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大川運輸倉庫、CO2排出ゼロ掲げる物流会社新設

2021年10月18日 (月)

M&A大川運輸倉庫(三重県川越町)は18日、早期のCO2排出ゼロを目標に掲げる新会社「F-ZERO」(エフゼロ)をパスファインダー(東京都板橋区)と共同出資で設立した、と発表した。

「ゼロエミッション物流」を掲げ、自ら手がける運送事業だけでなく、中小物流企業の支援とゼロエミッション物流のネットワーク構築も目指す。まずは排出権を購入して相殺する「カーボンニュートラル」からはじめ、自社で発電して自社内でゼロにする「グロスゼロ」の実現を目指す。

大川運輸倉庫は1966年に設立された物流企業で、三重県を中心に地域密着の貨物事業・倉庫事業などを手がける。昨年設立された物流MaaSプラットフォームの開発会社であるパスファインダーと共同で新会社を設立し、大川運輸倉庫が持つ物流ノウハウとパスファインダーの「人流分野のテクノロジー」、アルゴリズムを組み合わせる。

具体的には、パスファインダーがゼロエミッション物流会社各社のネットワーク構築と長距離物流車両の最適配車アルゴリズムの開発を受け持ち、大川運輸倉庫はゼロエミッション物流サービスの提供と、自家消費再生エネルギー発電設備・充電設備を含めたパッケージサービスの開発を担う。

地場の運輸企業も「環境」アピールで生き残る時代

三重県地盤の大川運輸倉庫が、「ゼロエミッション物流」を目指す新会社「F-ZERO」(エフゼロ)を物流MaaSプラットフォーム開発企業と共同で設立した。運輸業界でも環境を旗印として企業価値向上につなげる機運が高まってきた。こうしたトレンドが地域密着型の磁場運輸企業にも波及してきたことを示す事例だ。

地方の運輸業界は、長年懇意にする荷主企業との関係性を軸として、深く根付いていくビジネスモデルが一般的だ。地縁や系列といった人間関係が重視される傾向が強く、非常に実務的なのが特徴と言える。そこで生き残りを図る術は、既存顧客との関係を壊さず保つことであり、先進的なビジネスへの進出で差別化を図る大都市圏の運輸企業とは趣を異にしていた。

しかし、大川運輸倉庫が「環境」で荷主に訴求するビジネスを打ち出したように、地縁への依存から脱却した地方の運輸企業が全国に登場している。世代交代や独立など、さまざまな機会を得て新しいビジエンスの姿を追い求めるわけだが、荷主企業もこうした社会のトレンドを無視できなくなってきているのが本音ではないだろうか。もはや、運輸企業の差別化は、モノを運ぶことだけでは難しくなっている。付加価値が「昔からの縁」という企業は、事業の継続や継承がますます困難になっていく。そんな将来が目に浮かぶ。あくまで荷主のニーズに応えることが、運輸企業の使命であることを、忘れてはならない。(編集部・清水直樹)