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トヨタ、23年に米でトラックFC部材の組立開始

2021年8月26日 (木)

国際トヨタ自動車は25日、燃料電池(FC)モジュールの専用ラインを米ケンタッキー州ジョージタウンの工場に設置し、2023年に組み立てを開始すると発表した。水素を動力源とする大型商用トラック向け統合デュアル燃料電池モジュールを他メーカーに供給する。トヨタは、環境配慮型の商用トラック市場の急速な需要拡大を見据えて、主要構成モジュールの提供を通したビジネス機会の獲得を目指す。

出所:トヨタ自動車

トヨタは、水素を動力源とする燃料電池自動車の普及を目指している。ケンタッキー州の「トヨタモーターマニュファクチャリングケンタッキー」で2023年に組を立て開始する燃料電池モジュールは、最大で160キロワットの電力を供給できる機能を持ち、高電圧バッテリーや電気モーター、トランスミッションなどの推進システムを構成する基幹部材だ。

トラックメーカーは、トヨタの統合デュアル燃料電池モジュールの導入により、温室効果ガスの排出を抑制した車両の展開が可能となる。今後、全世界でカーボンニュートラル実現に向けた機運の高まりが予想されるなかで、トラックメーカーは環境配慮を意識した車両展開を加速する必要がある。トヨタはこうした動きをにらみ、動力部分を構成するモジュールで環境性能の高さを早い段階で示すことにより、競合メーカーとの差別化を図り市場獲得を優位に進める狙いだ。

「環境性能」を旗印に顧客を抱え込む戦略へ

米国を含む世界の多くの地域で、カーボンニュートラル実現を見据えた環境対応車が主流になっていくだろう。商用トラックも例外どころか、むしろ乗用車に先行して普及が進む可能性もある。物流業界への燃料電池車の本格的な普及は、今後急速に進むのは必至だ。

トヨタが、水素を動力源とする大型商用トラック向け統合デュアル燃料電池モジュールの組み立てを、米ケンタッキー州ジョージタウンの工場で2023年に始める意義もそこにある。新型コロナウイルス感染拡大は消費スタイルを一変させ、EC(電子商取引)サービスの急速な普及を促したことで、物流現場の取扱量は増加の一途だ。こうした「ニューノーマル」の社会を見据えたサプライチェーンは、もはや環境配慮を意識しない形では存在し得ないだろう。

トヨタは、環境対応モジュール部材の組み立てを推進することにより、米国における商用トラック市場で新たなサプライヤーの地位を確立し、一挙に市場シェア(占有率)を確保したいところだ。その戦略が奏功し環境負荷低減を実現できるのであれば、これ以上に歓迎すべきことはない。(編集部・清水直樹)