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JR貨物が中央線での輸送再開、山陽線も5日復旧

2021年9月3日 (金)

再開した中央線の区間(出所:JR貨物)

ロジスティクス日本貨物鉄道(JR貨物)は3日、大雨による線路の被災で運転を中止していたJR中央線の多治見駅(岐阜県多治見市)-塩尻駅(長野県塩尻市)間の運行を再開した。運休前と同様に、コンテナ輸送2本と石油輸送6本を実施したという。8月12日の運休開始から3週間ぶりの運行再開となる。

今回の大雨で、多治見駅-塩尻駅間では土砂の流入や信号機器室の損傷が発生。当初は復旧まで1か月程度を要するとの見方もあったが、その後は復旧工事が進んだことから、同社は8月26日、9月3日の運行開始を発表していた。

5日再開予定の山陽線の区間(出所:JR貨物)

JR山陽線の新南陽駅(山口県周南市)-北九州貨物ターミナル駅(北九州市門司区)間についても、予定通り5日に再開できる見通し。JR貨物によると、管轄する西日本旅客鉄道(JR西日本)から特段の連絡はなく、予定通りの再開を見込んでいる。

同区間については、中央線と同じく8月12日に貨物列車の運転が中止され、19日からはトラックによる代行輸送が開始。代行輸送は23日、27日、28日と日を追うごとに規模が拡大し、26日には東京・九州間で海上輸送を組み合わせた代行輸送も始まっている。

線路被災時の連携策を平常時に準備していく必要も

大雨による被災で休止していたJR中央線で、鉄道貨物輸送が3週間ぶりに再開された。JR山陽線も路盤の復旧が進み、5日から運転できる見通しだ。いずれも国内有数の幹線であり、貨物輸送の大動脈だ。早期復旧に尽力した関係者は、まさに賞賛に値する活躍だった。

しかし、災害直後の対応は、決してスムーズとはいかなかった。山陽線のトラック代替輸送をめぐっては、JR貨物と通運業社との足並みがそろわず、一部の業者が個別に顧客と契約して輸送を代行する事態にもなった。連日の雨で被災現場の工事も進まず厳しい状況下ではあったが、事前に被災時の対応策が定まっていれば、こうした混乱もある程度は回避できただろう。

山陽線では、2018年の西日本豪雨でも被災するなど、前例がある線区だ。近年の激甚化が著しい状況で、今後も同様の被災が十分想定される。国土交通省やJR貨物、通運業社が連携し、今回の3週間以上にわたる貨物輸送の休止を教訓に、被災時の代替対応マニュアルを策定してみてはどうだろう。物流の大動脈を守る使命は、共通なはずだ。(編集部・清水直樹)