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大雨による物流への影響、中部など広範囲に拡大

2021年8月16日 (月)

国内停滞する秋雨前線による記録的な大雨は、物流業界にも影響を広げている。西日本のみならず中部地方や信越地方の山間部などにも拡大しているほか、青森県や静岡県でも先日の土砂災害の影響が継続するなど、物流業界へのダメージは日本全国に広がっている状況だ。16日以降も、九州を中心に発達した雨雲が流れ込みやすい状態が続くとみられ、局地的に非常に激しい雨も降る恐れがあることから、物流への影響は長期化する可能性もある。(16日20時更新)

■宅配各社、主に九州・中国地方で集配に影響

日本郵便は、16日14時30分の時点で窓口業務を休止している郵便局が、長野・広島・福岡・佐賀・長崎・熊本の6県で計80局に上ると発表。15日には富山県や島根県などでも一部の郵便局が休止していたが、再開した。

ヤマト運輸は、16日19時時点で、中国地方2県(広島、島根)、九州地方4県(熊本、長崎、佐賀、福岡)の全域または一部地域で大雨による集配遅延が発生していると発表。このうち熊本、福岡・佐賀・熊本の3県は全域で遅延が発生しているという。青森県や静岡県では、先日の土砂災害による遅延が継続しているという。

佐川急便は16日14時時点で、引き続き九州の7県全てで集配が遅れるか、一部地域については集配が不可能としている。先週末に大雨に見舞われた長野県や神奈川県の一部地域でも、集配に影響が出ているという。

西濃運輸は、16日14時時点の情報として、京都市の左京区と東山区の一部で集配を見合わせているほか、長野市の一部などで集配遅延が発生していることを公表。福山通運は16日午後の段階で、青森・長野・静岡・佐賀の4県のそれぞれ一部について「特に配達遅延の影響が大きい」と伝えた。

■中央道、岡谷JCT-伊北IC間で通行止め

▲現場の様子(出所:NEXCO中日本)

中日本高速道路(NEXCO中日本)は16日18時の時点で、中央道の岡谷JCT-伊北IC間の上下線で土砂崩れによる通行止めを実施している。東名阪を高速道路で移動するドライバーには、東名・名神・新東名などの迂回ルートの利用を呼びかけている。

西日本高速道路(NEXCO西日本)は、16日18時の時点で長崎道の佐賀大和IC-東脊振IC間の上下線で通行止めを実施しており、今後は、17日12時までに九州道や長崎道、大分道などで通行止め開始の可能性があるとしている。

[24時間以内に通行止めの可能性がある区間](16日12時時点)

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■JR貨物、山陽線の遅延・運休長期化か

日本貨物鉄道(JR貨物)は16日21時の時点で、中央線・篠ノ井線の春日井駅(愛知県春日井市)-坂城駅(長野県坂城町)間、竜王駅(山梨県甲斐市)-塩尻駅(長野県塩尻市)間、山陽線の新南陽駅(山口県周南市)-北九州ターミナル(福岡県北九州市)間などで運転を中止。竜王駅-坂城駅間は16日夜、春日井駅-多治見駅間は17日朝に運転を再開する見込みで、多治見駅-塩尻駅間については分かり次第発表するとしている。山陽線は運転再開まで10日程度を要する見込み。

激甚化する災害に対し、業界を挙げた取り組みを

気象庁の予報などによると、今回の大雨は、西日本や東日本の山沿いで8月20日ごろまで続く見通しで、新たな災害の発生に厳重な警戒が必要だ。また、西日本については今週末にかけても大雨が続く可能性があり、予断を許さない状況が続きそうだ。

近年の日本を襲う大雨や台風の被害は激甚化する一方で、特に西日本の物流は毎年のように大きな影響を受ける。相手が自然であるため抗えない部分も大きいことを考えると、物流網の維持のために必要となるのは、やはり代替手段の整備を含めた日頃の備えといえるだろう。

今後は各社による基本的な防災対策やBCPなどに加えて、各地の詳細な情報を迅速に共有する仕組みを構築するなど、業界や産官学を挙げた取り組みを、より強化していく必要がある。今回の大雨も被害は甚大なものとなっているが、災害時のより的確な物流途絶回避策につながる新たなヒントや取り組みが生まれることにも期待したい。(編集部・行松孝純)