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アサヒロジスティクス、水耕栽培で障がい者支援

2021年10月29日 (金)

(出所:アサヒロジスティクス)

産業・一般アサヒロジスティクス(さいたま市大宮区)は29日、障がい者就労継続支援事業所「アサヒファンレイズファーム松戸」(千葉県松戸市)を11月1日に開設すると発表した。アサヒロジスティクスの松戸共配センター(同市)内の空きスペースを活用して完全密閉型の水耕栽培設備を新設。野菜の生産を通して、障がい者の就労継続支援や一般就労に必要な知識やスキル向上のための訓練を行う場を提供する。

アサヒロジスティクスが人材育成制度の一環として取り組む企業内大学「アサヒ人財育成大学」の学習テーマ「当社をより好きになる企画立案と実行」に基づく社員の提案をきっかけに企画化。社会貢献をテーマに企画を検討し、今回の取り組みを決定した。

水耕栽培は「新しい農業」として注目されており、使用していない会議室や倉庫などの空きスペースを有効活用できる利点もある。松戸共配センター内の使用していない会議室を水耕栽培室に転用した。外食チェーン向けにサンチュを月間3000株収穫。11月8日に出荷を始める予定だ。

将来的には複数の拠点で展開することで、外食店舗や一般消費者にも水耕栽培事業への認知を広げていくとともに、障がい者の能力開発の機会を提供する取り組みを推進していく。

障がい者支援とビジネスを結びつけることで期待できる「現実性」

食品物流を専門とするアサヒロジスティクスが、障がい者の就労継続を支援する事業に参入する。物流事業者が障がい者支援を事業化する意義は何だろう。ファミリーレストランや小売店などへの食品配送に強みを持つアサヒロジスティクスならではの取り組みとも言えるが、ボランティアの社会貢献活動ではなくビジネスとして取り組むことで、持続的な企業価値向上につなげようとする狙いがうかがえる。

自社スペースで野菜を育てて収穫した野菜を提供すれば、新しいビジネスが生まれる。物流を「川中」ビジネスと位置付けるならば、生産は「川上」に当たる。川上から川中、そして川下にあたる消費者へ届ける一連の流れを、アサヒロジスティクスが担うことができれば、より幅広い物流提案が可能となる。そこに障がい者支援の側面が加わることで、社会貢献の要素を含めた物流ソリューションを描くことができるというわけだ。

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障がい者支援や環境負荷低減の推進など、いわゆる社会的な活動に注力する機運が、物流業界にも広がってきた。しかし、ビジネスとして持続的な活動には必ずしもつながっていないのが、正直な印象だ。

だが、もしもこうした活動が収益の創出にも連動すると分かれば、従業員の意欲も高まり、結果として社会に貢献したビジネスとして高い成果を生み出すのではないだろうか。今回のアサヒロジスティクスの取り組みは、ビジネスとして障がい者支援を位置付けたところに、今後の期待を見込める現実性があると考えるのだ。(編集部・清水直樹)