤退や縮小だ。地方部では相当数が、そのリスク該当エリアに当たるのではないかと察する。もちろん事業者側も、サービス開始前の調査を経ての実施決定なのだろうから、よほどの読み違えや想定外の障害が発生しない限り、容易く撤退はしないはずだ。その点は、事業者とサービス提供地域の住民の相対のみにあらず、自治体の関わり方も大きな要素となるに違いない。

(イメージ画像)

地域によっては、単なる食品スーパーの新サービス提供開始に止まらず、生活インフラの一環としての認知にまで及ぶ。今は人口数が収益計算の基礎数値を満たすエリアであっても、動態次第では基準割れの時が遠からず到来する可能性は、全国の各地域で否めない。

物流関係者である読者諸氏なら誰もが察知している通り、この類のサービス廃止や縮小や過度な値上げは、その大部分が物流コストの増加や効率の悪化によるものであることが常だ。「何を売るのか」以前に、「どうやって届け続けるのか」を綿密に考慮し、先細りのリスクまで踏まえた計画を練ってもらいたいと願う。

物流業界の面々も、事業者側ではなく消費者側となった自分自身を想像してみれば、着眼と憂慮の中身が変わってくるはずだ。(企画編集委員・永田利紀)