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TRC、東京湾岸平和島地区の新「物流ビルA棟」着工

2021年12月1日 (水)

拠点・施設東京流通センター(TRC)は1日、「物流ビルA棟」(東京都大田区)の建築工事に着手したと発表した。2023年8月の完成を目指す。TRCが1967年より手がける東京湾岸の平和島地区での物流施設運営のリニューアルプロジェクトは、17年6月に完成した「物流ビルB棟」に続く今回の新棟着工により、新たな局面を迎える。

▲周辺地図(クリックで拡大、出所:TRC)

TRCの平和島地区における物流施設展開は計4棟で構成。東京都心への抜群のアクセスの良さに加えて、首都高速などを経由して首都圏各地への広域アクセスにも優れているほか、東京国際(羽田)空港や東京湾岸の各港湾にも近接する立地を強みに、湾岸エリアを代表する物流施設として高い存在感を誇ってきた。

開業から半世紀以上が経過し、施設の老朽化や物流ニーズの変化に対応するため、TRCはB棟に続いてA棟の建て替えを決定。旧A棟はことし5月末で閉館し、6月に解体工事に入っていた。

新しいA棟は「流通の変化を支える、都市型価値創造拠点」のコンセプトを設定し、汎用性の高い高機能な小割り区画で多様化する物流ニーズに対応した仕様とする計画。標準区画で1435平方メートル、最小で478平方メートルと都心エリアでは最小水準の面積で荷主などの企業に提供する。TRCは、より高い稼働率を確保する狙いもありそうだ。

さらに、区画面積に応じた豊富な電源容量や給排水・給排気システムを導入することで、倉庫と付随する事務所やショールーム、メンテナンス拠点を組み合わせた複合的な用途に適した構造としたのも特徴だ。特に、小割り区画への屋外歩廊を確保し歩行者と車両を分離することで、安全なアクセスを実現するなど、細部にこだわった構成が注目を集めそうだ。

▲モデルルーム内会議室イメージ

就労環境への配慮も特徴的な機能だ。構内に飲食店舗や医療機関、郵便局、コンビニエンスストアなどを配置。共用の休憩室や喫煙室も整備するなど、ドライバーや館内作業員の「働きやすさ」を訴求する。屋上には都心部で最大級の大型車80台を含めた400台収容の駐車場も設ける。

A棟の完成イメージを体感できるモデルルームもB棟内に開設。新発想の物流施設のイメージを訴求することで、入居希望需要を喚起する。

新「物流ビルA棟」の概要
所在地:東京都大田区平和島6-1-1
延床面積:20万5000平方メートル
貸付面積:15万6000平方メートル
構造:RC-S造、免震構造、地上6階建て
交通:首都高速道路羽田線「平和島出入口」1キロメートル。首都高速道路湾岸線「大井南出入口」3キロメートル、東京モノレール「流通センター駅」徒歩1分

TRC平和島再開発プロジェクトは東京湾岸の物流施設開発の構図を変えるか

東京湾岸の老舗物流拠点であるTRC平和島地区プロジェクトの新たな全体像が明らかになってきた。他を圧倒する良好な立地的優位性を生かしながら、機能面を刷新することで、プロジェクトの新たな境地を開拓することになる。ぜひ、東京沿岸部で都心に至近な立地ならではの強みを、倉庫運営にも反映してほしい。

▲バース・倉庫イメージ

物流施設はこれまで、高速道路のインターチェンジへのアクセス性や、荷主企業の生産拠点との連携のよさなど、立地面での優位性が判断されてきた。倉庫内の機能については大きな差別化にならない時代が続いてきたというわけだ。

TRCがB棟とA棟の建て替えを断行した背景には、こうした状況への強い危機感があったのではないか。東京湾岸は全国でも有数の物流施設ニーズの高いエリアだが、もはや平和島地区をしのぐ好立地は望めないだろう。こうした「一等地」を押さえているTRCが立地だけでなく機能面や就労環境面でも勝負することで、東京湾岸エリアにおける物流施設の開発の構図に少なからず影響を与えることになるだろう。(編集部・清水直樹)