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大阪の倉庫火災、SC再構築に追われる薬品業界

2021年12月3日 (金)

メディカル大阪市此花区の人工島・舞洲で11月29日に発生した、日立物流西日本・舞洲営業所の倉庫火災を受けて、薬品メーカーがサプライチェーン(SC)の確保に向けた対応に追われている。薬品の保管などを委託していたメーカーでは、出荷が困難になり配送ルートの変更を余儀なくされるなど、混乱が続く。現在も続けられている消火活動の行方もにらみながら、薬品供給という社会的責務を果たすための「神経戦」が始まっている。

(イメージ)

多くの薬品メーカーが本社機能や主要生産拠点を抱える関西圏。舞洲エリアに集積する物流倉庫には、こうした薬品メーカーの配送拠点が目に付く。物流拠点における薬品の取り扱いは、温度管理をはじめとする管理機能に加えて、的確で柔軟な輸送体制を確保できる立地が求められる。物流施設の開発事業者は、こうした観点を踏まえて、薬品を常時取り扱える水準まで機能面を充実させることにより、差別化を図る動きも顕著になっている。

日立物流西日本の舞洲営業所もこうした高機能倉庫の一つで、入居企業に提供できる物流サービス品質の高さでは定評があった。それだけに、荷主企業には衝撃が広がっている。

こうした荷主企業の一つである、キョーリン製薬ホールディングス傘下の杏林製薬(東京都千代田区)。出荷できなくなった西日本エリアの製品について、当面の間、東日本の物流拠点(埼玉県加須市)からできるようにした。物流拠点が遠くに移ったことで、最大2日程度の遅れが生じるが、医療機関には前倒しで発注するよう要請することで、いまのところ混乱は起きていないという。

LTLファーマ(東京都新宿区)も、拠点を関東物流センター(埼玉県久喜市)に移すことで、3日から出荷再開ができる態勢を整えた。ただし、リードタイムが1日程度延びることへの理解を医療機関に求めた。

サワイグループホールディングス傘下で後発医薬品大手の沢井製薬(大阪市淀川区)は、「業務開始のめどが立たない状況に陥っており、資材について調達できないため、お届けが難しい状況です」と明記した文書を関係先に配布するなどして、理解を求めている。日本調剤子会社の日本ジェネリック(東京都千代田区)も、被災状況について調査を進めている。

火災を教訓にサプライチェーン強化の機運を

日立物流西日本・舞洲営業所の倉庫火災を受けて、薬品業界におけるサプライチェーンの混乱が始まっている。薬品企業が物流拠点を多く抱える関西圏。特に大阪湾岸エリアには、薬品メーカーが配送拠点を多く配置し、西日本における輸送網の要としている。今回の火災は、物流拠点の「複線化」の必要性も浮き彫りにした格好だ。

今回の火災で配送機能を確保できなくなったメーカーのなかには、関東の拠点で代替するケースもある。リードタイムの延長をしても、可能な限り短納期での輸送に最善を尽くす体制は、薬品メーカーならではと実感する。しかしながら、西日本に代替拠点を設けることも検討課題と言えるだろう。

火災のような突発的な案件による物流拠点への影響は、瞬時にサプライチェーンに支障をきたす要因となる。それを最小限に食い止める取り組みが、今回の火災の教訓になった。火災発生は残念なことだが、せめてメーカーのサプライチェーンのさらなる強化の機運を高める機会になればと願わずにいられない。(編集部・清水直樹)