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海運大手3社、そろって通期業績予想を上方修正へ

2021年8月4日 (水)

話題国内海運3社の2022年3月期第1四半期連結決算が4日、出そろった。日本郵船と商船三井、川崎汽船はいずれも、2022年3月期の通期業績予想を上方修正するなど、好調な業績が通期で寄与すると予測した。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済活動の停滞が一巡し、欧米やアジアを中心に企業活動の再開が顕著となるなかで、タイトな需給に裏付けられた堅調な輸送賃料にも後押しされて、海上輸送は息を吹き返した格好だ。

3社の第1四半期決算では、川崎汽船と商船三井が営業黒字を回復。業績の改善を強く印象付けた。日本郵船は前年の第1四半期も黒字を確保していたものの、今期の第1四半期は営業利益で5.9倍となるなど、大幅な増益を記録した。各社は、こうした予想を上回る業績改善効果を反映して、通期の業績修正に踏み切った。

業績急回復の今こそ、将来の「雄飛」に備えるべきだ

商船三井、川崎汽船を含めた国内海運3社の業績が急速に回復している。3社は7月30日から8月4日までに2022年3月期第1四半期の連結決算を相次いで発表したが、2022年3月期の通期業績予想の上方修正をそろって同時に公表した背景には、3社が共同出資して2017年に設立したONEにおけるコンテナ船事業の好調さがある。裏を返せば、海運3社の経営環境がONEの業績推移に左右されている現状があるとも言える。

海運3社はことし3月、設立以来初めてONEから配当を受け取った。新型コロナウイルス感染症の拡大による経済停滞が一巡し、反動による収益増に加えて、グローバル物流の急回復に伴うバルク事業など主力部門の好調が際立つ。株式市場でも、海運セクターの上昇率は特筆すべきトレンドとして伝わっている。

コロナ禍による経済トレンドの変化など、マクロ経済動向に業績が振られやすい海運3社だが、好業績を謳歌する今こそ、新規ビジネスの創出や海外海運グループとの連携による新市場の開拓などを進める機運を高めてほしいと思う。ONEの設立は、統合が進む欧州メガキャリアへの対抗軸を明確化することが狙いだった。コロナ禍による停滞から抜け出しつつある今こそ、こうした取り組みを進めるための力を蓄える「雌伏」の時と心得て、アフターコロナの新時代に「雄飛」できる体制を構築する絶好の機会と考える。(編集部・清水直樹)