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積み降ろしの長時間待機を9割減、その理由は

「トラック簿」がTOTO物流施設の入出庫を大幅改善

2021年7月20日 (火)

話題待機時間の削減は、運送会社のみならず、荷主にとっても喫緊の課題である。待機料金の請求が発生するだけでなく、運送会社にも負担をかけてしまう。最近では待機時間の長い物流センターを敬遠する運送会社も出始めている。

しかしTOTOの千葉物流センター(千葉県八千代市)は、日本GLPグループのモノフル(東京都港区)が提供するトラック予約受付システム(バース管理システム)の「トラック簿」を導入し、トラックの長時間待機を10分の1以下に削減した。加えてトラック簿だけが提供する独自の「複数箇所積み降ろし機能」を利用し、さらなるバース運用の効率化を実現している。(坂田良平)

取扱量1位の物流センター、かつては待機時間も1位

TOTOはトイレやユニットバス、システムキッチン、洗面台など、水回りの住宅設備機器を開発・製造・販売する総合メーカーである。千葉物流センターは、東北と関東への商品デリバリーを担い、その取扱量は同社の国内取扱量の44%に達する。

TOTOの河村氏

同社物流本部東日本物流部の河村孝史部長は、トラック簿の導入以前の千葉物流センターについて、「以前はバース予約管理らしいことはしておらず、来るがままにトラックを受け入れていたような状態で、長い待機時間が課題となっていました」と振り返る。

千葉物流センターでは、大型トラック換算で毎日100台程度が入出庫し、原則として午前に入荷、午後に出荷を行う。以前はトラックごとに時間割当を行うことなく、入庫に対しては午前中の着車、出庫に対しては午後の着車を指定していた。

千葉物流センターの中心となる「千葉DC」の延床面積は2万2650坪。加えて、北側に隣接する敷地には、延床面積4180坪の倉庫「第2センター」も構える。ゆるい着時間指定が生んだのは、長い待機時間と、広い場内にあふれる待機車両の列であった。

このままではいけない──。そう考えた千葉物流センターでは、2018年からセンターのオペレーションのダイヤ化に取り組み始めた。構内作業からスタートし、トラックの着車時間、荷役時間などのスケジュールを計算するエクセルのプログラムも作成した。しかしどうにもうまくいかない。現場は計算通りに動いてくれないからである。

モノフルの武田氏

さらに、19年9月にTOTOがホワイト物流を宣言した際に、その一環としてトラックの待機時間をKPI(重要業績評価指標)として設定したところ、江別・滋賀・小倉の3つの物流センターと比べて、千葉物流センターは最も待機時間が長いことが明らかになった。「どうすればいい?」と考えた時に出会ったのが、モノフルのセールス&マーケティングゼネラルマネージャーの武田優人氏であった。

高評価のポイントは2つの機能

武田氏が、TOTO東日本物流部千葉物流製品課の井堀誠課長と出会ったのは、20年2月19日から21日にかけて行われた「国際物流総合展」だった。武田氏は井堀氏と出会った時の印象を、「バース予約管理を自社の拠点に落とし込む際の課題を、しっかりと把握されていた」と振り返る。武田氏と井堀氏は早々に打ち合わせを行い、3月上旬には契約を交わしたという。

TOTOの井堀氏

トラック簿には、無料で使えるフリープランも存在する。筆者の「無料だから、すぐに契約したのですか?」との質問に対し、井堀氏は笑いながら、しかし明確に否定した。

「違います。モノフルが、当社の課題を短期間で理解してくれた上で、当社が取るべき解決策を提案する姿勢を示してくれたからです」

井堀氏はトラック簿を評価するポイントとして、以下の2つを挙げる。

ポイント1:データ分析によって、改善策を明らかにできる

構内のダイヤ化が芳しい結果をもたらさなかった理由については、「現場は計算通りに動いてくれないから」と前述した。それに対してトラック簿は、実績データの蓄積・分析機能を備えている。利用実績を解析することで、より良い構内作業に向けた、改善策をつかむことができるのだ。

トラック簿のデータ蓄積・分析機能(クリックで拡大)

井堀氏はモノフルを「当社の課題をヒアリングした上で、構内作業とマージ(融合)するトラック簿の運用設計まで、私どもと一緒に考えてくれました。運用を開始してからは、実績データを分析し、さらに効率的な運用を実現するための提案もしてくれます」と評価する。トラック簿が備える分析機能と、運用提案まで行うサポートは、TOTOにとって改善推進の大きな原動力となったのだ。

ポイント2:独自の「複数箇所積み降ろし機能」がある

前述の通り、千葉物流センターの倉庫は2か所に分かれている。入庫は1か所で行うが、出庫の際は、2か所で積み込みを行うことがある。トラック簿にはこのようなケースで効果を発揮する、競合サービスにはないオプションの「複数箇所積み降ろし機能」がある。

TOTOに限らず、メーカーの工場と併設される物流センターの場合、1回の入場で複数箇所の積み・降ろしを行うケースはあるだろう。このようなメーカーにとって、トラック簿が備える複数箇所積み降ろし機能は、バース運用のさらなる効率化のために、大きな武器となるはずだ。

TOTO千葉物流センターにおけるトラック簿の活用イメージ(クリックで拡大)

30分超のトラック待機がわずか2%に

井堀氏は「作業の開始と終わりがタイムスケジュール化できたこと、これは大きな効果です。加えて、当社に出入りするドライバーたちのストレスも軽減できました」とトラック簿の導入効果を評価する。だが、トラック簿のようなシステムを導入することは、ITリテラシーの乏しいトラックドライバーや倉庫作業員たちにとっては、ストレスにもなりうる。

トラック簿で受付するドライバー

河村氏は「トラック簿を運用する倉庫作業員に関しては、井堀が現場につきっきりでサポートしました。ただし、直感的に使えるインターフェイスなので、システムに苦手意識を持つ作業員も、すぐに慣れたようです」と、振り返る。

ドライバーの中には、個人のLINEなどをトラック簿の呼出受信のために利用することに、拒否感を示す人もいたという。だが、他のドライバーがトラック簿を活用している様子を見て、徐々に浸透率は高まったそうだ。

「トラック簿を利用しているドライバーは現在、6万人を超えています。すでにどこかで使った経験がある方が多かったことも、千葉物流センターで普及が円滑に進んだ一因だと思います」とモノフル武田氏は分析する。

TOTO千葉物流センターの積み降ろし風景

トラック簿の導入以前は、千葉物流センターで30分以上待機するトラックの割合は20%を超えていた。だが、導入後は2%まで削減できたという。何と、トラックの長時間待機を9割削減できたことになる。

待機時間の削減に悩む荷主や、物流センターの運営者は、一度モノフルに相談してみると良い。トラック簿と、同社が数々の課題解決に応えてきたノウハウは、きっとあなたにとって価値あるものとなるはずだ。

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